軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――ライザード

広がる動揺。伝播する混乱。

このままでは恐慌状態に陥ってしまうでしょう‼

そんなことになれば最悪―――ッ⁉

そう思い。この僕は、いち早く周囲の生徒達を見渡します。

そのような兆候はないか、あれば気を確かに持たせるよう言わなければなりません。

しかし、この僕の予想とは裏腹に、危惧するような状況には至りません。

思っていたほどの動揺ではなかった・・・?

あの教師はそれほど信頼を勝ち得ていなかったということでしょうか?

この場にはこの僕の同室以外にも、隣の教室の生徒達もいますから。

そのせいで混乱を極めなかった?

などというのは、この僕にあるまじき浅慮でした。

「ライザード様・・・貴方にお願いしたいことがあります」

急に声を掛けてきたのは隣の教室を担当する女教師。

名前は・・・・・・失礼かもしれませんが覚えてはいませんでした。

この僕にとっては些細な存在だと思っていたので。

なにより、競争相手だという認識の方が強かったからかもしれません。

「この僕に、ですか?」

「貴方にしかできないことです」

力強く肯定するその瞳に、気圧されるように了承しました。

「皆聞いて! 大丈夫‼ やることは変わらないから!」

女教師に連れられた先には多くの生徒達が集まって待機していました。

「殿下に合わせて魔法を撃ちましょう! 前は彼らが守ってくれます!」

そう言って指を差す先にはバロンと・・・ジェーンでしたか? 確かそのような名前だったはずです。その2人が並び立っています。

「でも! あの先生みたいにやられちゃうかも!」

誰かがそう言います。

それはそうでしょうね。

あの教師ゼネスは弱くなどなかった。

今、そこに立っていない原因は―――・・・・・・。

「大丈夫。その時は私が皆を守るわ! だから、安心して魔法を撃つの!」

両手を握りこんで必死に平気なふりをする。

ところどころに見え隠れする恐怖。

その挙動は昔から見慣れたものですから、すぐに気付きました。

幼いこの僕に、同じような年の子供が、親に言われて挨拶に来る時のような・・・そんな仕草によく似ていたのです。

安心させるために、ありもしないものを振り絞っているのでしょう。

そのことが嫌に冷静にさせます。この僕を。

なにをやっているんだ――・・・。

こんな時に率先して周りを動かせなければ、王になるなどできはしない。

民を束ね、導かなければ、王たり得ない。

なればこそ、この僕が最初に立ち上がり、そして示さなければいけなかった。

誰かに使われるようでは頂点になど立てはしないのですから。

そうと決まればやることは1つです。

「攻撃の瞬間はこの僕が指示します。合わせられるものは合わせなさい。あまりに遅れるようなら参加は結構。次の指示に合わせられるような工夫を」

1歩前に出て背中を見せる。

ついてこいなどとは言えずとも、力を合わせろということはできます。

命を懸けて戦うことはできずとも、命を懸けて戦う誰かを助けることはできるでしょう。

これで罪滅ぼしになるとは思いませんが・・・それでも、やらないよりはずっといい。

対峙する2人と1対のゴブリン。

それを横から眺めるこの僕らは、さらに外から見れば、さぞいい身分に見えるでしょう。

それは間違いではありません。

この僕は偉いのです。

ですから、この僕の下へ戻り、跪き、その軽率さを謝罪し、首を垂れることを許しましょう。

だから、どこぞの教師のように怪我などをせず、無事に帰ってきなさい‼

それが救われたあなたの使命ですよ‼

この熱視線の甲斐があってか、バロンは軽妙に攻め入る。

ゴブリンをうまく突き崩す。

見極めようとする顔を、踏み込もうとする足を。

上に下にと槍を突き出し、振りかぶる腕にはジェーンが盾を持ち上げる。

攻めあぐねたゴブリンは1歩下がり―――・・・。

「今です‼ 一斉砲火‼」

2人に被害が出ないよう、離れた瞬間を狙い撃つ。

数十人の魔法が乱れ飛ぶ。

そんな中で、

「やはりこの私の魔法が一番強烈ですわ‼」

などと言いながら高笑いを決め込むものも居れば、

「なんの! 私だって負けないよ‼」

この期に及んでも競うように力を発揮するものもいる。

・・・というか、ですが。

エイラスはこの僕を引き留めたり、バロンへ槍を渡したりと。随分と要領がいい気がしますね。

なぜそのようなことができたのでしょう?

それに、いつの間にか女教師によって集められていた生徒達。

初めからこうなることを予測していたような・・・。

そんなまさか。

このような状況になることを見越していたのなら、ゼネスを見殺しにするような真似はしないでしょう。

幾ら隣の教室の担当が競争相手だからと言って、そんなこと―――・・・しませんよね?

まぁ些細なことです。

今は一刻も早くこの危機を脱し、あの教師を助けなければ。

バロンとて気が気じゃないでしょう。

そうして全てが片付いた後、キチンと責任の所在を決めましょう。

この僕と・・・バロン、貴方で。