軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鬱々とした思想

間抜けな顔だな。

立ち尽くす大型のゴブリンを見て、なぜだかそう思えた。

その表情すら読めやしないのに。

守るべきなにかはあるはずなのに、仲間を失った事実だけを刻む。

やるべきは別にあるはずなのに、復讐という意思だけを汲み取る。

それなのに。動けずに。

どっちつかずの中途半端。

ホブ・ゴブリンなのか、ジャイアントゴブリンなのか。

見分けも付かない半端者に、違う未来を見た。

一歩間違えば俺が・・・・・・。

ゴブリンなんつー格下共を相手に、そんな未来などあり得ねぇが。

子供を預かる。

その重みを垣間見た気がした。

目の届かないところで。手の届かないところで。

子供達が死にゆく恐怖を。

特に今、俺は兄上の子を預かっている。

我が甥になにかあれば、その表情を見せるのはきっと俺じゃなく、兄上だ。

俺が見ることになるのはその顔だ。

その時の感情は言葉にならないだろう。

気持ちがわかるだけに――互いに言葉を選び、責任は自分にあると主張しあうのだろう。

お前に責任などないのだと。そんな台詞を口にするはずだ。

そんなわけがねぇのにな。

敵はまだ動かない。

逡巡の狭間に取り残されているのか。

その隙に俺は振り返る。

守るべきものを確認するために。

目的を見失わないために。

だがそこで、俺は理解できないモノを目にする。

それは、なぜか1人で突出する我が甥バロンの姿だ。

一瞬のことだったが、視線が釘付けになる。

利き手には剣を抜き放ち、一心に前へと駆け出すその姿。

ああ、勇ましいことこの上ないが・・・そんな必要など、ありゃしねぇ。

なにがあった?

意味もなく、こんな行動に出るとは思えねぇ。

駆け出す我が甥の後ろを見れば、驚愕と共に宙に手を伸ばすライザード。

アイツにとっても急なことだったんだろう。

後を追おうとするライザードを繋ぎとめるためにエイラスが縋りつく。

俺がバロンを止めなければ!

幾ら相手がゴブリンとは言え、奴は上位種。

バロン1人で片が付く相手じゃねぇ。

まだ間に合う‼

―――そのはずだった。

不意に動き出したのはバロンだけではなかった。

入り口に佇んでいた巨大なゴブリン。

奴も同時に動いていた。

触発されたのかもしれねぇ。

そいつの取った行動は、岩を持ち上げること。

”どこから持ってきたのか、洞窟を閉めるためにでも使うかのような岩が、入り口の隣に置かれているらしい”

ハンターから聞かされていた通り、洞窟のすぐ隣には岩があった。

入り口を蓋するのようなデカい岩が。

それを持ち上げていた。

なぜ? 決まっている。

ゴウ‼ と、次の瞬間には風を突き破る音が聞こえてくる。

空に黒点。

そうだ。投げたのだ奴は。その持ち上げた岩を。

人の身体よりデカい岩を投げやがった。

狙いはバロン。

そこには明確な恨みがあったに違いねぇ。

お前も同じ思いをしろという。そういう恨みが。

だから奴は走り出す。

復讐に背を押されるかの如く。

駆り立てられるように走り出す。

そいつだけは確実に殺すという、明確な衝動を元に。

俺はそれを・・・・・・利用しようと思う。