作品タイトル不明
楽々とした攻略
洞窟を楽に攻略するにはどうすればいいか?
一番簡単なのは火を使うことだ。
ほとんどの生物は呼吸を行う。空気を体内に吸い込むために。
火はその空気を焦がす。
焼けた空気では生物は生きられない・・・らしい。
詳しいことまではわからねぇが、外に繋がる出入り口が1箇所しかない洞窟において、火の使用はご法度とされる理由がそれだ。
だがそれは逆を言えば、外から洞窟の中を制圧しようとする場合、最も有効な手段というわけだ。
「敵はこっからしか来ねぇ‼ この出入口に土を盛ったのは、ここに死体を積み上げるためだ‼ 飛び出してきたところを狙え‼ ここが通り辛ければ、それだけこっちが有利になるぞ‼」
最終確認としてもう一度、生徒達に指示を出す。
洞窟の出入り口には膝下程度の土山を築いてある。
これはこっちから侵攻はしないという意思表示と、出てこざるを得ない敵への嫌がらせだ。
ゴブリン共は背格好も子供に近い以上、大人の膝下の高さは飛び越えるほどの障害になる。
羽を持たない生物にとって、空中での移動は極めて難しい。
それがゴブリンともなれば不可能と言っていい。
つまり、狙いやすい的になる。
いかに崩れやすい土山と言えど、無視すれば足を取られ、足を取られればコケることだろう。
そうなれば結果は同じ。
コケたところを狙われ土山の回りに死体として転がることになる。
今度はそれが土山の代わりだ。
外を目指すしかないゴブリン共にとって、この嫌がらせはどうしようもなく刺さる。
こちらは安全圏から魔法を撃つだけ。
距離を縮める方法はただ走るのみ。弓矢は絶対に届かねぇわけだからな。
そういう説明をして、陣を敷き、洞窟に火を放った。
洞窟の造りは複雑じゃぁなかった。
主体となる直線道に脇道がいくつも広がる主根型とでも言うような洞窟。
その奥まで続く主体の道に、消えない火を灯せば・・・後は待つだけ。
次第に騒ぎ立つ声が迫りくる。
「ギギィ‼ ゲアッ⁉」
真っ先に飛び出してきたゴブリンは、よほど慌てていたのか土山に突っ込み、足を取られて転がる。
そこへ、数多の魔法が飛び、
「ゲゲ⁉ ギィアアァアアアアアア‼‼」
断末魔を上げて足枷となる。
続くゴブリン共は土山を飛び越えようとするが、
「ゲァ⁉」
「ギギャ⁉」
「ゴブァ⁉⁉」
あるものは駆け出す間際を、あるものはその着地を、あるものは飛び上がった瞬間に魔法が直撃し、絶命まで続く。
それを見て直感的に理解したはずだ――土山を超えてはならないと。
そして弓を持ち出し、また。絶望に出会う。
矢は届かない。
このわずか内に、幾つの絶望を見ただろう?
住処は燃やされ、仲間は死に絶え、土山を超えることはできず、弓矢は意味をなさない。
しかし引き返すことはできず、覆す策も思いつかない。
故に留まることはできず・・・・・・もはや土山は跡形もなく崩れ去った。
けれど、洞窟の周りにはその代わりとなるほどの屍の山が転がっていた。
それは家族か友人か。はたまた名前も知らない顔見知りか。
ただ、その顔の見分けはつかない。
なぜなら、俺はゴブリンじゃねぇからだ。
だから、最奥から出てきたデカい図体したゴブリンの表情さえ、わかりゃしねぇんだ。
そいつは出入り口に佇み、地面を見ていた。