軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

粛々とした資料

「したっけ先生! そんだこっちゃから気ぃつけなんしょー‼」

最早、ほとんどなにを言ってるのかわからなくなったハンターの言葉に、適当な返しを見せつつ、その場を後にする。

話しているうちにどんどん機嫌がよくなっていき、それと呼応するように方言は聞き取れないものへと変化していったが、幸いなことに。文字まではその範疇ではなかったらしく、渡された資料から必要な情報を得ることができた。

資料を指さしながら話してくれたおかげで、言葉の意味が分からなくとも、聞き取れなくともどうにかなったのは、日頃の行いがよかったからだと思っておこう。

資料の持ち出しも快く許可してくれたので、俺の手にはここら一帯の地図と、出没するモンスターについて詳しく書き足された生態調査報告書の写しがある。

それと行方不明となった子供の特徴が記された紙も。

ゴブリンが住みついている洞窟は、聞いた通り山の麓にあるらしく、その周囲が林になっているのも間違いないようだ。

目印になるのは大きい岩だとも書かれている。

どこから持ってきたのか、洞窟を閉めるためにでも使うかのような岩が、入り口の隣に置かれているらしい。

村から向かうと”洞窟が岩に隠れるから注意するように”となっていて。

その他にも大きな岩がいくつか洞窟回りには置かれており、上位種の可能性も示唆されている。

ホブ・ゴブリンやジャイアントゴブリンと言った上位種の他に、オーガやサイクロプスとの共生も視野に入れられていて、本当によくできた資料だ。

おおよその穴の高さからサイクロプスの可能性が否定気味に書かれているのもいい。

それ以外でも岩を運べるモンスターや、岩に擬態できるモンスターについても考察されているが、どれも分布や生態から可能性は低いと結論が出されているのもまた評価できるところだ。

本気でどうにかしようと向き合ったからこその書き込み。

なにを言ってるかはわからなくとも、そのハンターとしての姿勢は確かなものだった。

しかし、それ故に行方不明者の紙が重くのしかかる。

男女2名ずつ。

どこをどう取っても子供の特徴。

追えた足跡はほぼなし。

唯一、出かけると伝えられていた場所にのみ、慌てた様子の足跡があった。

水や木の実が入手できる場所にも痕跡はなく。生きている見込みは、まだ死体が見つかっていないことだけとなっている。

洞窟周辺の調査観察にて、ゴブリンに他種との共生無しと記されているのも、子供達の影を求めてのことだったんだろう。

『洞窟入り口付近でグレイウルフとゴブリンの縄張り争い。

グレイウルフは1頭。ゴブリンは6匹で応戦。

ゴブリンは4匹が倒れた時点で応援を要請。さらに6匹が現れたところでグレイウルフは退散。

グレイウルフの被害は横腹への裂傷、その他4箇所の打撲と推測。

ゴブリンの被害は5匹が再起不能。更にその5匹が手にしていた武器の内3つが破損したようだ。

確認できた武器は棍棒、石手斧、ボロの短剣、石を縄に巻いた分銅もどき、鉈、つるはし。

倒れた5匹のゴブリンは洞窟に引きずられて行き、その後は不明。

応援に駆け付け5匹を引きずって消えたのとは別の部隊と思われる6匹が洞窟から出てくる。そのまま辺りを見張るようだ。

別の部隊だと思われる理由は武器が違うためである。

この部隊は小弓を背負っている。矢の総数はわからないが矢筒には4~5本と少ない。』

といったような内容が1週間分以上。

これでも行方不明になった子供の影も形も出てこねぇんだから、どうしようもない。

グレイウルフの他にも、パニックフラワーマッシュや、リバーサルスネークとも小競り合いがあったと書かれている。

この3種は村の近辺に生息しているモンスター。

まだ他にもこの近くに生息しているモンスターは居るが、洞窟付近での目撃はなかったため、それを根拠に。共生はないものとしているんだな。

となれば、邪魔さえ入らねぇように牽制しておけば、当日はゴブリンだけに集中できるってわけだ。

仕込みを済ませたら、生徒達の様子だけに気を付けるとしよう。