作品タイトル不明
濁々とした会話
さて、あまりにもふざけたことを言うもんで、尻切れトンボのように会話を終わらせてきちまったが、無理やりとはいえ了承は得た。
当初の予定じゃもう少しお行儀よくするつもりだったんだが・・・なんでこうなったんだか。
つまらねぇ言い訳を聞かされたせいか、つい弱みにつけ込むような真似を。
こうなっちゃ邪魔はされねぇだろうが、協力も得られない。
仕方がねぇから一旦馬車まで戻り、生徒達には野営の準備をさせることにした。
「また野営ですか・・・まあ構いませんが、ここを出発する時には”世話になる”だとかなんとか言っていませんでしたか?」
「寝食の世話になるとは言ってなかっただろ?」
「そうでしたね。それで? あのような別れ方をして、なんの世話になるつもりです?」
「余計な世話だ」
「なるほど。よくお考えのようで」
ライザードの皮肉にこちらも皮肉を返しつつ、この村付きのハンターの元へ行こうとする途中。
「叔父――先生! 今日も、馬車で寝るの?」
「そうなるな。尤も、村の全面協力が取り付けられてたとしてもこの人数だ。全員を宿泊させられる施設はなかっただろうから、結局は野営になった」
「そう・・・なんだ」
肩を落とすバロンに、
「どうかしたのか?」
そう聞いてみるものの。
「――っ⁉ なんでもないよっ!」
我が甥はハッと顔を上げてすぐ、視線をそらしながら走り去る。
あからさまになにかあった様子なんだが、贔屓はしねぇと言った手前な。
その後ろを追いかけるわけにもいかず、俺はハンターのところへ向かった。
教えられた場所へと赴くと、如何にもな老人が待っていた。
「話ば聞いとる。よお来なすった」
想像以上だったことがあるとすれば、方言が酷過ぎることだろう。
「おいがこん村のハンターやがけん。しりたかごつあったらきいちゃれ」
しかも、ありとあらゆる方言を混ぜたかのような話し方だ。
なにがあったらそうなる?
「あ、あぁ・・・ならまずゴブリンの住処についてなんだが――」
「そんなら洞窟よ。こん村から南西の方へいぐと山ばあってだね。そん山の麓ば谷んなっちょってよ、そこんとこによごみぞみでぇな洞窟ばあんのさ。ゴブリン共はそごさ住んどる」
「谷間の洞窟ね。周りはどうなってる?」
「林んようになっちょんね。森ぃゆーほど木ぃば生えてなかけんども、丘っちゅーには見晴らし悪かばい。ばってん水場にゃなっとりゃせんごて、足場は悪ぅないんよ。そやからゴブリン共も自由に動けるっちゃんね。気ぃ付けなんし」
「中の様子は?」
「すまんごつそりゃわーにもわからりゃぁせん。あいにぐ中ば見えんけん手ば退きよるんや。せやけど、鉱山じゃねぇもんで人ん手が入っとるゆーことはないっちゃろ」
「だとすりゃぁ、それほど入り組んでるってわけでもなさそうだな。廃鉱山を乗っ取られてるのが一番面倒な可能性だったが、自然洞なら問題はねぇ。装備も十分役に立てくれるだろう」
半ば1人事のようなつぶやきだったのだが、
「はぇ~・・・やっぱし都から来られる偉ぇ先生は違ぇなぁ・・・」
ハンターのご老人は感心しきりだ。
「まだなにもしてねぇと思うんだが・・・?」
「いやいや、そうでなぐて! 先生たらおいん言葉わかりよるやろ? わいん言葉あちこづいっぢまったせいで、ほっとんどわがっで貰えねぇごて。しがもやれ失礼だなんだって・・・。やけんども、偉ぇ先生ちなんも言わんで聞いてばくれて、意味までわかりよるんはわーもー嬉しぐて」
実際にはほとんどなにを言ってるのかわかっちゃいねぇんだが、まぁいい。
機嫌がいいなら今の内に聞きたいことを聞いておこう。