作品タイトル不明
魔法実技の授業:準備
そうして翌日。
今日からは普通の授業日だ。
幼少部1年だと、今日は2限まで授業があり・・・俺の教室は1限が座学、2限が魔法実技だ。
座学の内容は学園の歴史とでもいうべきか。
大まかにどういうことを学んでいくのか、学年による目標などを教えつつ、質問に答えるというもの。
飛んできた質問は主に3つ。
『成績をつける基準とその時期。良い悪いに対する報酬や懲罰について』
『学園で習える魔法の種類と武器の種類について』
『どういう行事があるのか? その意味や意義、参加の可否について』
「成績はもちろん実力のみでつける。成績が良いってことを理由に、俺からの報酬や特典はねぇが、学年が上がれば軍や魔法研究所、枢密院から声が架かる可能性はある。逆に、成績があまりに悪い場合は補修や追試がある。あとはなにより、親の機嫌が目に見えて変わるだろうな。どっちがいいかは自分で選べ」
「幼少部では魔法訓練も戦闘訓練も俺が受け持つことになる。俺の使える魔法なら、どれでも教えてやる。その気があるなら聞きに来い。武器については軍で主力になる武器全般と拳についてなら教えてやれる。ただし、槍はお前らじゃまだ扱えねぇから、身長が伸びるまでは無しだ」
「毎年開催されるのは教室対抗の模擬戦と外部遠征ぐらいで、他は時勢によってまちまちだ。芸術系は今の段階じゃぁあるともないとも言えねぇな。まぁ、よっぽどのことがねぇ限りは期待しててもいいんじゃねぇか?」
と、それぞれに答えておいた。
ちなみに隣の教室は1限が魔法実技、2限が座学で俺達とは逆になっている。
なぜ知っているかといえば。今が休憩で、魔法実技場へ向かう途中にあり、1限が終わったばかりであろう子供達及び、隣の教師とすれ違っているからだ。
明らかに生徒の身長じゃねぇ若い女が、すれ違いざまに立ち止まり会釈してくる。
俺はそれに立ち止まることなく、軽く手を挙げて通り過ぎる。
貴族社会は男社会。その色が濃いこの学園においては、女が男に道を譲ったりもある。
下手に反応してしまうと気があると思われてしまうため、その気がねぇなら通り過ぎるのが礼儀だ。
それにしてもアレが隣の教師とは・・・もっと現役を退いた古株でも引っ張ってきたのかと思っていた。それとも、どこかで既に教師として採用されていたのか。
流れていく子供達の一喜一憂を聞きながら、魔法実技場へと踏み入る。
魔法実技場とは言うが、特別に大きな仕掛けがあるわけじゃねぇ。
ただ距離が図りやすいように設計されていたり、邪魔になるようなものが置かれてなかったり、天井が存在しねぇだけで、ほとんど外と変わりはない。
軍の弓練場に近いな。
荷物や道具を管理する屋内空間と、実際に魔法を使って技を磨く屋外空間を雑に並べただけの建造物。
その中には既に、一度教員室を経由した俺より先に到着し、準備を済ませた気の早い奴もいるみたいだが、俺は俺で準備がある。
そんなやつに構うことなく、荷物置き場の点検や、使用する的に不備がないか、起動するかなどを確認していく。
「この僕を無視するとは・・・」
「まだ休憩時間だからな。お前の相手をしなきゃならねぇ理由がねぇ」
「休憩時間であっても、就労時間ではありますよね? 職務怠慢というものでしょう?」
「贔屓はしねぇ。そう言っておいたはずだが?」
「いいのでしょうか? そのような態度で。昨日の件・・・この僕は表沙汰にしても、なにも困らないのですが・・・?」
「ああ、ジーナが言ってたぞ? ”まさか6歳や7歳で意味が分かるだなんてねぇ! 最近の子はマセ過ぎてやしないかい? 誰に教わったのやら――”ってな。お前がそんな話をしたとして、いったい誰が信じるんだろうな?」
「子供には意味がわからなくとも、大人であれば――」
「そんな子供の台詞を信じると? 実際にどこまで理解しているのかもわからねぇ、経験なんぞしたことねぇだろう子供の言葉を?」
「この僕の言葉であっても信じるに値しないと?」
「その目で確かめたわけでもねぇのに、誇張なしで話してるだなんざ、どうやって証明するつもりだ? 俺なら戯言だと思うね」
少々苦しい言い訳にはなるが、子供の言うエッチなことは、大人からすれば可愛いものであることがほとんどだ。
こんなことを言っているのがライザードであっても、言葉だけで大人を信用させるほどの表現をできはしまい。
ぐぐぐっ・・・と言い淀むライザードも、それをわかるぐらいには聡い。
それはいいとして、後ろで慌てるだけのバロンは、もうちょっと頑張ってくれ。そんな姿を見せられても、俺は兄上になんて言えばいいんだか。
その後。休憩時間が終わるまで、2人は大人しく魔法実技場の片隅に留まり、やがて他の生徒も集合し――鐘が鳴る。
「魔法実技の授業を始める」