作品タイトル不明
子供のパート3
「どこへ向かってるんだろう?」
「この先にあるのは運動場、武道場、魔法実技場、室内水練場―――」
「叔父様は汗がかきたかったのかな?」
「その可能性は十分にありますが、貴方は言葉の意味がわかっていっているのですか?」
「え?」
怪しい雰囲気を漂わせて歩く大人2人を尾行しながら、意味深なことを言うバロンへと、ライザードがその意味を問うが、その張本人は首をかしげるばかりだ。
「いえ、わからないなら構いません。ですが、この先は確か・・・」
「あれ? また校舎だ!」
「そうです! 中等部の校舎ですよ!」
「中等部? それって13歳から通うあれだよね?」
「ええ、幼少部を卒業後に通うこととなる場所です。ここは学園ですからね。敷地内に他の校舎もあるのです」
「卒業したのにまた同じ場所に通うんだね?」
「校舎が違うように、授業内容も違うでしょうから、場所は問題ではないんでしょう。味気ないという意見には賛同しますが、管理側として考えれば、一纏めにしていた方が問題が起きにくく、防衛も楽になるので当然です」
ライザードの言うことはバロンには少しばかり難しい。というか、学園で起きる問題――というものを想像し辛い。
これはバロンが軍のほど近くで育ったせいでもあるのだろうが、貴族としての実感が薄い影響もあるだろう。
貴族の一部裕福層の子供達は金目当てや嫉妬、逆恨みで狙われたり襲われることがある。
そうならないように、あるいはなってしまったとしてもいいように、一箇所に集中させている節があり、ライザードはいずれ国を背負うものとして、そのあたりのことをよく理解していた。
「ふーん? そういうものなんだね・・・あ! 中に入っていったよ‼」
「わざわざ中等部へ来る理由が? 幼少部ではできない話・・・? いえ、果たして本当にそんなものがあるのでしょうか?」
「階段を上るみたいだよ。それにしても静かだけど、誰も居ないのかな?」
「こちらはまだ授業が続いているようですね。なぜ幼少部だけが・・・!」
「あ! 部屋に入ったみたい!」
「確認しますよ‼」
子供2人は大人2人が消えた部屋の前で扉を見上げる。
その扉にはこう書かれていた。
「学園長室・・・・・・」
「こちら側から見る限り、かなり広く作られているようですが・・・」
ライザードは廊下側から壁を見て中の広さを予想する。
階段で曲がってから突当りまで、この廊下には他の扉がない。
つまり、今歩いてきた長さこそが部屋の広さの一端を担うわけだ。
「中でなにしてるのかな?」
「窓から確認すればよいのでは?」
「と、届かないよっ!」
窓の淵に手をかけて背伸びをしても、中の様子が窺い知れない。
少しだけ汚れた綺麗な壁に張り付くばかりだ。
「よし、貴方が台になって、この僕が中を見るとしましょう!」
「えー⁉ やだよ‼ なんで僕が⁉」
「貴方は未来の皇王たるこの僕を足蹴にするつもりなのですか? 不敬罪になりますが、よろしいので?」
「叔父様が誰が偉いとかは関係ないって‼」
「それはあの人にとって、です。この僕や貴方には関係があるに決まっているでしょう‼ それとも、貴方はお父上を困らせたいのですか? そうであれば、良い手であることは認めますが・・・」
「なんでお父様が出て来るのさ!」
「子供のしたことの責任を取るのが親の務めというもの。当然でしょう?」
「うぅ・・・わかったよ・・・」
バロンは渋々膝をつき、四つ這いとなって台を演じる。
その上にライザードが立ち、中の様子を覗き見る。
「せめて靴は脱いでよ‼ 殿下‼」
「今は有事。詮無き事でしょう」
「意味が分からないよ‼」
窓越しに見る大人2人はなにか話し込んでいる。
男は考えるように、女は手を叩いて思いついたように。
その後また1つ2つ会話をし、沈黙の中で男が女を見つめ続けると―――突然女の方が興奮しだしたと思うと、さらに奥の部屋へと誘導する。
男はそれに応え・・・‼
「気付かれないように中へ入りますよ‼」