作品タイトル不明
重役出勤
「ふぅ・・・行ってくれたか・・・」
ドラゴンが彼方へ飛び去るや否や、脱力して一息つくアルガムのおっさん。
「なんだ。無理してたのか?」
「あったりめぇだろうが‼ ドラゴンだぞ‼ おめぇと違ってこっちは生きた心地がせんわ‼」
「それならアイツが居なくなるまで待ってりゃよかったじゃねぇか」
「そうもいってらんねぇのよ。もうじき客が来る」
「客?」
「心当たりあんだろうが」
そう言われてもな・・・と、思ったがなるほど。
「ようやく本部からお出ましか」
「おめぇが早すぎるだけだ」
「だがそれでも、この惨状だ。これじゃ間に合ったなんて言えねぇよな? ここが本部直轄地だってんなら、もっと早く対応できなきゃおかしいだろ」
「そりゃそうだが・・・それにしてもおめぇ、よくもまぁドラゴンなんかに勝てちまったもんだな。どうするつもりだ?」
「都合のいい戦力として囲われる気はねぇよ。それに、その話はもう蹴ってきた」
「・・・はぁ。もうすぐ到着しそうだって連絡を退避所で聞いた瞬間に飛び出してきてよかったぜ。これでドラゴンにまで居座られてちゃ、話が余計にこじれてただろうからな」
「どうだかな? いっそドラゴンが全部薙ぎ払ってくれた方が速く片付いたかもしれねぇぜ?」
「そんときゃここら一帯もまとめてなくなっちまってりゃあしねぇか?」
呆れながら言うアルガムと顔を見合わせて笑う。
本気で言ってるわけじゃぁねぇが、それはそれで面白かったかもな・・・なんて、思っちまうのが冒険者。お互いに引退しても、そんなことを考えちまってるんだなという苦笑でもある。
「そんで? そっちの嬢ちゃんはなにを嬉しそうに見つめてんだ?」
「ん? 気になるかい? けれど、これはまだ秘密にさせてもらう! 色々と準備が必要だからね‼ では私は一足先に失礼するよ‼ 復興には人を寄こすから、それで許しておくれよ‼」
ニヤニヤ頬を緩めたままの顔で、珍しく全力疾走を見せ駆け抜けるジーナ。
ここに残っていられても話がややこしくなりそうだから構わねぇが、慌ただしい奴らだな。
名前も名乗らず飛び去るドラゴンと、後始末を放り出して帰る研究者。
どちらも見合った成果を出してくれりゃいいが・・・。
「さて、それでは説明してもらおうか? ドラゴンはどうした?」
「これはこれはお早いご到着で。間に合っていたのなら説明は不要では?」
「・・・貴様っ‼」
背後から声を掛けてきたのは本部のギルドマスターことヴィーちゃん。
「落ち着きなよヴィーちゃん」
それをたしなめる自称師匠ミスティ、またはヴァイパー。
「ドラゴンが来たという割りには被害が少ないのが気になるな」
パチモン騎士まで連れてきたのか。
「・・・んんっ‼ 元冒険者ゼネス。現状の報告をしてもらおう。ドラゴンはどこへ消えた?」
「山頂」
「なぜだ?」
「用が済んだからだろ?」
「・・・・・・ではその要件とはなんだ?」
「アンタには関係のねぇことさ」
「――ッ‼‼」
青筋を立てて怒るギルドマスターを横へ押しやって、自称師匠が前へ出る。
「ヴィーちゃんをあんまりいじめないで欲しいな? これでもいろいろと気にしてるんだよ? それに、ここへ来るまで君達全員の心配をしていたのも本当なんだ。今回の事件が起きた原因を知らなきゃ対策も打てない。だから、ね?」
「嘘なんざついてねぇよ。ドラゴンが山頂へ言ったのも、用があったのも、その相手が冒険者じゃなかったのも全部真実だ。手短に話しただけでな」
「それを証明できる人とか、モノとかはあるのかな?」
俺は周りにいる全員を示すように視線を送る。
「本当なんだね。じゃあもう少しだけ詳しく教えてくれないかな? ドラゴンはまた来るの?」
「もう来ねぇよ。多分な」
「多分で納得できるわけがないだろう‼‼」
俺の物言いに我慢できなかったのかヴィーちゃんが叫ぶ。
だが、
「その可能性について考えるのは俺じゃねぇからな」
俺から言えるのはそれだけだ。
次元龍と言っていたアイツや、会話の中で出てきた龍王がここへ来ることはないだろうが、その他まで来ねぇっつー保証はねぇ。
「でも、そういうだけの根拠はあるんだよね?」
「・・・・・・」
元から低い身長で。さらに下から覗き込むように、上目遣いで媚びた態度をとる自称師匠。
なにかと世話になった人ではあるが、やっぱ恐ろしく鬱陶しいな。
「今回ここへ来たのは龍王を冠するドラゴンの内の1頭。そいつと敵対するドラゴンの手先がここにいると知って現れたが、勘違いだったんで帰った。だから同じ奴が来ることはねぇよ。それ以外までは知らねぇがな」
「勘違いだったっていうのは、どうやってわかったの?」
「話し合いで」
「話し合いで町がこんなになるかなぁ? それに、地面に残ってる焦げ跡なんかも気になるんだけど?」
「さっきそいつが言ってたじゃねぇか。ドラゴンが来たにしては被害が少ねぇって。もちろん相手はドラゴンだ。会話をするだけでも苦労した。地面の焦げ跡はそのせいだ」
そう言われた自称師匠はむぅ! と唸った後、しばらくこちらを訝かしみ続けた。