作品タイトル不明
微かな繋がり
突然の物言いに面を喰らったが、すぐに理解できた。
「俺を対抗策にしようってか?」
《直接的な言い方をすればそうだ。勝手な言い分だということもわかってはいる。だが―――》
それ以外に思いつく手段がねぇんだろう。
今まで。敵となる存在の居場所を知っていても、近づくことすらできなかった。そのせいで無為な時間を過ごし、同時に。なにかが起こる前に対処しなければと心を擦り減らしてきた。
なのに、今。目の前には現状を聞く限り真逆の能力を持った存在が居る。
これを神の導きだと。運命だと言わずしてなんという!
こいつら龍王からすれば、そう考えるんだろう。
なにせこいつらは神の御使いのような立場であり、神を信仰しているんだからな。
だが、
「――断る」
俺には関係ねぇ。
世界の理だか意思だかにも興味はねぇしな。
《なぜだ⁉ このまま放っておけば・・・‼》
「どうなるのか・・・、お前に想像がつくのか?」
《っ‼‼》
そう。
そいつがなにを企んで、どうしたいのかがわからねぇ。
ドラゴンにとっては一大事でも、人間の俺達にとってはなんの違いもねぇかもしれねぇ。
そんな状況で命を懸ける必要がどこにある?
「いいのかい? 助けなくても。一般的にドラゴンは魔法を司ると言われていて、ここまでの話でもそれ自体は間違いなさそうなんだけれど・・・」
「話を聞く限りじゃぁそいつが台頭したって、どうなるのかもわかりゃしねぇんだ。そんな状態でドラゴン、しかも龍王を何頭もつれて行かなきゃならねぇような戦場に近づきたくなんざねぇよ」
「それもそうだね。新たな神が生まれたとしても、私達に関与してくるかは定かではない。むしろ、なにも起こらないかもしれない。なら、危険を冒す必要はない・・・というのは実に論理的な答えだ」
《危険などありはせん‼ 汝は見ているだけで良いのだ‼ 我らの近くにいて、加護を奪わせなければそれで――‼》
「そうは言われてもな。俺達に負けた奴の台詞をどうやって信じりゃいい? その保証は誰がするんだ? 他の龍王については知らねぇが、お前と同時期に・・・ってことは強さも大して変わらねぇだろ? そんな状態じゃ行くだけ無駄だ」
《ぐっ⁉ 確かに我は負けた身だ。それに関してはなんとも言い難い。しかし、加護がなくなれば汝らも困るのではないか? 人間達も加護を重んじると聞く。なにより、薬や祈祷の術を失いたくはあるまい‼》
「ふぅむ。そう言われると私としては少し痛いね? 祈祷も魔法の一部だと思っているし、いずれは研究もしようと思っていたからね。それに冒険者や旅人みたいな職業の人間も困るかもしれない。暑さや寒さを和らげたり、結界で安全を得るような人間はね?」
薬については治療系統の魔法があればどうにかなるだろう。
その手の職に就いている人間は忙しくなるだろうが・・・、そこは数を増やせばなんとかなる。
そう考えれば、全体としてはそれほど困らねぇ気もするな?
まぁ、やっぱ一部を除いて――だけどな。
「けれど、うん。やっぱり、そうだね。一番困るのは宗教家になるだろうね? 私達の生まれた皇国には加護信仰が根付いている。それを失うようなことになればどうなることか・・・あまり、想像したくはないね」
ジーナの言葉は正しい。今回も。
だから俺は言ったんだ。
弱いままじゃ行けねぇってな。
「今はまだ時期じゃない。少なくともお前が、もっとまともな強さを手に入れねぇと無理だ。他の龍王にしてもな。継承した記憶から戦い方を引き出してからじゃねぇとどうにもなんねぇ。そのためには時間が要る。だから、今は断る」
《今は、ということは――っ‼》
「お前は知らねぇだろうが、お前の話を聞いてる中で思い出した連中がいる。そいつらには俺も悩まされててな。どうせ、いつかはぶつかることになる。それまでにお前は強くなれ。少なくとも、背中を預けられるぐらいにな」
《・・・・・・良かろう》
「それよりゼネス! 思い出した連中って言うのはもしかして――」
「ああ。望福教だ」
”神など存在しえず、全ては人の思いの果てにこそある”
そう奴らを表現したは現教皇の孫娘で、今は聖女のユノだったか。