作品タイトル不明
とある理由5
《汝の言う通り、我らは龍王を継承した後。その者を処罰するため出向いた。継承が間に合わずこれなかった者もいたが、10頭以上でその者を囲んだ》
そうだよな。
世界から魔力を吸い上げるのは、こいつらにとっちゃ禁忌。
確実に事を成すために頭数を集めるのも当然のことだ。
《結論から言おう。我らは――・・・撤退を余儀なくされた》
「負けたのか? 新任とはいえ、龍王をそれだけ集めといてか?」
《相手は世界から吸収した魔力を己がものにしていた。その量は凄まじく、周囲の大地が荒廃するほどだった。なにより、奴は・・・・・・》
「奴は?」
《我らからも。力を吸収してみせた》
「ああ、なるほど。それならば確かに、数の優位は活きにくいね。ゼネス。君にもできたことなんだ。そのドラゴン君にだって、出来てもおかしくはないだろう?」
ジーナが納得したように感嘆の声を上げる。
「魔力の吸収か・・・俺は狙ってやったわけじゃねぇけどな」
つっても、偶然で済ませるもんでもねぇ。
訓練すれば今後も使えるだろうし、俺以外の誰かに同じことができたって不思議じゃねぇ。
その条件なら、負けても仕方がねぇ・・・のか?
それでも対10頭ともなれば、相当の実力差がねぇとそんなことにはならねぇような――と訝しんだが、そういえばこいつは碌に訓練も稽古もしたことのねぇ雑魚だったな。残りも同じような連中なら、勝てなくてもおかしくはねぇか。
《なにやら不快なことを考えているようだが、力というのはなにも、魔力のことだけではない》
「なに?」
《言ったであろう? その者は神を自称した。奴にはそれができるだけの力があった。それほどの力があるなどと、誰が思い至るものか》
「ふむ。魔力以外・・・となると身体の力とかかな? そういった魔法も、あるにはあるしね」
減退の魔法か。
強化で打ち消されるうえ、先に強化を使われてると無駄撃ちになるせいで滅多に使われねぇ魔法だが・・・。
《いや、そうではない。わからぬか?》
「なにがだ?」
《記憶の我は汝をなんと称していた?》
「記憶の・・・――?」
今のコイツに戻る前、ジーナにさえ空気を読ませるほどの風格や威厳に満ちたドラゴンと話していた時。
神について話してはいた。
あの時なんて言われた?
『加護とは神の愛そのものだ。そんなものを司る存在が居れば、神に他ならぬとは思わぬか?』
「まさかっ――‼」
《そうだ。奴は我らから加護の力を奪い去ろうとしたのだ。それだけは甘んじることができなかった。故に、我らは撤退を余儀なくされた》
ドラゴンは神の意向により世界を守る役目を担う。
そんなドラゴンが、神の愛たる加護を奪われるなんざ許せるはずもねぇ。
「この世界から加護を奪い去る力か・・・そう言われれば、正しく神だね。何度も同じことを聞くと馬鹿に見えるから嫌なんだけれど、もう一度聞かせてもらうよ。本当に、そんなことが可能なのかい?」
《奴にはそれができるらしい。その力の根源は・・・》
「ギフトだな?」
《確認したわけではない。だが、他には考えられぬ》
「詳細はわからねぇのか?」
《どのようなギフトが発現したのか、などという話は家族にのみしたようだ。しかし、その家族はもうおらぬ。わかっているのは、その力が嘘ではないこということのみ》
「君達はそれにどうやって気付いたんだい? 加護の力が消えるだなんて、目に見えるわけじゃないんだろう?」
《気付いたのではなく、そう警告されたのだ。これ以上ここに居座ればどうなるか・・・とな。言葉の真偽はその場では確認できなかったが、後に遺跡に存在する装置で計測して真実だと発覚した》
「出向いたドラゴン全員の加護レベルが低下してた、か?」
《本当に、よくわかるものだな?》
「俺のギフトと正反対の効果だからな」
そんなギフトがあるのか? って疑問は残る。
残るが・・・恩寵なんつーギフトも。周りからすりゃぁ似たようなもんだ。
《そう! それでだ‼》
なにを今更思い出したかのようなデカい声でドラゴンが紡ぐ。
《我らと共に、奴の討伐へと向かってはくれぬか?》