作品タイトル不明
とある理由4
《その者は竜の住処を離れた後、世界から魔力を奪い始めた。まるで世界に風穴でも開けるかの如く。強力に。大胆に。それを悪しき行為だなどとは、全く思ってもいない素振りで。ただ淡々と奪い続けた。世界の均衡が崩れるほどに》
「それがつい最近の話だってのか?」
《つい70年ほど前の話だ。人間にとっては一昔前なのかもしれぬが、我らにとってはそれなりに最近の出来事だと言える》
70年。
下手すりゃ2代にわたるほどの時間だが・・・ドラゴンにはそうでもねぇのか。
「で、そいつの目的が神への復讐。その手段が世界の理への干渉、あるいは破壊だったから、立て続けに似たようなことをしでかした俺を迅速に排除しようとしたと?」
《おおよそ、その理解で構わないが・・・しかし、動機が違う》
「動機? そのドラゴン君の目的は復讐ではなかったということかい?」
《いや、復讐ではあったのだと思う。運命などという存在、またはその形を許せなかったのは間違いない。ただ・・・・・・》
「煮え切らねぇな?」
《う、うむ。なんといえばいいのか。ありていに言えば、その者は神を自称したのだ》
「神様に? どうしてまたそんなことを。というか、例えそれがかなったとしても、時間を巻き戻せるわけじゃないだろうに」
「事実は消せねぇが、犠牲に意味を持たせることはできる」
「どういうことだい?」
「家族の死は自分が神になるための必要な犠牲だった・・・とかな」
「苦し紛れが過ぎないかい?」
自分で言っててなんだが、俺もそう思う。
だが、そうとでも思わなきゃ気がふれただけになっちまう。
《その者が言うには、加護などというものがあるから神の存在を消しきれず。誰もが信じてしまうのだと。そう言っておった》
加護・・・。
確かにその存在は謎だ。
まず加護の強さにレベルなんてもんが存在しているのがおかしい。
それで多少なりとも運がよくなったり、作成する薬の効力が上がったり、祈りや結界が強力になるのも意味不明すぎる。
なに1つ原理がわからねぇ。
だからこそ、神の所業だなどと言われちゃいるが・・・。
「それでどうやって神になるつもりだったんだ? そいつは」
《この世界から加護の存在そのものを取り払おうとしているようだった》
「まさか! そんなことが可能なのかい?」
《不可能だ――と言いたいところなのだがな。わからぬ。だが少なくとも。その者にはもう、神の加護はなかった》
「・・・そのために魔力を奪って回ったのか?」
《それだけではないはずだ。もしそうであるならば、その時点で話は終わっていたのだからな》
終わっていた?
これは過去の話で、もう終わった話じゃねぇのか?
「待て。そいつはその後どうなった?」
《・・・・・・今は北の大陸の果て。そこで力を蓄えている》
「仕留め損なったということかな? 龍王の力をもってしても。それとも、同族のよしみだとか、そういうことだったりするのかな?」
《その時の我らはまだ龍王ではなかった・・・というのは言い訳だろうな。継承を控え、浮足立っていたこともあり、まんまと逃げられてしまったのだ。故に、この件は我らが代で治めねばならぬと思っていた矢先に・・・》
「俺か・・・」
ドラゴンの視線が物語る。
「我らの代で、と言う君達の気持ちもわかるけれどね。急いだ結果がこれじゃあ、もっと慎重になった方がいいんじゃないかな? それとも、なにか急ぐ理由でもあるのかな?」
《初めはそのつもりだったのだがな。なんの糸口も見つからぬまま・・・既に70年。ようやくその一端が動き出したのかと。勇み足だったことは認めているつもりだ》
「君達ドラゴンは1000年以上生きるのだろう? 70年をそれくらいというには長すぎるけれど、君達ならば・・・」
《そうもいかぬのだ。我らは龍王だからな。龍王の寿命は600年ほどだ。しかも、そのうちの前後50年は自身と後継者の育成に当てることになる。つまり、龍王が龍王として活動できる時間は500年と言ったところ。その内の70年近くを手掛かりもないまま過ごしてしまったのだ。焦るなと言う方が無理だろう?》
龍王の寿命が短いのは力の代償か?
いや、継承なんて常識外れの魔法を使うためか?
まぁそこはいいか。
人間換算でも。人生を50年と考れば、7年を無為に過ごせば焦りもする。
つーか・・・、
「居場所がわかってんなら、なんで直接仕掛けねぇ? なにより、どうやって逃げられた? 話を聞く限り、お前1人じゃなかったんだろう?」