作品タイトル不明
とある理由1
《まず、龍王の世代交代はほとんど同時期に行われる。とはいえ、つつがなく進行したところで10年以上かかることを考えれば、人間から見れば長丁場になるかもしれぬ。これには色々と理由があるのだが、一番の問題は龍王を継ぐに足る能力を持つ者達が同時期に生まれてくるからだ》
「それが全部龍王になるのか?」
《・・・いいや。そうではない。そして、それこそが発端だったのだ》
「どういうことだ?」
《龍王となるためには試練を受け、先代の龍王から認められなければならぬ。そこで認められれば、その龍王の恩寵を受け取り次代の龍王となる。当然、そこまでの過程にて教育という名目で、龍王のなんたるか。存在意義や責務などを教わってからの話だがな》
試練の内容はわからねぇが、要は候補者の中から先代が気に入ったやつを選んで決めるってことか。
《試練の内容は主に魔法に関わることだが、ここでは関係がないので省くぞ。結果として、我を含め数十の龍王が生まれた。それが約70~80年のことだ》
「そうなると必然的に。優れた力を持っていたにもかかわらず、誰にも選ばれなかったがために龍王にはなれなかった個体も同時期に出てしまっていたわけだね?」
《うむ。なぜかはわからぬが毎度そのような者が出てしまう。そもそも龍王となれる候補自体が竜族全体から見れ少数で、選ばれぬ事の方が珍しいのだ。それ故に目立ち、選ばれなかった者は落ちこぼれとされてしまう。候補にすら入れなかった者達よりも優れている事は確かにもかかわらず・・・な》
何食わぬ顔で会話に参加するジーナの問いをドラゴンが肯定する。
それが・・・なんつーか、人間だけじゃねぇんだな。そういう下らねぇ考え方をするのは。
俺やクライフも、王侯貴族から見れば随分な落ちこぼれだ。
爵位を基盤とする権力社会についていけず、夢ばかりを追い求め逃げ出した弱者。
それが俺達のパーティーが皇都で伝説と呼ばれた理由に違いない。
サン達に聞く限り今は変化してるようだったが、元は間違いなくそうだったはずだ。
「そいつらがなにかしたのか?」
《恐らくはその中の1頭が、だな》
「煮え切らねぇ言い方だな?」
《我らにも本当のところはわからぬのだ》
「それも、なにがあったか聞けばわかるのかな?」
《そのはずだ》
引っかかるが・・・今はいいだろう。
さっさと続けろとドラゴンを促す。
《我が先代から龍王について学んでいたころのことだ。落ちこぼれと呼ばれていた内の1頭にギフトが発現したらしく噂が届いた。その者が家族を殺し逃げたと》
「それは―――・・・・・・家族からも、落ちこぼれてしまったことで辛く当たられていたとか。そういった話かい?」
《我が聞き及んだ限りではそのようなことはなかったはずだ》
「っつーことは慰められたことが惨めになった本人の仕業か―――」
「あるいは誰かの虐めか悪戯が原因だろうね」
《なぜそうなるのだ? 調査の結果は不運な事故だと・・・》
「後者か・・・最悪だな」
「可哀そうに。家族という唯一最大の味方を殺され、さぞ恨んでいることだろう。どれだけ傷付けられても、もはや帰る場所は奪われた後なんだから」
《我の言葉が聞こえぬのか? 事故だと言っておるだろう! 死因はねぐらの崩落と火災。火元は崩落した岩に含まれていた白鉄。それが落下時に火花を生み、乾燥していた空気と相まって周辺へ群生していた草花に引火。それにより閉じ込められた家族が逃げられず窒息する形で―――》
「聞いてもいいか?」
《我が説明している最中になんだ!》
「お前らドラゴンは岩に押し潰された程度で死ぬのか?」
《あり得ぬ! 我らの鱗は岩になど負けぬ。身体も同様だ!》
「お前らドラゴンは熱さで死ぬのか?」
《それこそあり得ぬ‼ 先ほどまでの戦闘のなにを見ておった‼》
「じゃぁなんで、その家族は死んだんだ?」
《――ッ⁉⁉》