作品タイトル不明
豹変
「誰だ? てめぇは・・・・・・」
《龍王だと、名乗らなかったか?》
「冗談のつもりか?」
《そんなつもりはない。しかし、良く気付くものだな?》
「さっきまでとそれだけ態度が違えば、そりゃ気付くだろうよ」
《なに。気にするほどのことではない。我は受け継がれた記憶・・・言ってしまえば先代の龍王。その一角に過ぎぬ》
受け継がれたってのがどういう意味だかよくわからねぇが、別人格ってのは間違いなさそうだ。
《我の存在がよほど気になるようだな?》
「あともう一押しって所で現れて、しかも死にそうだったはずのその体が、綺麗に修復されてんだから当然だろ」
そう言っている俺の顔はコイツにはどう映ったのか? 鏡がねぇから自分じゃわからねぇが、とにかく納得のいかねぇ顔をしているんだろう。
ドラゴンはなにか、おかしそうに笑ってから続ける。
《フッ・・・そのような顔をするでない。汝の強さは確かなものであった。この龍王を敗北寸前まで追い詰めたのは紛れもない真実。そのことは存分に誇るがよい》
そう言っておきながら、しかし。
《さりとて、この身は龍の王。世界を担う役割がある。だから、生かしてもらわねば困るのだ。この記憶も、受け継がねばならぬのでな》
「世界の理がどうこうとは言ってたが――記憶を受け継ぐってのはどういうことだ?」
《汝の見ている通りだ。我々竜族には記憶を受け継ぐ手段が存在している。本来ならば時間をかけ、ゆっくりと同化することで人格や性格に干渉しないよう施されているが、今回のような緊急時にはこうして取って代わることもある。防衛本能とでも言えばよいか。そうすることで多くの危機に対応してきたのだろう》
「つまりそうなったのは俺のせいだってのか?」
《半分はな》
「半分? 残りは?」
《世界の意思・・・とでもいえばよいか》
また世界かよ。
不愉快な答えを聞いたあたりで限界が訪れる。
「「「「―――――――――ッ⁉⁉」」」」
黒と青が支配していた空間は消え失せ、荒れた大地を瓦礫が囲む景色へと戻る。
そこには掠り傷すらついてねぇドラゴンの姿があるわけで。
全員へ絶望と諦念が巻き付き、首を絞める。
そんな息苦しさの中でも、せめて聞かなきゃならねぇ。
「その、世界の意思ってのなんだ? 俺の存在は、それほどの脅威か?」
《―――ふむ。その前に。我が問に答えてもらおう》
俺には仲間達を巻き込んだ理由と、同じ轍を踏まないようにするための答えを聞かなきゃならねぇ。
そうじゃなきゃ、また同じことが起きるかもしれねぇからな。
特に。ジーナなんかは、コイツが世界の理に反していると言っていた魔力吸収の研究をしている。
だから・・・――なのに!
《汝、なにをした?》
その答えになにがある?
その先に、どんな意味があるってぇんだ。
それでも、
《答えよ》
「まず――」
と、俺が口を開こうとした瞬間。
《邪魔をするな‼》
「「「ッ⁉⁉」」」
羽を大きく広げ、大地を踏みしめての一喝。
凍り付くような足元の振動はもちろん、攫われそうなまでの強風があたり一帯を駆け巡る。
振り返ると、苦々しい顔をしたクライフとアンナ、フェリシアが食いしばるように見つめていた。
「まず、なにを聞いてるのか。詳しく話せよ。なにをした? だけでわかるわけねぇだろ?」
《そうか? いや、そうだな。汝に聞かねばならぬことは多くあるが、あの者達は汝の仲間だな?》
「ああ」
《先ほどまで、あの者達の魔力は底をつきかけていたはずだ。それがどうして、あれだけの魔法を繰り出せた?》
「俺が魔力を贈ったからだ」
《贈る・・・では、竜の息吹の妨げになったものはなんだ?》
「そういう道具だ。もっと正確に言うなら、そういう魔法を詰めた道具だ」
《そのような魔法が? いつの世も、面白いことを考える者がいるのだな。ならば、汝はどうやって我が前へ現れた?》
「時空・・・いや、次元魔法っつーべきか? まぁどっちでもいいな。ただ空間を繋げただけだ」
《よもやそのことに気付き、さらには実現せしめるとは――》
「聞きたいのはそれだけか? だったら次は、世界のどうこうとやらを教えてもらおう。俺が死ぬべき理由もな」
《まだ汝に聞かねばならぬ》
「なんだ?」
《汝―”恩寵”というものに覚えはないか?》