軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

始動

「先生‼ どうするんですか⁉ もうエリックさんの魔力が‼」

「あぁ、わかってる。それをどうにかするために罠が必要なんだが、持ってるよな?」

「え⁉ はい! でも両方使った後で魔力はないです。それに、片方は回収できてないのでドラゴンの後ろに・・・」

「あるならいいんだ。正確な場所はわかるか?」

「ここからだと僕らから見てドラゴンの右斜め後ろだと思います」

そのあたりまで感知魔法を広げると確かに反応が。ヨハンの言う通り魔力は空のようだが問題はねぇ。

「持ってる分を貸してくれ」

ヨハンからもう片方の罠を受け取り、

「ジーナ! 阻害装置を!」

「それはいいけれど・・・もう1つはどうするんだい? 今から回収して間に合うだろうか・・・」

「その必要はねぇよ。もう繋いでる。このまま複写するが、この装置に例の魔法以外は登録してねぇよな?」

「っ! もちろんだとも! そうか! そういう使い方もあるんだね!」

ジーナが勝手に感心してるが、俺としてはこの方法が真っ先に浮かんだというか、これ以外の使い方が思いつかなかったぐらいなんだが・・・っつーか、なにかと便利な技だから1つぐらい罠を買いなおしてもいいな。

3つの罠に同量の魔力を注ぎ、ジーナから受け取った装置から内部に記憶された魔法を残り2つへ複写。

これで阻害に必要な要件は満たした。

わずか2分程度とはいえ絶対的有利を取れる。

「罠の設置は覆う形がいいのか?」

「効果範囲が重なる中心にドラゴンが収まるに出来れば、それに越したことはないだろうね」

「なら、正面はいいとして。残すは左斜め後ろってことか」

「僕がやります‼ やらせてください‼」

「そうだな。ヨハン。お前に任せる。それと他に2つ。頼みたいことがあるんだが、いいか?」

「2つもですか⁉」

「ダメか?」

「いえ! そんなに頼ってもらえるなんて思ってなかったので、嬉しいです‼ それで、僕はなにをすればいいですか?」

「1つは変化魔法でドラゴンの攪乱をして欲しい」

「攪乱ですか?」

「あぁ。出来ればエリックの魔法ごと丸々包んじまうのがいいな」

「包む・・・変化魔法ってことは攻撃もするんですよね?」

「攻撃ってよりは脅かす感じだな。相手に情報を与えたくねぇのと精神的な揺さぶりが欲しい。アイツは今、間違いなく恐怖を感じてる。そこへ拍車をかければ、判断力を鈍らせたまま混乱に陥れられる」

そこまでする必要があるのか? と問われるかもしれないが、敵はドラゴン。やらねぇ理由がねぇ。手を抜けばこっちが死ぬだけだ。

「うーん・・・」

「難しいか?」

「はい。どっちかならギリギリなんとかなるかもしれないんですけど、僕ももう魔力がなくて・・・」

俯き答えるヨハン。

だがそれはなにも恥ずかしいことじゃねぇ。

必死にここまで戦ってきた証拠だ。

なにより、魔力の枯渇はエリックやヨハンだけじゃなく全員そうなってる。

例外はドラゴンから魔力を奪った俺と、敵の観察と俺の相談役をしていたジーナぐらい。

その俺でさえ、かなりの魔力を消耗してるんだ。無理もねぇ。

俺はそっとヨハン胸に手を当て魔力を送る。

「これでどうだ?」

「えっ⁉ これって⁉」

ヨハンは驚くが、今ゆっくりと説明してる時間はねぇ。

「最近覚えた。で、どうだ?」

「凄いですね‼ これなら全力でも撃てますよ‼」

「じゃぁもう1つの方だが・・・エリックにも。今の要領で魔力を送るから、こっちへ意識を向けておいてくれって伝えて欲しいんだ」

「離れた相手にまで魔力を⁉」

「ま、そういうことだ。頼んだぞ!」

罠を手渡し肩を叩いて送り出すと、ヨハンは勢いよく走り去っていく。

「確認なんだけれどね。そんなことができたのかい?」

「やったこともねぇな」

「なにを当然のように・・・いいんだよ? エリック君の下へ移動しても。装置の起動は私がしようじゃないか」

「なに言ってんだ? エリックに魔力を渡したら俺の魔力なんざ残る分けねぇだろ」

「は? ああいや、そうだね? 彼の魔力量はかなりのものだからね。え? じゃあ君はその後どうするつもりなんだい?」

「いるだろうが。魔力を余らせてる奴が1人・・・心当たりぐらいあるんじゃねぇのか?」

「それはもしかしなくとも私のことじゃないかな⁉ ちょっと待っておくれよ! 私は最悪の場合に全員で逃げるために温存しているんだ! 意味もなく見物していたのではなく! その手の魔法が一番得意で、種類も豊富だからなんだよ⁉ そのための魔道具だって‼ それをっ・・・⁉ なにより! 私だけの魔力でドラゴンに勝つつもりなのかい⁉」

「悪いが、他に方法はねぇぞ? エリック以外にドラゴンを捕らえられる奴が居ねぇからな。それに、俺からすりゃぁお前の魔力でも十二分だ」

「なら、万が一の場合には・・・」

「俺と一緒に死んでくれ」

「―――っ‼‼」

町を守るだけならいざ知らず。

ドラゴンの標的が俺だと知っても、俺のために戦ってくれた仲間達。

俺1人の犠牲で済むならそれでもよかったが、皆殺しにすると脅された後じゃぁ逃げるわけにもいかねぇだろう。

「まるで愛の告白じゃないか! ちゃんと、責任は取ってもらうからね‼」

耳だけ赤くしながら、なに馬鹿なことを口走ってやがるのか・・・。

だが、了承は得た。

エリックへと感覚を伸ばし、繋げる。

ぶっつけだったが問題なく魔力を送り込むことに成功。

にしても、ドラゴンから奪った魔力だけはある。

エリックの魔力を限界まで回復しても、まだ微妙に余ってる。

これを半端に残したままジーナの魔力を吸い上げて想定外のことが起こっても面倒だ。

より広く、全体を意識することでクライフやジェイド達全員の魔力を感知し、残量がいい感じになるよう魔力を配布する。

翼竜とも繋がったのは意外だったが、アイツも立派な戦力だ。大した量じゃねぇが、無いよりマシだろ。

こうして肌で感じるほどに、どれほどの心積もりでこの場に残ったのかがわかる。

どこまで擦り減らしても、勝つための手段を残している。諦めないという思い。

それは即ち、俺の命を救おうという気概。

感謝しかねぇ。

俺はジーナから受け取った魔力と装置を以って前へ出る。

《下らぬ真似はここまでだ‼ 愚か者どもよ‼ 覚悟は良いな‼ 小細工など通用せんぞ‼ 骨の一欠けらも残らぬと思え‼》

同時。

炎の檻は溶け、猛り狂うドラゴンが怒鳴る。

その瞬間に俺は。

火蓋を切る様にヨハンへと合図を出した。