作品タイトル不明
傷はなく、気付かれず、気付いたこと
「ジェイド⁉ ・・・に、ヨハンか‼」
突如現れ、目を疑うような光景を作り出した2人を見て、即刻射撃体勢を解除。
直ちに地を這うドラゴンへ駆け寄り2人の無事を確認する。
「今までどこに居やがった⁉ 怪我は⁉」
「ずっと近くに居たっての‼ 怪我もねぇよ‼」
「僕だって! 元気ですよ! 怪我もないです! それにほら! 皆も‼」
ジェイドは煙たそうに。ヨハンはなぜかそれと競うように。その最後に付け足すように、少し遠くを指さしながら申告する。
俺がその指の示す先を確認すれば、エイラ達4人の姿が。
一先ず、死にそうなほどの怪我はないようで安心した。
《死に急いでおきながら―――っ‼》
「うぉあ⁉」
「ぅわっ⁉」
咄嗟のことで忘れていたがドラゴンの顔の上に乗ったままだった2人が、動き出したドラゴンに振り払われ落ちてくる。
《なにを悠長に話そうというつもりだっ‼‼》
2人を受け止めて地面へと降ろす頃には、首を持ち上げたドラゴンは”竜の息吹”を撃ち込もうとしていた‼
しまった‼ と思うよりも早く。
「グルルァアア‼‼‼‼」
《ぬぐっ⁉⁉》
「――ッ‼」
さっき一瞬視界に映った見覚えある傷だらけの翼竜が突っ込んできた。
荒れた地面をなめるように、それでいて最後には突き上げるように跳ね上がる特攻が、意外にもドラゴンの下顎へと直撃。
開かれるはずだった口はまたも強制的に閉じられ、竜種最大の攻撃は再度不発に終わる。
その間に俺はジェイドとヨハンを連れ、ドラゴンから距離を取る。
特大の情報を手に入れながら。
「ギャウ‼」
そこへ、自慢気な様子の翼竜が合流。
ドヤ‼ と胸を張るその姿は実に勇ましい。
「やるじゃねぇか。これもお前らの作戦か?」
「いや、さっきのはそいつが勝手にやっただけだ。そいつが俺様の言葉をどれだけ理解できるかわからなかったからな。数に入れなかった」
「グルァ‼」
「これは・・・心外だ! とか、そういうことですかね?」
「そうだろうな。ちゃんと竜種は賢いってのは教えといただろ?」
「うるせぇな! その賢いがどのくらいなのかなんて、気にしてる余裕なかったんだよ‼ 悪かったな‼」
「ギャウ、ギャウ」
吐き捨てるような謝罪であっても翼竜は納得したのか、うんうんと頷く。
「それで・・・こっから―――」
《どうするつもりだ?》
ゆらり。と勝ちあげられた頭をゆっくりと戻すドラゴンが不敵に聞く。
《時間を稼いだところで、汝らに勝利などない‼ それとも、本気で我が息吹と撃ち合うつもりか? 矮小なる人の身で‼》
まぁ、確かに? 俺も単純な魔力の撃ち合いで龍王相手に勝負になるとは思っちゃいねぇ。
だが、俺には・・・いや、俺達には。
ついさっき得た情報がある。
だから、凄んだところで。もうなにも、怖くはない。
「お前こそ。どうするつもりだ?」
《・・・どういう意味だ?》
「おい! なに言ってんだよ⁉」
「先生⁉」
俺の言葉に。ドラゴンのみならず、その情報を暴いたはずの2人までもが困惑しているのはなんでだ?
ちょっと不安になって周りを見ることになったじゃねぇか!
少なくともクライフ達やジーナはさっきの情報をちゃんと掴んでいたようで、幸いにも同じ考えであるらしい。
視線がぶつかると同時に頷かれた。
「お前の守りは完全でも盤石でもねぇって話だ」
《・・・・・・・・・》
「お前の光の膜みてぇな防御は、対象をちゃんと意識している必要がある。そうだろ? だから、攻撃中は防御できずにカウンターを喰らい、意識外から来たジェイド、ヨハンの攻撃にも対応できなかった。極めつけは最後の翼竜だ。あれは油断か? それとも、息吹を撃つ時には防御出来ねぇか?」
《そうだったとして、汝になにができるというのか‼ ただ死を待つのみではないか‼》
どうにか表情に出さないようにしていたようだが、図星すぎたのかわかりやすい反応を見せる。
これが演技だったなら舌を巻くが、ここまでを見る限りこいつは若く青い。
そういうのとは無縁だろう。
「どうやら息吹は相当集中しねぇと出せねぇらしい。けど、残念だったな? 俺には仲間がいる。俺が死ぬまでにお前が生きてる保証はあるか?」
《全員纏めて薙ぎ払えば同じこと‼》
「させると思うか? そもそも、お前は俺を狙わなきゃならねぇんだぞ? 俺にはあたってやる義理もねぇ。俺が逃げ回ってる間、お前は防御もなしでいつまで耐えられるだろうな?」
俺がジェイドとヨハンを連れて下がったのは、ドラゴンとの撃ち合いのために移動した誰もいなかった場所だ。
取り囲むってほどじゃぁねぇが、半円ぐらいにはなってる。
その上で俺が反対側へ走りこめば、がら空きの背中がクライフ達にさらされるわけだ。
ガン‼ と地面に大剣を突き刺し、どうするのよ? と言わんばかりのアンナを筆頭に。
全員が臨戦態勢。
「そうだな。取り敢えず・・・・・・試してみるか?」
ドラゴンの返事を待たず、冒険者達が牙を剝いた。