作品タイトル不明
side――栄光ある騎士団7
危ない‼ ということは誰にでもわかった。
なぜならドラゴンが”竜の息吹”を撃つ態勢に入ったからだ。
「エイラ‼ 強化魔法だ‼ 瓦礫に強化魔法をかけて一瞬でいいから耐えさせろ‼」
「わ、わかったわ‼」
「ケイト‼ お前は魔法で土台を作って‼ 発射台を組み上げろ‼」
「任せて! すぐやる!」
「リミア‼ 射出は任せるぞ‼ 最悪なのはドラゴンまで届かねぇことだ‼ 威力重視でいけ‼」
「わかりました」
「キューティー‼ 射出に合わせて上昇気流が欲しい‼ できるか⁉」
「もちろんですわ‼」
「ヨハン・・・・・・覚悟はいいか?」
ジェイドは急いで全員に指示を出し、ヨハンの意思を確認する。
「1回目は不発だった。けど、流石に2回目もってことはありえねぇ。アイツに防ぐ方法があるかもわかんねぇけど、確実に止められるのは不意をつける俺様達だけだ」
「・・・はい」
「成功しても、失敗しても、どうなるかはわかんねぇ。死ぬかもしれねぇ。今なら逃げられる。それでも、やるのか?」
「・・・はい!」
ヨハンの瞳には確かな決意の色が見て取れた。
「よし‼ やるぞ‼」
「はい‼」
エイラとケイトで用意した即席の発射台へ盾をソリのように寝かせる。
その上に鎧を軽くしたジェイドがのり、キューティーから魔法盾を受け取ったヨハンが後ろ向きで続いて乗り込む。
背中合わせの2人は重さで言えば2人分よりそれなりに軽いはずなのだが、それでも発射台からピシッ! という嫌な音が聞こえる。
それを聞いたリミアがすぐさま魔法の発動を準備。発射台の周りに魔法陣が形成されると、合わせてキューティーが発射台の前へと躍り出る。
「ヨハン! 魔法盾を!」
「了解!」
リミアの声を受けヨハンが魔法盾を起動。
範囲よりも強度を意識して魔力を流し込み展開する。
「いきます!」
「わかりましたわ‼」
それを確認したリミアの合図で、今度はキューティーが炎を纏い地面を焼きながら一直線に駆け抜ける。
そうすることで発射台の前には炎の道ができ、風が地面から吹き上げる。
同時に、ヨハンの腕には衝撃が加わる。
リミアの魔法だ。
ケイトが作った岩の土台に空いた穴から、勢いよく水の魔法が撃ち出される。
それを魔法盾によって受け止めることでジェイド達は発射台から射出される。
弾かれた水が跳ね返ってリミア達へ襲い掛からないよう、さらにはキューティーの炎をも消せるように、土台には打ち込み口となる穴と前方へ水が流れる出る排水口が用意されていた。手早く作ったにしてはよくできた配慮だといえる。
ただ、
「うぉおおおおおおお⁉⁉」
「ぐぅううううう‼‼」
撃ち出されるジェイド達へは、そんな配慮が微塵もなかった。
ジェイドは魔力の操作があまり上手くない。
だから、鎧を軽くするのに手一杯で受ける風の影響を考える余裕がなかった。
ヨハンは魔力の総量があまり多くない。
だから、魔法盾を維持するのに手一杯で受ける衝撃を軽減するまでは出来なかった。
2人は魔法盾に覆われてはいるが、魔法盾は魔法を弾くことだけが性能。
移動に伴う風や、魔法を防いだことにより発生した衝撃には対応していない。ましてや、足元から来る揺れなど知ったことではない。
結果。2人は前からの風と後ろからの衝撃に押し挟またまま、不出来な発射台から伝わる振動に揺さぶられ、地面から吹き上がる風に煽られて中空へ放り出された。
その軌道は想定よりも高く、姿勢は最悪。
「ジェ、ジェイドさん‼ これ、どうするんですか⁉」
「うるせぇ!」
そのまま投げ出されそうになったヨハンが反転、ジェイドにしがみ付くことで分裂を阻止する。
本来は直接ドラゴンの横っ面に突撃する計画だったが・・・幸いにも進行方向自体は悪くない。高さも、低いよりはまだ修正が効く。
「このまま突っ込むぞ!」
「でも! それじゃ上を通り過ぎるだけですよ⁉」
「忘れたのか? 俺様の装備は―――」
「そっか! 重さを変えられるんでしたね‼」
「そういうことだ! 後はドラゴンの真上から攻撃すれば・・・」
「あっ! でも待ってください!」
「今度はなんだ⁉」
「ドラゴンの真上でどうやって止まるんですか⁉」
言われて気付いたが、確かに。上空で鎧を重くしても直角降下は出来ない。
かといって今から重さを調節しながら顔面直撃軌道など描けるはずもない。
「――いや! ドラゴンの上空で俺様が風魔法を使って勢いを殺せばいい! ドラゴンに気付かれる可能性はあるだろうが、この方法ならそう難しくもねぇから失敗だってねぇはずだ‼」
ジェイドの装備の内、鎧は魔力を与えるほど軽くなり、盾と剣は魔力を与えるほど重くなる。
今は鎧にだけ魔力を集めている状態。どうせ後でこの魔力は盾へと移動させる予定だった。
それを鎧から盾への移動ではなく風の魔法の元にしてしまい、改めて盾へと魔力を集める。
複雑な手順はなく、魔力量的にも問題はない。
唯一、手間が増える分、多少の時間を要し、その分だけ自身の発覚を高めるということにだけ目を瞑れば、実行は容易。
「賭けですね。ドラゴンの頭の上でそんなことをするだなんて・・・」
「そんなのはこの作戦自体がそうだろうが!」
「それもそうですね!」
ぐんぐんと目標へ近づくさなか、2人は笑っていた。
とんだ無茶をしているからか、もしくは――・・・作戦が予想以上にハマりすぎたからか。
「今です‼」
「言われるまでもねぇってんだよ‼‼」
大口を開けたドラゴンの真上。合図に合わて鎧に集めていた魔力全てを使って風魔法を前に向けて放つことで直進と停止。
一瞬。宙に縫い留めらていれた体は、重さを取り戻した鎧も相まって、あっという間に地面へと引き寄せられる。
だが、それだけで終わりではない!
落ちながら構える盾にも魔力を通し、さらなる重さを。さらなる力を。
今! 勝った気でいるドラゴンの高い鼻っ柱へ‼