作品タイトル不明
一旦と一端
違和感に気付いたのは癖で防御姿勢を取ってからだ。
普通に考えれば超高濃度の魔力砲。
ちょっとやそっとの方法で防げるはずのねぇ代物。
なのに、痛みがなかった。
痛みすら感じねぇぐらい一瞬で死んだっつー可能性もあったが・・・だとすりゃぁ、もう1つの違和感がおかしい。
それは目を瞑って両腕で体を守る姿勢を取る直前の光景。
魔力とはエネルギーである。
膨大なそれは当然の如く光り輝く。
ドラゴンの口に集まっていた魔力も。確かに目を潰さんと迸っていた。
だが、最後に見た光景は間違いなく抜け落ちそうなほどの黒。
この2つの事柄から導き出される答えは1つ。
《ほう。汝が・・・―――》
そう、俺達はまだ死んじゃいなかった。
竜の息吹は不発に終わったのだ。
その事実を理解するまでに一瞬の時間を要した。
そのせいでドラゴンの反応へ追及ができず、膠着した空気だけが音を飲み込む。
この僅かな静寂を壊したのは、他でもないドラゴン自身だった。
《理に反するものよ。なにゆえ汝は世界を乱す?》
正直に言おう。
言葉の意味が理解できなかった。
そのまま黙っていると、
《沈黙は許さぬ! 答えよ、人間‼ 汝はなにゆえ世界を乱そうとする⁉》
ドラゴンは高圧的な態度で問い直す。
「もしかしなくても、俺に言ってんのか?」
《他に誰がいるというのだ!》
あまりの事態に一応確認してみると・・・どうやら、こいつが探してたのは俺ってことらしかった。
《さぁ‼ 答えよ‼ 人間‼》
壊れたように同じ言葉ばかり繰り返すドラゴンへ、返す言葉が俺にはない。
なぜなら、理に反した覚えがなく。世界を乱しているつもりもないからだ。
では、どうするか?
簡単だ。
「なんの話だ?」
聞いてしまえばいい。
わからないことを考えもせずに聞くのは良いこととは言えねぇが、わかりようがねぇもんは考えたって無駄だ。話を進めるためにも、ここは聞く必要がある。
《とぼけても無駄だ。我らが守護するは世界の理。それに反する汝のような存在は決して捨ておくことなどない。しかし、なにゆえそのような蛮行に至るのかは知らねばなるまい。追従するものを出さぬためにも》
相変わらず話が通じねぇな。
けどまぁ、”世界の理”・・・ねぇ?
新しい情報が出ただけマシか。
どんな理かはわからねぇが、なんの理かはわかったわけだ。
後はこの調子で少しでも範囲を絞りたい。
誤解ならそれを解けばいいし、そうじゃなけりゃ―――・・・。
「だから、俺はなにもしてねぇだろうが‼」
《ではなぜ、我が魔力を奪った?》
魔力を?
言われて。体の外どころか、町の一角を覆うほどの溢れる魔力に気が付く。
「どうなってんだ? こいつは・・・」
《どうなってるもなにもなかろう? それは汝が我が魔力を奪ったが故だ。その身に余る魔力は体に収まりきらず。挙句、辺り一帯へと影響を及ぼしているではないか!》
「で? これが理に反する力ってわけか?」
《そうだ‼ もしその力が世界へ向けばどうなる⁉》
ああ、そういうことか。
世界に存在している魔力。いわゆるマナを自在に吸収・利用できるとなれば、確かに”世界の理”なんてもんでさえ歪められそうではある。
《それは、我ら竜王にのみ与えられた権利‼ 世界を守護するための力‼ 私欲に溺れる人間などが手に入れて良いものでは断じてないのだ‼》
主張については理解した。
納得もできる内容だ。
だがな。
俺はこの力を世界とやらに向けたことは一度もない。
今までは誰か、あるいはなにかと繋がってようやく魔力を回収してきただけだ。それはこれからも大きく変わることはねぇだろう。俺はもう冒険者じゃねぇんだからな。
それに・・・自分の限界を超えた魔力を扱えるつっても、それは一時的なもんだし、魔力酔いもする。悪用できるほどの使い道だって思いつかねぇ。
にもかかわらず、そんな力を持ってるってだけで難癖を付けられるなんざたまったもんじゃねぇ・・・んだが、この話に落としどころはねぇんだよな。
「だったら俺に、なにを望む?」
《知れたこと―――》
死ぬつもりはねぇ俺と、生かすつもりのねぇドラゴン。
結局、 殺し合いに(そう) なるか。