軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

個人S級冒険者の条件

「え⁉ それって先生がまたここに帰ってくるってことですか⁉」

フェリシアの推測にいち早く飛びついたのはヨハン。

出来るならまだ。もっと多くのことをヨハンはゼネスから教わりたいと思っていたからだ。

しかし、

「たぶん、そうはならない。アイツが冒険者に復帰したとしても、俺達のパーティーに戻ることにはならないと思う」

クライフがそれを否定する。

「どうして・・・ですか?」

「ゼネスが本部へ召集された理由がフェリシアの予想通りなら、アイツは個人S級冒険者として復帰することになるからだよ」

「個人S級だと、なにがいけないんですか? 皆さんと等級が合わないからですか?」

「いや、そういうわけじゃないよ。ただ、個人S級っていう存在が・・・ちょっと特殊なんだ」

苦笑するクライフに代わり、ジーナが冒険者ギルドの等級と決まりについて説明する。

「パーティーのS級と個人のS級では大きく意味が違っていてね。どちらも実力を考慮してのものではあるんだけれど、個人S級はその名の通り。たった1人でS級モンスターを討伐できる実力者を示す等級。ギルドからすれば有難い存在であり、自慢の存在でもあると同時に、脅威でもあるのさ」

「脅威・・・ですか?」

「そうだとも! 考えても見たまえ。彼は1人でワンダーゴーレムに匹敵する力を持っている。それを街中で無差別に振るわれたらどうなると思う?」

「先生はそんなことしませんよ‼」

「それには私も同意するよ。けれど、仮にそうなったらという話でね・・・どうなると思う?」

「それは・・・・・・」

ワンダーゴーレムは間違いなく化け物だ。

ただ1体。皇都に入り込んだだけであっても、皇都のあらゆるものの内、7割程度は消し飛ぶと言っても過言ではないほどの力を持っている。

魔法も物理もほとんど通らず、そこいらの建造物に負けない巨体。

創造された魔法生物であるから痛みや恐怖を感じることもなく、止めるには破壊する他に手立てがない。

ゼネスに討伐されたそれしか見たことがないヨハンには想像し辛いかもしれないが・・・その脅威は正に、厄災や天災の類。

では、それを凌駕しうる力を持った人間はどうか?

いかな人格者といえど、なにが引き金となってその力を他人へ振るうようになるかはわからない。

ワンダーゴーレムの驚異のほどはわからないヨハンだが、ゼネスの実力については少なからず知っている。そして、それが人や町に向けばどうなるかも、想像に難くない。

死体の山を踏みつけて、城を抉ることさえできるだろう。

「言葉でいうよりも、よほど危険だろう? 故に、冒険者ギルドでは規格外の力を持ったものには個人S級の等級を与えて、協力という名の制約を課す。具体的には、活動範囲の限定。生活圏の指定。ギルド本部の意向に従い任務をこなすという約定。その他、細々としたものに至るまで。強制力の有る魔法契約で縛られる。その代わりに、圧倒的な待遇と幾つかの権能が与えられるんだ」

「だからパーティーに戻れないんですね・・・」

「化け物に徒党を組まれると困る・・・という考えなんだろう。まぁそれを間違っているとも言えないからね。その可能性も考慮して、彼が冒険者に復帰したとしても、宛がわれる活動範囲はもっと南側か、あるいは最も険しいと言われる東側になるだろうね」

アドレスはチャード集合国を囲う標高の高い山々:ハードラインの一角に過ぎず、冒険者の活動場所は他にいくらでもある。

それでもアドレスが霊峰と呼ばれ、冒険者の目指すべき場所と言われるのはドラゴンが観測されたからだ。

だが、個人S級になればそれを選ぶ権利は失われ、単純に会うことすら難しくなってしまう。

ゼネスはどんな選択をするのだろうか?

その場にいたほとんど全員がそのことについて考えていた。

そんな意味のない心配をする面々を他所に、ただ1人。

アルガムだけはあっけらかんと笑っていた。

「奴がそんなに未練ったらしいとは思わんがなぁ―――」