軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

返らずは及ぶ訪問

「聞いておきたいことなんて言われたってな・・・」

ある程度のことはゼネスから聞かされている。

それが正しいかどうか、それだけで困らないかどうかは今後の活動でしかわからない。

そうなった時初めて、他の誰かに意見を求めるのであって、今現在。ほぼ真っ白な状態で聞くべきことなどを思い当たりもしないジェイド。

「ここ1年の活躍が凄い・・・とのことですけど、それって先生が居なくなったからなんですか?」

そんなジェイドに先んじて、ヨハンが思いのたけをぶつける。

これはゼネスから聞かされた顛末と真実を擦り合わせ、自分の今後を占う。ヨハンにとっては重要な質問だった。

「うーん・・・そうと言えばそうなんだが・・・難しいな」

歯切れを悪くしながら答えるクライフを遮るように、

「アンタ達はゼネスが引退した理由はちゃんと聞いてるの?」

アンナが率直に聞く。

「実力不足だったって・・・」

「そう・・・なら、それが全てよ。嘘じゃないわ」

「じゃあやっぱり、先生が居なくなって戦いが楽になったんですね・・・」

「ええ! 気を使わなくてよくなったんだから、当然よね!」

自信たっぷりに答えるアンナ。

そのことに少なからず衝撃を受けるヨハンだが、しかし。

「ですが、ゼネスさんが前線を構築してくれていた時よりも、私達全員の怪我はかなり多くなっています。気持ちとしては楽になったかもしれませんが、戦闘面では決して一概には言えないかと」

フェリシアが付け足すように言いながら、腕をさする。

服の上からでは確認できないが、そこを怪我しているのかもしれない。

「そうだね。僕自身も、ゼネスさんに鍛えてもらっておいてよかったと思ってる。前はなんの意味があるんだろう? って思ってたし、ほとんど習慣になってたからって理由で続けてたけど、最近は魔法の詠唱中でも近接戦になったり、急に攻撃が飛んできたりで、迎撃や回避の機会も増えたからね。長い杖を槍や棍みたいに扱えることの重要性を実感したよ」

続けて、エリックも壁に立てかけた長い杖を見ながらしみじみと言う。

「それは・・・そうかもしれないけど! 不安にさせるわけにはいかないでしょ! アタシ達は大丈夫ってことにしておかないと! それに、戦闘が気楽になったのは嘘じゃないでしょ⁉ 前は気が気じゃなかったんだから!」

「まあそうだな。アイツは自分に出来ることは全部自分でやってたからな。それでいて役に立ってないだなんて思ってたんだから、いつなにがあっても不思議じゃなかった。結局は最後までなにも起きなかったけど・・・」

アンナの言葉も間違ってはいないとクライフが懐かしむようにしつつ肯定する。

「先生は・・・なにをやっていたんですか?」

そこまで言われる状況とはどういうものなのか。

ヨハンにはわからない。

「聞いてないの? 1人で敵の注意を引いてたのよ」

「それは聞いてますけど、それって危険なことなんですか?」

「普通はやらないよ。長い時間、緊張状態が続けばミスだって起きるだろう? そうならないために、分担する仲間を作るんじゃないか。それをアイツは。どんなモンスターが相手だろうと、何体居ようとお構いなしに・・・。まさか! 君達にもそんな戦い方を教えたんじゃ――⁉」

「それはありませんので、ご安心ください」

リミアが冷静に返す中、ジェイドは1人。

俺は近いことを言われてたような気がするんだけどな? と首を傾げつつ、けれど話は先へ。

「そうか。それならいいんだ。盾を持ってるならまだしも、アイツは生身のままそれをやってた。一撃もらえばどうなるか! って相手であっても、敵の鼻先に立って挑発するみたいに・・・アイツの実力は知らないわけじゃない。けど、だからこそ心配だった。アイツのレベルはずっと止まったままだったから」

頭打ちの能力で無茶のように思えることをしていれば、身を案じられても仕方がないというもの。

だが、それはつまり。

「限界を感じていたのは先生ではなく・・・?」

「私達ということになりますね。ゼネスさんにはその責すらを負わせてしまいました」

リミアの疑問にフェリシアが頷く。

「ちょっと! 別にアタシ達だけが引退を押し付けたわけじゃないでしょ! 本人も薄々気付いてたし、納得もしてたじゃない! なにより、引退を選んだのは・・・・・・」

どんどんと言葉尻が弱くなっていくアンナへ、しかし同調するようにアルガムが続く。

「そうだな。武器や装備の作成の腕を見込んでウチにも誘ってみたが、すげなくされちまった。いい腕してんだから、工房だって構えられただろうに。今の居場所を選んだのは本人っつーわけだな」

「そうだったんですか⁉ 確かにゼネスさんならいい職人になってたかも」

「そうなってたら、僕らの先生にはなってなくて。僕らもここには居なかったってことですよね」

「そういうこった。あいつの腕の良さはおめぇらも認めるところだろう?」

「え⁉ どういうことですか?」

アルガムは周知の事実かのように言うが、ヨハンやジェイド達にはピンとこない。

「どういうことって・・・おめぇらが持ってる装備のほとんどはあいつの作ったもんじゃねぇか! もしかして、知らなかったのか?」

「いえ、先生が作ったっていうのは聞いてたんですけど、出来の悪い試作品だって言われてたんで・・・」

ヨハンの答えに頷くジェイド達。

「そりゃぁ試作品ではあるだろうが、特別不具合がない時点で悪い出来ではねぇし、本来それだけの素材を使った装備が試作品になることはねぇんだぞ? ましてや、おめぇらみたいなのが持ってることもおかしいはずなんだが・・・いや、あの嬢ちゃんとの合作だと考えりゃぁそうなのか? こっちの頭が痛くなってきちまうぜ」

アルガムが眉間を抑えながら困惑気味になるが、ジェイド達からすれば貰っただけの物。素材だなんだはよくわからない。

なんて言って返せば・・・などと考えている間に。

「おや? 随分と賑やかなところ悪いのだけれど、注文の品を取りに来たよ。工房に足を運んだ無駄な時間を返して欲しいね?」

「噂をすれば嬢ちゃんか・・・」

アルガムは顔すら上げずに声だけで識別するが、代わりにガタリと立ち上がり反応したのは、

「ジーナ様‼‼」

この場で誰よりもジーナを敬愛するケイトだった。