軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

別に別離べくにせつに

くだらねぇ言い争いの末に、気付いたら日も暮れて、得るものもなかったなと振り返りながら、研究所の前でジーナに別れを告げる。

「はぁ・・・時間を無駄にした」

「どうせ暇だったんだろう? なら、十分に有意義な時間だったと思うけれどね?」

「私もそう思います!」

ジーナのあれだけの姿を見て、尚も態度を変えないケイトに呆れるが、どうせ暇だったんだろう? という言葉には返す言葉もない。

だからといって・・・と返したくなるが、それをすれば元の木阿弥。

俺にとって、ここでの滞在はただの調整。

体調の悪そうだったジェイドとキューティーの回復を待ちつつ、全員の準備を整えさせるための時間でしかない。

それでも、時間の使い方ぐらいは選びたいもんだ。

故に、ここは黙して流す。

いかに有意義だったかで意気投合する2人を尻目に、晩飯はなんにしようかと意識を旅立たせ始めたあたりで、

「君には感謝しているからね。今日の食事は期待しておくといい」

背中に刃でも突き立てられたような衝撃だ。

「・・・どういうことだ? 俺は帰るぞ」

「もちろんそうだろうとも! 私も、流石に眠いのでね。夕食にまで、付き合うつもりはないよ。ただ、お礼もしないのはあれだろう? だから、さっき宿へ連絡を入れさせてもらったんだよ。ああ! 支払いは私が持つから、そこは安心してくれたまえ」

当たり前のように俺の思考を読んでくるのはもういい。

だが、どの宿を使ってるのかを知ってるのはどういうことだ?

ケイトが・・・? と思って視線を送るが、あれはなんにも考えてねぇ顔だ。恍惚として、それでいて別れを惜しむような若干の寂しさを現す表情をしてやがる。

どうやってんだよ、それ。

「なんで宿が。っつーか、なんで宿側も当然のように対応してんだ・・・」

「あちらも商売だからね。利益が出るなら引き受けるだろう。なぜ、君の泊まっている宿がわかったかと言われれば。逆に、なぜわからないと思ったのか? という話になるね」

「手短に話せ」

「お金で安全が買えるなら君は買うだろう? つまり、そういうことだよ」

なるほどな。

確かに俺は基本、一番高い宿を使う。

その理由が正しく”安全だから”だ。

詐欺、窃盗、誘拐、奇襲、その他諸々。

犯罪やそれに関係するものは、どれであっても面倒に他ならない。

その危険性を金で解決できるなら、それに越したことはねぇ。道具でも、施設でもな。

戦場にあろうと、その道中であろうとも、安全は金で買えってのが、俺の基本的な考え方で、そこを読まれたってわけか。

「2人はやっぱり・・・・・・⁉」

「それはもういい」

最早何度目かの勘繰りを入れるケイトは脇に置く。

「だが、いつにも増して迅速だな? いつもなら、もっと後になってから礼を持ち出して研究に付き合わせそうなところを」

「そうだったかもしれないね。けれど、今回は速やかに感謝を表したいと思ったのでね。今日はまだ食事を取れていないし、まずは手直なところから・・・という奴だよ。正式な報酬は研究が完成、あるいは、新たな発見があってからだね」

「結局、後から呼び出そうともしてるってことじゃねぇか。にしても、今回なにか特別なことがあったか?」

研究への協力ということなら、いつもと変わらねぇし。内容についても、特別変わっちゃいねぇはずだが?

「なに。君は変わってないよ。ただ、私が・・・いや、私も変わっていなかった。それがわかったことが嬉しかっただけの話さ」

「なんだ? その歯に挟まったようなもの言いは?」

いつも要らねぇことばっかりハッキリ言うくせに。もっとハキハキしゃべれ。

「ふむ。これはちょっと恥ずかしい話なんだが――わかったよ。わかったから、そんな眼で見ないでくれないかい? 妙な気分になってしまうだろう」

まったく・・・と襟を正すように肩を回し、

「ここのところ研究意欲が湧いてこなくてね。悩んでいたんだよ。私の魔法への欲求はこの程度のものだったのか! 富や名声を手に入れれば、薄れてしまう程度ものだったのか! 私はそんな俗物だったのか⁉ とね」

しかし、不安を覗かせる顔で首を竦めて見せた。

「私は自分が変わってしまったのではないかと、そう思っていた。そして、用もないのにこちらの研究所へ来て、夜風を浴びていたところに、君が来た。そうしたら、興味をそそられるような話をするし、挙句。私は私だ。なんて言うじゃないか。そんなことを言われてしまったら・・・ねぇ? 感謝の1つくらい示しておこうかなと思っても、おかしくはないだろう?」

「その程度のことでなに言ってんだか。どうせ、自分以外にはなれねぇんだ。つまらねぇことは考えるだけ無駄だろ。結果にしても変わってねぇしな」

「そうだね。君くらいに達観していれば、それでいいのかもしれないね」

突き放すようにそう言ったはずだが。

なぜか、そこには嬉しそうな顔で笑うジーナが居た。