作品タイトル不明
side――ジーナ・V・マーラグ3
勢いに任せて、2人を研究所の前まで引っ張ってきたわけだが・・・。
ここへ至るまでに冷たい夜風にさらされた私の脳は、冷静さを取り戻していた。
私はなにをやっているんだ‼ 恥ずかしい‼
それが今の感情に他ならない。
どうして、ここまでしてゼネスに私の価値を理解させようとしている?
なぜ、たまたま居合わせただけの少女に、私達の関係性を見せようとしなければならない?
だが!
もうここまで来てしまった以上は、引くに引けない。
ここで”やっぱり解散‼”なんて、かっこ悪すぎるからね!
半ば自棄になりながらも2人を中へ。
早く中へ入ってくれないかな? さもなくば、私は君に。なにをするかわからないよ?
そんな心の声が聞こえたのか、観念したようにゼネスも研究所に入った。
さて、ここからが問題だね。
私達の関係を証明する物なんてあったかな・・・?
いや、あってもそれを見せられるかどうか・・・まぁ、多少機密に触れようとも大丈夫だろう。
なぁに、私は偉いからね!
いざとなればゼネスのせいにすればいいのさ!
君が私に断りもなく、勝手にいなくなっていたのが悪いんだぞ!
一足先に中へ入ったケイト君は、大人しく待っていて――は、くれなかったみたいだね。
ロビーとはいえ、私の研究所だ。それなりに珍しい、目を引くものもあるのは確かだが、それほどまでに感嘆の声をあげられると少し照れてしまうね? 悪い気はしないけれど。
しかし! 見て欲しいのはそれではない!
「この扉だ! 開けてくれたまえ!」
私を含めて、一部しか知らない扉を惜しげもなく披露する。
本来は隠しておくべき技術が使われているから、部外者に見せるなんてとんでもないのだけれど、これに使われている技術の一端・・・というか、大本が隣に居るからね。秘匿する意味は薄い。
「・・・階段?」
その通り、だけどそれだけじゃない!
「これは――ッ⁉」
変化を目の当たりにしたケイト君の目が大きく見開く。
この驚きの中に少し称賛の混じった表情が、私はこの上なく大好きだ。
さぁ! ゼネス! 君もこの表情を私に見せるんだ‼
そう思って、息まいて顔を覗くと。
「迷宮にあるアレか」
「全っ然、違う‼ 全く! 君は! 本当に! なんにもわかっちゃいないんだね‼」
なんで真顔なんだい‼ ほとんど普通の表情じゃないか‼
確かに! 確かに、似ているというか。ほとんど同じ技術だけど‼
失われていた技術を蘇らせたんだよ⁉ もっと、こう! あるだろう⁉
それに比べてケイト君は賢いね。
そうだよ! この扉は普通の扉としても使えるんだ!
常に稼働している転移門とは違うのさ‼
魔力の消費量だって大幅に抑えられるんだからね!
どうだい? ケイト君”全ては魔法の上に”へ来ないかい?
・・・駄目か。
友達と居たい。なんて言われてしまっては、これ以上勧誘は出来ないね。
なぁっ⁉ だから、行き遅れてなんかないと言っているだろう‼
うぐっ⁉ 何人が結婚って・・・そんな・・・!
ッ‼ 全員だ! そう、全員が結婚している‼ 私達は魔法研究の第一人者だからね‼ って⁉ 聞いてるかい⁉
またそうやってあの時の話を‼ いつも君は、まるで私がやったかのように語るけれど、やったのは私の、年上の仲間だ‼
たしか彼女は君と同じ年齢だったはずだよ‼ だから焦って――
――っじゃなくて‼
「この扉こそが! 君の時空魔法を使った私の研究成果物で、君と私の関係を象徴する代物だと言う話さ!」
危ない・・・もう少しで仲間の悪口を言わされるところだった。
私達も女だ。婚期を気にすることもある。
方法を選んでいられない時だって・・・あるのかもしれない。
本人の名誉のために言うが、その美貌は彼の仲間だったエリック君が鼻の下を伸ばすくらいには確かなものだったし、体形も男好みと言って差し支えない。
ただ、少し癖が悪いだけなんだ。
っと、しまった!
意識が別の方を向いている間に2人で話が進行している!
恩着せ? あぁ、研究に協力してもらうために色々と手は回したね?
それが・・・? 君としては気に食わなかったと。
けれどね? 素直にお願いしたところで君は首を縦に振らないだろう? ならば私の行動は仕方がないと言えないかい?
なにより? なんだい?
えっ⁉ まさか‼ 気付いていたのか⁉
咄嗟に目を逸らしてみるものの、これで誤魔化すのは無理があるか。
しかし、それだけなら――どうしてそのことをっ⁉
帰りの扉のことまでわかるのは、どういうことなんだい⁉
いや‼ これは好機なんじゃないか⁉
「はっはっは! 流石だね? たったこれだけの情報で、そこまで理解が出来るなんて。まるで長年連れ添った相方のようだね?」
あえて煽る‼
予想通りの嫌な顔! ここまでくると、むしろ清々しいというか。気分がいいね?
先の展開が読めるのは・・・なにも、君だけじゃないんだよ?
後は程よく刺激すれば、君は勝手にしゃべってくれるだろう?
その結果。
「普通・・・夫婦でも、そこまではわからない」
私達の関係は決して”他人”などではない。ということが証明されるというわけだ‼
ついでに、教え子から気味悪がられるといい。
私をからかった罰だよ。