作品タイトル不明
後始末の算段2
「まぁ、落としどころはどこだっていいんだ。問題があったとしても、俺が悪かったってことにしておけば、勘当なりなんなりで責任は拭える」
「ゼネス。なにもお前が全てを背負う必要などないんだ。ゴルドラッセだってそんなつもりがあったわけでは――」
「それは別にいいんです。俺は家名や兄上、御父上の立場を利用することはあっても、家にこだわったり貢献なんてする気がないですからね。兄上になら、道具として使われたって文句はないですよ。ただ、まだ解決してない問題がありまして」
「はぁ・・・わかった。その信頼だけ受け取っておくことにするよ。それで? その問題というのは?」
「あの女、カーナの素性ですよ」
「素性?」
「知りませんでしたか? アイツは帝国貴族じゃなく、王族の血筋だったそうです」
「なに⁉」
「なんですと⁉⁉」
兄上だけでなく隣にいたゴルドラッセまで目を丸くして驚いて見せる。これが演技なら大した役者だが・・・。
「本当のことなのか?」
「受け渡しの時に聞きました。このことは知っていたのか? ゴルドラッセ」
「まさか! そんなこと知るはずもありません‼ なにより、敵の言うことです! 本当かどうかも――」
「いや、信憑性については間違いねぇ。なにしろ、その情報を俺に教えたのは自由騎士・フリーダムだ」
「は?」
ずっと近くにはいたものの、空気を呼んで黙っていたであろうジェイド達。だが、予想もしない名前がでたことでジェイドから素っ頓狂な声が漏れ出る。
「ゼネス様? それはどういうことでしょう? 自由騎士とは、あの自由騎士でしょうか? 個人S級冒険者の?」
「他にどの自由騎士がいるんだよ」
「それならばそれこそが嘘でしょう! その者は今現在はチャード集合国に在籍しているはず。帝国になど――」
「そいつは2代目だ。中身も女になってるから即わかる。冒険者の間では有名な話だな」
「はぁ⁉」
ジェイドはそのことすら知らなかったのか勢いを増した変な声で鳴く。
「ということは、その元自由騎士・フリーダムがあの並んだ鎧の中にいたというのか?」
「鎧を着せられたデカい馬に乗っていたゴツイ鎧がそうです。帝国騎士団南端指揮総司令官補佐・フリードリヒ将軍、だそうで。なにがあったのかはわかりませんが、向こうの実質的な指揮官は元個人S級冒険者だったってわけです」
「ゴルドラッセ?」
「いえ、なにも・・・・」
兄上の視線にゴルドラッセは首を振るばかり。
だが、嘘をついているってわけでもなさそうなんだよな。
「そうか。であれば今は喜ぼう。もし彼女のことを処刑していれば、今頃は元個人S級冒険者という強力な人材が率いる帝国軍と闘っていたかもしれないんだ。そうならなかったのは、ゼネスのおかげだな。助かったぞ。流石は我が弟だ」
「お礼ならバロンに。我が甥の存在がなければ、俺はこの時期この場所にいなかったでしょうからね。執行官の年と重なったのも、奇跡といっていいかもしれません」
「そうか・・・流石は我が息子だ」
「ッ‼ はい! お父様‼」
同じく、ずっと兄上の隣にいたが静かに見守っていたバロンが兄上に頭を撫でられる形で褒めてもらう。年齢を考えれば一番賢い我が甥は将来有望だといえるだろう。
「で、結局のところ・・・なんでアイツを処刑なんざしようとしたんだ? ゴルドラッセ。こうやって情報が出揃ってみりゃ悪手にも程があんだろ。知らなかったから、で済む話でもねぇぞ?」
「それは・・・・・・」
一瞬渋るような表情を見せるが、兄上の無言の視線に圧でも感じたのか、
「お父上のご命令でしたので」
と観念したかのように告げる。
「父上の⁉」
兄上はなぜか驚いている様子だが、俺としては予想通りだ。
どうせそんなこったろうと思っていた。
だから、
「じゃぁまぁ、御父上本人に理由を聞きに行かねぇとな?」
そう言って要塞の居住区。
その際奥を睨むように見上げるが、
「それがな・・・ゼネス」
兄上が気まずそうに俺に言った。
「父上は今、ここにはいないんだ」
「は?」
さっきのジェイドとどっちが間の抜けた声だっただろう。
領主がいない? そんな馬鹿な。
「だから私が領主代行を賜ったのだ」
「・・・だったら、どこへ?」
「――皇都です。お父上は皇都へと向かわれました」
俺の質問に毅然と答えたのはゴルドラッセだった。