軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

沸々と憂鬱

「本当によかったのでしょうか・・・?」

我が故郷。要塞都市へと向かう馬車の中、リミアが呟く。

「気にするようなことじゃねぇって言っただろ?」

「ですが・・・あれでは、善意を押し付けたようなものではないでしょうか?」

リミアが言っているのはB級昇格試験最後の依頼についてだ。

ギルドで報酬が足りないと嘆いていたジェイド達の前に、都合よく商人が現れて不足分を出してくれた依頼。

内容は商人とその隊商への祈祷。

報酬は3万ガルド。

特別法外な値段ってわけじゃねぇが、そういう依頼は普通なら教会へ行くべきところを、あの商人はジェイド達に頼んだ。

その結果として、6人は晴れてB級冒険者となり、今はこうしてガルバリオ最北部を目指して移動中というわけだな。

件の商人はジェイド達へニアラプターの討伐を依頼した人物であり、2匹目のことを知って追加報酬まで出してくれ、その上で。

昇格の為に金額が足りないことへの落胆も見ていた。

リミアはそのことを気にしている。

自分達はどこぞの教会などと同じく、善意を強要したのではないか、と。

「あのなぁ・・・あの時にも言ったが、あれはあの商人なりに考えての行動だ。お前が気にするようなことじゃねぇよ」

「じゃあなにを考えていたのか説明していただきたいのですが?」

気持ちの籠った強い瞳を見せるリミア。

こういう時は頑固だよなぁ・・・こいつも。

そう思って考える。

正直にあったことを話すか、はぐらかすか。

大人の事情っつーか、暗黙の了解みたいなものがあるんだが、まぁいいか。

「あれはな。善意っつーよりは好意ってやつだ。仲良くしておこうって打算があっての行為だよ」

「打算・・・でしょうか?」

「ああ。その証拠に、最後にパーティー名を聞かれただろう?」

「・・・確かに聞かれました」

「あれは、お前らが近い将来有名になった時『自分はあの時の商人です』『ああ! その節はどうも!』みたいな流れから、自分のお願いを聞いてもらうための投資なんだよ」

「投資・・・ですか。なるほど」

「要はきっかけづくりだ。もちろん、純粋な応援の気持ちだってあるだろうが、それだけじゃねぇ。別にお前らが善意に付け込んだわけじゃねぇよ」

「それならばいいのですが・・・」

一応は納得したようで、俯いていた顔は外の景色に吸い寄せられた。

ジェイド達成人組はともかく、リミアやヨハンはまだ子供なんだから、善意でも好意でも、甘えられるんなら、子供らしく甘えておけばいいと思うんだがな。

そう思うのは大人が故か。

本人からすれば舐められたくないだとか、腐った大人のような真似はしたくないだとか、色々あるよな。

リミアの場合は母親のこともあるだろうし、誰かを頼らなければならない状況を好かないのかもしれねぇな。

8人掛けの大きな馬車は北への道をひた走る。

ガタゴトと左右に揺られながら、見送る背景はいつかの逆巻き。

その癖、思い出されるのは直近の懐かしくも憎らしい顔だ。

「贖罪のつもりで・・・?」

「なわけねぇだろ。けじめだ」

「ふむ。なるほど?」

意識のないゲーニルを縛り上げた後、町の外れでゴルドラッセに引き渡す。

「この男が盗賊団の頭領ゲーニルで間違いございませんか?」

「お前が使おうとしてた冒険者が言うにはな・・・。まぁ、違ったところでどうでもいいだろ」

「そうですな。どちらにせよ、この男は盗賊団の頭領として扱われるのですから」

人違いであっても押し通すんだから関係ねぇ。

知りたいのは真実じゃなく、都合のいい現実なんだ。

「それにしても、良かったのですか? ゼネス様が直接連れて戻れば、グラン様からの評価も見直されるのでは?」

「兄上は俺のことを見下したりしてねぇよ」

「そうでした。ではその奥様には?」

「あの人の言うことは間違っちゃいねぇし、別に変える必要もねぇだろ。それにあっちは元公爵家令嬢だぞ? 下手に取り合うだけ損だろ」

「賢明なことで。ならば・・・旦那様はどうでしょうか?」

「ふざけてんのか? 御父上がそんなもんを評価するわけがねぇだろうが。どうせ、兄上に家督を譲ろうってのも自分の都合なんだろ。なに考えてるか知らねぇが、迷惑なことだ」

「よくお分かりで」

ゴルドラッセのこの反応・・・本気でなにか企んでやがんのか? 面倒な事じゃなけりゃいいがな。

「とはいえ・・・こうしてけじめを付けていただいても、こちらからはなにもお出しすることは出来ませんが、よろしかったでしょうか?」

「・・・なんのことだ?」

「恥ずかしながら、今回の任務は特秘と機密がございましたので、経費も私が預かっていたのです。なので、今さらこのような気遣いを頂いても、彼女との交渉はすでに終了しておりまして・・・」

「お前・・・⁉」

「いえ、勘違いしていただきたくはないのですが。決して不当な値段をつけてなどはおりませんよ? ただ、こちらとしても出来るだけ費用は抑えたかったというだけです。適正な価格で買い取らせていただきましたとも」

「チッ‼ 鬱陶しいことを・・・」

「それでは我々は先に帰還させていただきます。犯人の護送もありますので。先に領地にてお待ちしております。くれぐれも迷いなきよう」

そう言って完璧な礼を残して、ゴルドラッセは帰った。

あれこそを慇懃無礼というんだろうと思い出すだけで腹が立った。