作品タイトル不明
変わらない評価1
「まったく・・・何に腹を立てたか知らんが、やり過ぎだ! なんでそこまで極端なんだ。お前さんは・・・」
俺に籠手を返しながらおまけとばかりに拳骨をもう一つくれる教官。
「やり過ぎ、ですか・・・。そうは思わねぇんですけどね?」
「どこがだ! 見て見ろ! 教え子が死屍累々だろぉが! 考えなしにやったとは思わんが、やめちまったらどぉする⁉」
「それこそ、心配無用でしょう?」
次々に起き上がってくる駆け出し共を指して言う。
その顔には”まだまだこれからだ!”と。見事なほど全員に、そう書かれているようで。
教官の模擬戦終了の声に納得いってない様子だ。
「なんというか・・・昔のお前さんを見ているよぉだな。弟子は師に似るっつーが・・・」
「だとしたら教官に似たんでしょうよ。心当たりは?」
「あるわけがあるか‼ バカモノめ‼」
まぁったく。と、もう一つ零して教官が全員を集めに行った。
『お前さんが行くと拗れそぉだから、そこで待っとれ!』
だそうだ。
仕方がねぇから返された籠手を付けながら、しばらく待った。
「それで。あのいきなりの強攻はいったいなんだったのでしょうか?」
「説明してくれますよね? 先生?」
リミアが切り出し、ヨハンが続く。
ジェイド達も、口には出さないが聞いてやるよ。と偉そうな態度だ。
あぁいや、偉そうな態度なのはジェイドだけか。
「あー・・・・・・なんつーかまぁ・・・、なんとなく?」
「んな説明があるかよ‼ ふざっけんなよ⁉」
ジェイドが1秒でキレる。
「なんとなくで殺されてたまるかってんだよ‼」
「だが、死ななかっただろ?」
「そういう問題じゃねぇよ‼」
「そういう問題なんだよ」
「ゼネス。もう少しわかるよぉに話せ。せめてワシには伝わらんと話にならんぞ」
長く冒険者を務め、それと同じぐらい教育係だった教官のいうことは確かなんだが、説明が難しい。
しいて言うなら、
「・・・そうですね。体感させたかった。ですかね?」
そう言うことになるだろう。
もっと実践的な、強度の高い訓練でも問題ねぇだろうと判断した結果だ。
「なにを、体感させたかったんだぁ? まさか、死を体感させたかったわけじゃあるめぇ?」
「そのまさかですよ」
「いい加減にしろよ‼」
ついにジェイドが胸ぐらを掴まんとする勢いで一歩前に出るが、教官がそれを阻止。
「どんな意図があってそぉした? 次第によっちゃ、お前さんに教育係を任せとくわけにはいかねぇぞ?」
そして、元から怖い顔をさらに険しく、厳つくさせてこっちを睨む。
「皇都離れている間、俺が蒸気の騎乗者と一緒だったのは知ってますよね?」
「ああ、当然だ」
「そん時、あいつらにも頼まれて色々教えたんですよ」
「ほぉ・・・それで?」
「結果として、あいつらはこの6人と比べて、俺の言葉の意味を理解するのが早かった。俺の方も、教えるのが下手なんじゃ? って意識があって改善点を考えながら接したとはいえ。どちらにせよ短期間で、より多くの収穫があった」
「その理由が?」
「経験。だと思ったんですよ。もっというなら実戦経験」
「なるほどな。あいつらはA級パーティーだ。その場数はてぇしたもんだろぉ」
「だから、より実践に近い形で経験を積ませたかった。そうすりゃぁ、こいつらはもっと伸びるはずだ。と思ったんでね」
「だが、それにしたってやり過ぎだ。お前さんの本気をいきなり受け止められるはずがねぇだろぉ?」
理屈はわかったが。と頭を抱えながら返す教官だが・・・しかし、
「そうでもないですよ? 最悪を考えて籠手は外しましたが、それでも。全員致命傷無しで1人で浮く奴もいなかった。十分、受け止められたんじゃないですか?」
俺としては、称賛に値する戦果だと思う。
「どぉいうこった?」
「俺は、あいつらには倒せねぇようなモンスターとして戦ったんですよ。力でも、速さでも、圧倒的な差を持っているモンスターとして」
「モンスター・・・? なるほどなぁ。そんなら確かに」
俺の動きを思い返して見て、納得する教官。
「どういうことかしら?」
そこまで黙って聞いていたエイラが疑問の声を上げる。
「予想外に強敵と出会うことはあるんだ。稀に、だけどな。中には圧倒的な差を持つ相手もいる。力でも、速さでも」
それが原因で仲間を失って冒険者をやめるものは多い。
「つっても、そいつらにも習性ってのはあるんだ。モンスターだからな。俺はそれに従ってお前らを攻撃したってわけだ」
「それが、どうして怪我の有無と1人になるかどうかと繋がるのかしら?」
「普通、勝てねぇ相手だとわかったら逃げるよな?」
「え? えぇ」
「それが出来ずに死んじまうのさ。さっきみたいな出合頭でな」
「え⁉」
エイラは驚愕のあまり、本当か? と教官を見る。
「よくある話だ。最初の襲撃で1人2人やられちまって、動けなくされた後さらに1人2人持ってかれちまう。なんてぇのはな」
「あいつらは自然の中で生きてるから、敵が動いてる最中に油断して手がふさがるようなことはしねぇ。だから、標的を叩いて動けなくした後、浮いてる奴を掻っ攫うんだ」
「ありゃぁ悲惨だぜ。仲間を庇った奴が死んで、庇われた奴は攫われて死体すらあがらん」
「つまり、お前らにはそうならねぇぐらいの実力があるってことだ」