作品タイトル不明
誰と距離を置くべきか?
まず、『軍部の動き』
これは皇国軍そのもの・・・というより、皇都近辺の軍の事情みたいだな。
どういうことか? というのが、詰まるところ。『皇都で発生している盗難騒ぎ』の影響。ってことらしい。
要は、皇都近辺で盗難が相次いでいたことが表沙汰になり、軍の怠慢と叩かれたのでその対策だ。
盗難自体はかなり前からあったようだが、最近はその被害がより多く、なにより広くなり、隠しきれなくなったんだそうだ。
だったら最初から隠すなよ! って話だが、それこそ簡単に解決できることなら公に発表する必要はない、という判断の下だろう。
それに、どうやらその盗難被害というのも、元は軍内部で起きていたことなんだと。
っつーことは、身内の恥を晒したくなかったってことなんだろう。
しかしそれも上手くはいかず。
解決より先に、民間に被害が出て露見してしまった。
これにより、判断の甘さ。能力の低さ。対応の悪さ。を見事に非難され、それらを払拭するためか、それとも存在感を出すことで黙らせたいのか、街中の兵士数が露骨に増えたそうだ。
そうなれば当然だが、ベルが指揮を取らされている皇都防衛鎮圧部隊、通称”おもり隊”も多く配置されることになり、それだけトラブルが起きる可能性が上がるってわけだ。
俺はベルの協力を取り付ける際、それを出来る限りはどうにかするっつー約束で力を借りている。
つまり、目を配るべき場所が増えるってことだ。
まったく。
教育係ってだけでも手に余ってるのに、厄介極まりねぇな。
そう思いながら、《近くで見かけたら黙らせる。方法にはこだわらねぇからな》と送って、メッセージカードを机の方に放り投げた。
本当に。
今でも十分手一杯なんだけどなぁ?
次に取り出すのは、またしても送りつけられていた手紙達だ。
差出人は教会、実家、冒険者ギルド本部。
内容は全部顔を見せに来いで間違いない。
教会のはユノからの手紙なので最悪無視でもいい。近況報告を兼ねた世間話程度だからな。
だが、実家・・・ひいては兄上からの手紙はそろそろ無視できそうにない。
もうすぐ冬だ。
そうなればグラーニン辺境伯領では年送りの祭りが行われる。
今年はその時に兄上の息子、俺にとっては甥に当たる人物が、大きな節目を祝い大舞台に上がるのだ。
ここに直参しろとのご命令に背くのは難しい。
かといって、またあいつらを置いて皇都を離れるのか? という問題もある。
そうなってしまえば、なにが教育係だ‼ とクビにされかねないし。
どうしたもんか?
そしてさらに、ギルド本部からも出頭命令が出ている。
これも、いつまでも無視できるものじゃなさそうだ。
どうにも。ワンダーゴーレムの単独討伐の話が伝わったらしく、是非顔を見せに来いと。
特別褒賞ぐらいは出るだろうから、赴くのもやぶさかじゃぁねぇんだが・・・なんだろうな? 勘って言うか。
なぜだかあんまり乗り気になれねぇんだよな。
まぁとりあえず、こいつは今回初めて来た手紙だし、後回しでいいだろう。
本部の方も、そんなすぐ来るとは思っていまい。
ただこれも結局、皇都からは離れることになるんだよなぁ・・・。
いっそあいつらも連れてくか?
なんて。
真剣に考える中での、ほんの冗談のつもりだったんだが・・・・・・意外とありなんじゃねぇか?
あいつらもいつかは皇都を離れる。その時のための予行演習にもなるし、なにより。
皇都を離れてしまえば、面倒なおもり隊の世話まで見なくてもいいんじゃ・・・?
などと。
我ながら、よくない閃きを見せてしまった。