軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

友と今と

感謝する店主と向き合い、自分はただ真実を述べただけで・・・などと言っている背中越しから、

「よぉ。格好のわりに、しけた 面(つら) してるな?」

声をかける。

「何者だ‼」

勢いよく振り返った顔には怒り、不満、不快といった感情が見て取れた。それが、懐疑、驚愕、喜色へと移り変わるさまをまざまざ見せられれば、せっかく噛み殺した笑いがよみがえってきても、致し方ないものだろう。

「・・・ゼネスか⁉」

「忘れられてなかったようで、なによりだよ」

「もっと顔が変わっていれば、分からなかったかもしれないな?」

「女じゃないんだ。化粧を覚えるわけでもないのにそうそう顔なんざ変わるかよ」

「そうか? 冒険者様は危険な仕事だと聞いていたんだが? というか、こんなところでなにをしてるんだ? 夢とやらはどうした?」

ニヤけ面が気に入らなかったか。分かりきったことを聞いてくるので、

「現実を見るときってのが来たんだよ。俺にも、お前にも、な?」

こっちも 厭味(いやみ) ったらしく返した。

「言ってくれるな」

と、一言おいて辺りを見回す。

「まだ仕事がある。後で会えるか?」

「ああ。ちょうど暇してたところだ」

それなら、と店の場所だけ伝え、近くの兵士と合流していった。

その背中を見送って、手に持つ袋を手放すべく冒険者ギルドに帰った。

「お兄ちゃんこれなに?」

「餌だ」

受け付けで押し付けられた袋を開けるミリー。

「餌ってなに~? あ‼ これ、サイコロ串肉サラダパンだ‼ ありがと~!・・・って、私飼われてないよね⁉ っていうか多過ぎ⁉」

「誰かと分けろ」

騒ぐ受付嬢を残して、さっき聞いた店を目指した。

知らぬ店の前でしばらく突っ立っていると、

「待たせたか?」

「大分な」

ド派手なマントと鎧を脱いだ旧友―ベルザフォン・C・ノクァッドが現れた。

店に入り、給仕に案内され、奥の席に着く。

俺達は 空(す) いたなにかを満たすため、渇きを 潤(うるお) すために。

飲み、食い、話した。

時を忘れ、今を忘れ。

あの時はあーだっただの、この時はこーだっただの、あいつは誰と結婚したとか、そいつは今や領主だとか。

くだらない、他愛ない、そんな話をした。

それは、まだ静かだった店が賑わい、そしてまた、静かになる程の時間だった。

日付も変わり俺達だけになったところで、本題を切り出す。

「お前、今なにやってんだ?」

「見ればわかるだろう? 酒を飲んでる」

「んなこた聞いてねぇよ」

「だろうな。なにが言いたい?」

ふざけた態度から一転、真剣な顔を見せる。

「あの格好としけた面のことだ」

「まぁ・・・そうなるよな」

「碌なもんじゃないらしいな?」

「その通りだ。まったくな」

そこからは長い永い愚痴の時間だった。

昔馴染(むかしなじ) みの悪友ベルが現在所属しているのは”皇都防衛鎮圧部隊”というもので、主な任務は皇都の警備・ 警邏(けいら) を担当し、皇都内で起こる事件を取り締まる部隊の隊長をやってるらしい。

露店の親父の言ってた通り、発足は約2年前。

国民の増加と比例して、皇都の人口および犯罪数が増え、たびたび議論に上がっていたものが形になったのが、この皇都防衛鎮圧部隊なのだが・・・。

その実態は長く続く平和のおかげで増えた、不必要な貴族の子供らをまとめて管理するためのおためごかしのようで、皇都民からすれば問題を起こすばかりの厄介者と 誹(そ) られているのが現状。

ついたあだ名が”おもり隊”

貴族のお守と都民の重りを掛けた 蔑称(べっしょう) というわけだ。結構なネーミングセンスじゃないか。

ベルが隊長になっているのは御父上、ノクァッド侯爵の忠言により、おもり隊が作られたがために大抜擢されたんだと。

「ああ・・・確かに、碌なもんじゃねぇな」

「本当に。嫌になるよ」

なんといっても一応は国軍の一部。にも拘わらず、実力以外で雇用されているから役に立たない。かといって、訓練をやる気もない。

そう嘆く元国軍きってのエリートは哀れにもほどがある。

しかし、助けてほしいのはこっちも同じだ。

「なにかあった時は協力する。だからこっちも手伝ってくれ」

「いきなりだな。いや、いつものことか。だけど、協力ね? なんの手伝いかは知らないけど、対価としては弱いんじゃないか?」

友人の頼みにその態度とは、出会った日のことを思い出させてくれる。

「お前んとこの奴らが 喚(わめ) いてたら家名を使って黙らせてやるよ」

「・・・いいのか?」

「あぁ。今は冒険者じゃなくてな」

ギルドカードを出し、名前の横にある指導員を指差し、見せる。

「お互い、思うようにはいかないな」

「誰だって、そんなもんだろ?」

いつかの日を思い出し、今を思って吐き捨てた。