作品タイトル不明
旅:躓き
それから1週間が経って。
「すみません。このようなことになるとは・・・」
俺達は途中の田舎町で問題に直面していた。
「そんな⁉ 馬車の故障は仕方ないですって‼ 俺達に頭なんか下げないでくださいよ!」
サンがそう返しながら、俺の方を見てくる。
俺もなにか言わなきゃならねぇのか?
「・・・そうだな。壊れるのは仕方ねぇが、それにしても意外だな? 備えがねぇなんてな」
「そう、ですね。らしくないと言われても仕方ないでしょうな。商人にあるまじき失態。なにしろこの馬車は新調したばかりだったものですから・・・慢心していたのでしょう」
「ま、今はどうするのか・・・そっちを考えましょうや」
落ち込むサンパダをホウがなだめる。
俺達の前に立ちふさがった問題。
それは馬車の故障。そして、その修理だ。
道中、坂を上りきった先の稜線の向こう、下り側に亀裂があった。
それほどデカい裂け目だったわけじゃない。
引いていた馬が普通にまたぐ程度のもんだ。
ただ、俺達の乗っていた車体のデカい馬車には致命的だった。
避けなきゃならなかったんだが、御者台からも見辛い位置にあったせいで発見が遅れ、気付いたのは衝撃に襲われたあとだった。
おかげで車軸がへし折れて、今は近くにあったギリギリ町と呼べる程度の場所で立往生しているというわけだ。
本当なら一刻も早く修理をしてしまいたいんだが・・・。
「つっても、予備がねぇんじゃな。こんな田舎町に馬車なんか売ってねぇだろうし・・・」
代わりになるものがない。
サンパダの持ってきた予備は普通の馬車のための部品であり、一回りもサイズの違う馬車には使えず、かといって代わりになる馬車も田舎町では取り扱ってねぇ。
そうなると、皇都に使いを出して交換部品を輸送するか、新しい馬車を持ってくるかだが・・・、
「そんなには待てません。私はともかく、商品は出品予定ですから。信用の為にも遅れるわけには・・・」
ということらしい。
まぁ今から皇都へ使いを出して、その折り返しを待ってりゃ出発は2週間近く遅れることになるしな。
「必要な部品を作るというのはどうだろう? 木材なら幾らでもあるだろう?」
タンがそれらしい提案をするが、
「他国の木を勝手に伐採するわけにはいかないだろ⁉」
「リーダーの言う通りだ。それに、ここいらの木は柔らかいんだ。車軸にするのはちょっと難しいんじゃねぇかな?」
サンとホウが否定する。
「売ってさえいれば購入するのですが・・・しかし、――」
「――見てきた限り、そんな店はなかった」
サンパダの声をかき消すように、見回りから戻ったフッチが被せる。
まともに声を聞くのは初めてだな。などと、
「まいりましたねぇ・・・」
俺がくだらない事を考えている間にサンパダが絵に描いたように頭を抱える。
というか、
「こんなことにならねぇように祈祷師に頼んでおけば良かったんじゃねぇか?」
流石にあのサイズの馬車となると少々値は張るだろうが、今みたいな状況になることは防げたかもしれない。
「そうかもしれませんね。旅の安全くらい祈ってもらっても良かったのかも・・・」
「? いや。馬車に耐久の祈りを頼んでおけば・・・って話なんだが?」
「そんなこと出来るわけが・・・・・・」
なにを言ってるんだか。というような反応をされるが、少なくとも。
俺に祈祷を教えた奴は『人に祈り、物に祈り、土地に祈れて初めて祈祷師。半端な真似しか出来ねぇんなら、師を名乗るんじゃねぇよ‼』って言ってけどな?
「・・・・・・」
「・・・もしかして、出来るんですか・・・?」
「まぁ。一応な」
「それなら先に言っていただければ・・・ッ‼」
「そりゃ悪かったな。皇都の祈祷師がどうかなんざ知らなかったからな。それぐらい、出来て当然だと思ってた」
今度は項垂れるように地面に手をつくサンパダ。
それを見てサンが、
「凄いこと・・・なんですか?」
わざわざ地雷を踏みに行く。
「・・・・・・凄いことなのか・・・ですと? もちろん凄いことですよ‼ 人や物に祈るのが祈祷師とはいえですね、祈る対象が大きくなればなるほどその効果や成功率は下がっていくものなんですよ‼ 特に、多くの人が関わるような―――」
と、大雨の翌日の川のように怒涛の勢いで捲くし立てるサンパダ。
なにか思うところでもあるのか・・・?
俺にしてみりゃ、習ったはいいが装備錬成の時ぐらいしか使い道がなかったおかげか、大したもんだとは思えねぇんだがな。
長くなりそうなサンパダの話も聞く意味はなさそうだし、俺は。
「スイ。ちょっと手伝ってくれ」
「任せろです! でもなにするです?」
「馬車の修理だ」
スイを誘って必要なものを用意することにした。