軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冒険者の心得

「都合よく獲物の方から来てくれたんだし、解体のやり方を見せる」

まずは喉笛を掻き切る。 先(さき) の脳天への一撃で 最早(もはや) 死(し) に 体(たい) なのは間違いないが、念には念を。確殺を取るのは冒険者の在り方だ。油断して逆襲されたじゃ笑い話にもできないからな。

さっきまで生きていたのだから傷をつければ血が出る。特に首から出る量は結構なものだ。必然、それを見た者はそれなりの反応をする。だが、冒険者をやっていくなら最も必要とされる知識と技能だ。

「命の価値を知れ。それが冒険者たる者の務めだ」

「そ、それはいわゆる、命の 有難味(ありがたみ) という・・・あ、あれですか?」

意外なことに反応を示したのは終始怯えて見えた少女だ。

そして、あれとはおそらく・・・自分が命に支えられていることを~とかそういう道徳的なことを言いたいのだろう。

だが、

「いいや。そういう意味じゃねぇよ」

違う。

「ここでいう命の価値ってのは討伐したモンスターから得られる素材とその金額だ」

いまいち分かっていなさそうなのでそのまま続ける。

「例えばこいつはレッサーライガー。この辺りで見かけるモンスターだが、素材になるのは角と毛皮ぐらいで牙も爪も石ころ同然の値段にしかならない」

角をきれいに切り落とし、手に持ち示しながら、

「それを知らずにこいつと戦って体中穴だらけにした後、牙と爪を持って帰ってみろ。儲けはなし。道具類の消耗分だけ赤字になるだろ?」

想像してみろといえば、全員が嫌な顔になった。

「分かってもらえた様で何よりだ。で、命の価値ってのにはもう一つの意味がある。それは・・・」

手早く毛皮を剥ぎ終え立ち上がり、足元に視線を落としながら、

「一歩間違えばこうなるってのを忘れるな・・・ってことでもある」

あっという間に肉と骨の 塊(かたまり) になったものを指す。

ゴクリ。と誰かが、あるいは全員が息を飲んだ。

「モンスターの価値と自分の命。その両方を天秤にかけるのが冒険者だ。なにも考えずに戦えば得られるものはなく。考えすぎれば命を落とす。実力主義といえば聞こえはいいが、力量以上のものは得られない意外とシビアな世界だ」

この国の冒険者はこぞって南を目指す。理由は 霊峰(れいほう) に住まう強力なモンスターとその素材。なにより、それを倒したという 称賛(しょうさん) と栄光。

だが、南に行けば行くほど依頼は減る。冒険者で溢れているのだから当然だ。そうなれば収入源はモンスターの素材になる。だからこそ、その価値を知り、戦い方を練り、入手法を覚えなければ、やってなどいけない。

それこそが”命の価値”だ。

「まぁ、霊峰を目指すなら・・・だけどな」

「目指さない場合は何が違いますか?」

これもまた意外だが、そう聞くのは影の薄い少年。

「そうだな・・・色々と違いはあるんだが、一番は質だろうな」

「質・・・・・・ですか?」

「ああ。っとそういえばお前らは護衛の依頼を受けたんだったよな?」

ついでにとパーティー組に話を振る。

「え? あ、はい。そうですけど・・・」

「どこまで行った?」

「東と西の隣町まで、ですけど・・・」

頼れる少女の言う通りだとすれば、4人の実家が少しでも冒険者として現実を知ってほしくて依頼を出したんだろうな。

「途中でモンスターの話は出たか?」

「えーっと・・・たぶん出てないです」

「じゃぁ・・・盗賊の話は?」

「確か、したと思います。それが・・・?」

基本的にモンスターにとって人は外敵で天敵なのだ。だから人の通りが多い街道や町の周りには寄り付かない。強力なモンスターほど縄張りを持っていて深い森の奥だとか山やら谷に住んでいる。

じゃぁこの浅い森に出るモンスターはなんなのか。となるが、要するに雑魚だ。縄張り主と人間を比べて、まだ人間の方が脅威がないと選んだ奴らでしかない。これは例外だ。

「簡単にいえば、な。村付きや家付きがハンターって言われるのも、その辺が理由だろう」

違いというのは冒険者にとって、敵がモンスターか否かだ。

しかし、それだけのせいではないというのは教えておく必要がある。

「ただ・・・もし東西に行くつもりなら、自分以外の冒険者は信用するな。それぐらいの考えは持っておけ」

影の薄い少年に向き合う。

「何故ですか⁉」

「さっき言った等級と命の価値からつながる話なんだけどな。東西の冒険者は質が悪い。もっといえばあれは冒険者じゃない」

「冒険者じゃない⁉ どういうことですか⁉」

「個人B級になれない奴は命の価値を理解出来てないんだよ。その癖それを人のせいにして足を引っ張る。そのせいで南の冒険者ギルドはある地点からB級以下には施設の利用を禁止している」

冒険者に憧れて、しかし上手くいかず、かといって諦めることも出来ず、そういう連中は人の邪魔をしだす。それが自分の利益になると信じて疑わない。だから、盗み、騙し、殺す。

過去そういう事件があったが故に、この国の冒険者は個人B級以下を冒険者と認めない。そして、それを南のルールとして持ち込んだ。

結果として、そういう連中は東西に流れ、ならず者に戻ったり、未だ変わらず人を貶めている。

「東西にはそういうルールはないからな 。だから質が違うといわれてる。もちろんそうじゃない奴が大半だとは思うが、パーティーB級個人C級が信用されねぇのはそういうわけがある」

見た目や言動で心の奥底まで見抜ける目を持つ人間はそう多くない。特に短時間でとなれば、自信を持って自分は大丈夫です。なんて、言った奴こそ騙されることだろう。

逆に、自身を証明するのも簡単ではない。言葉でどう取り繕ってみても、言葉だけなら誰にでも言える、と切って捨てられる。

それらすべての問題を解決するための個人B級で・・・

「だからまぁ・・・気を付けることだな」

俺から言えるのは、ただそれだけだ。