作品タイトル不明
普通に優秀
結果から言えば・・・なんてことはなかった。
すんなり、受け流された。
「だったらどうすればいいか教えろ‼」
っつーことで、
「まずは慣れろ。話はそれからだ」
幾つか縛りを設けて、端の方でキューティーと1対1をやらせといた。
ジェイド側の縛りは武器と魔法の使用禁止。
キューティーには突きから始まる一連の攻撃の禁止。
勝敗はキューティーがジェイドの横を取ったらキューティーの勝ち。
逆にジェイドは魔法盾を使っているキューティーの魔力を枯渇させられたら勝ちだ。
アドバイスとして、ジェイドにはシールドバッシュ以外の時は盾を地面に置いていいと教え、キューティーには魔法盾の利便性について説いた。
あまりにも自分が不利じゃないか! とブーたれるジェイドには、
「なんだ? 諦めるのか?」
と、適当に煽ってのせておいた。
まぁ、あの感じなら横を取られたとしても、認めねぇっつって何回でも勝負するだろうから、実際にはジェイドの体力かキューティーの魔力が切れるまで続くだろう。
お互い良く知った相手だ。
最初は攻撃側のキューティーが有利だろうが、慣れてくればジェイドもそう簡単には横を取らせないだろう。
うまくいけば、俺が声をかけるまで続く可能性もある。
そうなりゃ嬉しい誤算だな。
で、それはそれとして。
今はこっちの2人。
ケイトとエイラをどうするか、だ。
こいつらは俺の話をちゃんと聞こうとするから幾分、楽だ。
つっても、エイラの話は長くなりそうだ。
なにしろ戦闘中の役割を一から作るわけだからな。
それなら、ケイトに注文を付けてから、じっくりと時間をかけた方がいい・・・か。
そうと決まれば早速、といきたいがその前に、
「まずはケイト。お前に聞きたいことがあるんだが・・・」
「な、なんですか?」
「その杖と本。片方に出来ねぇか?」
そう。
ケイトは両手に魔法用の道具を持っている。
右手には短い棒のような杖。左手には小さめの魔導書。
「で、でも・・・魔法の為には!」
「そうは言うが・・・いざって時に自分の身を守れねぇ魔法使いがどうなるか、お前はもう知ってるだろ?」
「それは・・・・・・」
ケイトは蟻事件の時に唯一と言っていい怪我人だった。
その怪我は重く、高額な再生魔法を必要とするほど。
俺に指摘されて、本人も足の・・・怪我のあった場所をさする。
「今すぐどうにかしろ、とまではいわねぇが・・・早いうちにどうにかしとかねぇと、真っ先に死ぬことになるぞ」
一番に装備を変えたかったのはジェイドだが、その次はこのケイトだった。
流石に、両手に武器替わりを持つには無防備すぎる。
「・・・・・・わかりました。考えて、おきます」
段々小さくなる語尾に不安になる。
つーか、な?
「お前が使ってた魔法2つ」
上から落ちる細い雷撃。ポイントスパーク。
印目掛けて光が広がり、収縮爆発する。サンダーボム。
「そんなにいらねぇだろ?」
この2つは中級と言われる攻撃魔法だ。
属性も同じだし、触媒を分けて持つ意味はねぇはず。
「そ、それは違います! 魔法にはそれぞれ適切な構成があって――」
「――そうだ。構成についても話そうと思ってた」
長くなりそうな話に先手を打つ。
「まず、魔法の構成において、杖や本ってのは反応を高めるためにあるもんであって、なきゃないで構わねぇんだよ」
現に俺は威力を必要としてねぇから、そういった道具は持ち合わせていない。
「にもかかわらず、お前が見せた魔法はどれも普通だった・・・なら、なんのためにそれを持ってんだ?」
「で、ですから、詠唱を短縮するために適切な構成で、短縮で落ちる分の威力を補ってですね」
「だとしたら、やっぱりいらねぇよ。言うほど短縮出来てねぇし、威力も足りてねぇ」
「そんなこと‼」
「なんで雷を選んだ?」
「それは・・・っ! て、適性があったから・・・」
「それだけか?」
「・・・威力と、速さがある、から・・・」
ただし扱いづらい。
わかってて選んでるなら尚更・・・、いや? 逆に足りない部分を補うために・・・? その割には息切れもなかったと思うが・・・とここまで考えて思い出した。
そうだった。
今の学園じゃ普通が優秀なんだったな。
だからそれを基準に考えてたんだ。
威力を下げなければいい、と。威力を下げずに詠唱だけ短縮できるんなら、それは非常に意味のあることなんじゃないか? と。
「ポイントスパークとサンダーボムを使ってるのは?」
「私、は・・・一番後ろ、ですから・・・」
つまりは誤射しないためか。
地点指定や敵指定の中級魔法を使うのも、適性の中から威力と速さのある雷属性を選んだのも、仲間の為か。
俺は、俯くケイトの手の中から杖をスルリと抜き取り、
「印に集い、爆ぜよ雷撃!」
顔を上げたケイトの視線に入るように、サンダーボムを放つ。
ドカン! と魔法が炸裂し、地表を焦がし草花を吹き飛ばす。
「魔法使いに想像だけで魔法を撃てとは言えねぇが。中級程度ならこれぐらいは出来るように教えるから、頑張ってくれ」
短縮は半分。威力は倍。
放たれた魔法に目を輝かせる少女に杖を返していると、隣に魔法をぶっ放すな! と、ビビった外野からヤジが飛んできた。