軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それから・・・

「北大陸の都も大したものじゃないですか。少し臭いが気になりますが」

皇太子の嫡男であるライザードがなぜか、俺の隣で北大陸の都に対し意見する。

「仕方ないよ。聞いた話だけど、人が人じゃなくなってたみたいだから」

さらには北の辺境伯である兄上の嫡子バロンさえも、呼応するように言う。

「精神を奪われて、中身を別の動物にすり替えられてたらしいからな。今はもう、餓死を待つばかりだが・・・・・・一旦近くの平地に集められてる。掃除も進んだから、その内臭いについては解決するだろう」

俺は2人に挟まれながら、案内が如く説明をする係だ。

「ここが北大陸一の大国であり、その都で間違いないのですよね?」

「セイルスルーから借りて来た兵士が言うにはな。アイツらはこっちの出身だから嘘はねぇだろうが・・・元が水夫だとかが多いからな。知識的な限界の可能性はある。それに、体調を崩す奴も多くてな。聞き取りが停滞してるそうだ」

「無理ないよ。家族や親戚があんな風になってるかもしれないなんて――」

「バロン、そこは友人も含めるべきではありませんか?」

「そ、そうだよね⁉ ゴメンね! 今までそんな関係、難しかったから‼」

俺が東奔西走している間に、仲が進んだらしい。

どことなく見覚えがあるような関係値だが、心配するべきだろうか?

「まあいいでしょう。これはいい情報ですからね」

「なにが、いいんだ?」

「新しい目標ですよ。この僕が皇王になった後にはなりますが・・・」

「一応、聞いておいてやるよ」

「もうお気付きでしょうが、もちろん遷都ですよ」

年端もいかねぇ子供が目を輝かせて言うことか?

「遷都って・・・ここを皇都にするつもりなの⁉」

「行々は――ですがね。この北大陸全てをガルバリオが手中に収めるなら、現在の領地は飛び地のようなもの。和睦したとはいえ、帝国と隣接しているのも脅威になり得ます。しかし、大陸を丸々国家として手に入れられるなら、防衛はより強固に、生産はより安全に、それらにより生活はより確実になるでしょう。国営の視点で見れば、住み替えない理由なんかありませんよ」

バロンの疑問に滔々と答える姿は、未来の為政者を彷彿とさせる。

「でも北大陸って、叔父様が統括するん・・・だよね?」

「家名と爵位を頂いたからな」

現状はグランバリオ特地と呼ばれている。

大公が治める予定の未開拓地っつー扱いになってて、税収だの領地にまつわる一切合切を免除されている代わりに、調査と開墾を命じられている形だ。

「だからこそ簡単なんじゃないですか。広大な土地に基く問題は数多くありますが、一番は移動です。人も、物も、動かすには経費が掛かりますし、道の整備や安全の対策にも気を使わなければなりません。本来ならば・・・」

そりゃそうだ。

海の移動なんかを考えりゃぁよくわからるが、詰める荷物にも限りがある中で、船員の食料や生活必需品、その他。賊やモンスター対策まですれば、利益率は下がる一方。

「ですが、貴方が居れば! もっと言えばマーラグ公爵・・・おっと! 元公爵、でしたね。お2人が揃えば、転移によって流通に革命が生じます‼ どんな距離も有って無いようなもの! 連絡も監視も思いのまま‼ いやあ、本当におめでたい‼‼」

ライザードは実際に転移を体験した。

ここへ来る時にそうやって連れて来たからだ。

陛下に懇願して、そこから経由して頼まれたんじゃ断る術もない。

結果。大興奮で今に至る。

「扉の量産は俺の仕事じゃねぇし、お前の提案に乗るつもりもねぇぞ。それに、アイツはまだ公爵だ」

「婚約したことは大々的に発表されていますし、マーラグ元公爵へ通じていれば、その辺りも融通してもらえるでしょうから、心配には及びませんよ。なにより、貴方はこの僕を無碍にはしません」

「なんの自信があって――・・・・・・」

「お爺様への忠誠ですよ。貴方ほどの力があれば、ガルバリオに納まる必要なんかありません。暗殺でもなんでもしてしまえば、国家の転覆など思いのままでしょう。であるのにもかかわらず、国家の一員として、あるいは貴族の端くれとして振舞うのは、面倒事が嫌いだという貴方の性格と、善性捨てきれない性分のせいに他なりません。それならそこにつけ込めばいい」

違いますか? と笑う表情はどことなくジーナにそっくりだ。

そういえば、こいつらは従妹に当たるんだったか・・・?

文句でも言ってやろうと周りを見回すが、

「ジーナさんは多分また、皇都に行ったと思うよ」

俺の心を読むように、バロンが答える。

「アイツ、この忙しい時になにしてやがる・・・」

「えーっと・・・その、」

「恐らく自慢話でもしに行っているのでしょう。もっと悪い言い方をすれば、あちらこちらで噂を触れ回っていると言うべきでしょうか?」

「噂?」

言い淀むバロンに代わり、ライザードが楽し気に話す。

「ええ、貴方との婚約について。世界で唯一、龍王から祝福を受けた縁談だって、虹霓玉をはめ込んだ指輪を見せびらかしながら」

「あッのクソボケ――ッ‼‼‼」

「叔父様までいなくなったら現場が混乱するよ⁉⁉ それにまだドラゴンも見せてもらってない――‼‼」

「そうですよ。嘘を振り撒いているわけではないんですから、天より与えられた職務を放棄するのはいかがなものかと」

「うるせぇ‼‼ あんな行き遅れた変態を押し付けられただけでも不名誉だってのに、非常識極まりねぇ馬鹿の所業を止めねぇでどうする‼‼」

両手の枷を引きずってでも、俺は皇都へ乗り込まなきゃならなかった。