作品タイトル不明
白魔導師、と赤の魔石
「っ……」
魔力譲渡発動後、とてつもない量の魔力が俺へと流れ込んでくる。
マナポーション何個分だろうか。
かなり辛い。
「だ、大丈夫なのか?」
クルムが心配そうな顔で、こちらを見ている。
俺はそれを聞き、短く「大丈夫だ」と返事をした。
……っ。
それにしても、コントロールが難しい。
魔力を渡すことも出来るのなら、吸収も可能だと思ったんだが……。
油断すれば、魔力が一気に俺へと流れ込んできてしまう。
おまけに、シルビィーの体内の魔力までコントロールしないとならない。
ミスは許されない。
「ぅ……」
ベッドの上で横になっているシルビィーが、苦しそうな声をあげる。
幸い今は眠ってるが、もし目が覚めてしまったら、その途端に物凄い苦痛がシルビィーを襲うだろう。
魔力を吸収する側よりも、魔力を吸収されている側の方が大変だ。
出来ればシルビィーには、終わるまで眠っていて欲しい……。
そんなことを考えなから、魔力を吸収していく。
「っ……そろそろか……」
これ以上魔力の吸収は無理だ。
吸収し続ければ、俺まで魔石化してしまう。
ここからは吸収だけでなく、消費もしていかなければならない。
と言うわけで俺は、回復魔法ヒールを発動する。
それも、とびっきり魔力消費の効率が悪い奴だ。
吸収した魔力量よりも、多くの魔力が消費されていく。
この失敗作のヒールならば、シルビィーを回復させながら、大量の魔力を消費することが出来る。
まさか、ヒールの改良の際に生まれた、魔力消費量が馬鹿でかいというデメリットの目立つ失敗作がこんな所で役立つなんて。
世の中、何がどこで役立つのか分からないな。
その後も、魔力譲渡でシルビィーの魔力を吸収し、その魔力を使いヒールを発動し続けた。
それにより、シルビィーの魔力が少しずつ減っていく。
そしてとうとう魔力の底が見えてきた。
魔力が減り、部屋の中を覆う嫌な空気も薄れていく。
よし、あと少しで……。
「ん?」
その時だ。
シルビィーの体内に奇妙なものがあることに気がついた。
今までは、シルビィーの膨大な魔力に隠れて気がつかなかったが、確かに何かがある。
しかもこれは……。
「クルム、シルビィーが怪我したのってここか?」
右の横腹を指差しながらクルムに尋ねる。
「確かにそこだが……何故、知ってるんだ? 回復魔法に、そう言う効果でもあるのか?」
クルムが首をかしげながら、尋ね返す。
当然、服を着ているため傷や痕は見えない。そして回復魔法に見えない箇所の傷の位置を割り出す機能はない。少なくとも、俺が今使っているものはそうだ。
つまり、傷が残っていたとしても、服を捲らない限り見ることは出来ないのだ。
ならば何故、そんな質問をしたのか。
それは、ちょうど俺の指差したあたりに、その奇妙なものがあったからだ。
外から無理やり埋め込まれたような……。
おそらく怪我を負ったときに、誤って入った……
もしくは、モンスターによって埋め込まれたのか……。
明らかに異質だと言える魔力を孕む何かがそこにあった。
ふむ、異物なのは明らかだし、取り除いた方がいいだろう。
問題も無さそうだ。
「クルム、ナイフを持ってるか?」
「ナイフはないが……包丁ならあるぞ」
うーん、包丁か……
出来ればナイフが良かったが、やむを得まい。
「じゃぁその包丁を持ってきてくれないか?」
「あぁ……分かった」
クルムは不思議に思いながらも、包丁を取りにキッチンへと向かった。
「持ってきたぞ」
「ありがとな。少し貸してくれないか?」
「あ、あぁ……」
俺はクルムから包丁を受け取り、その包丁でシルビィーの傷があったであろう場所を切った。
そして、その異物をゆっくりと取り出す。
素人のため荒くなってしまったが、仕方ない。
回復魔法でシルビィーの傷口を塞ぎ、とりだした異物を手に取った。
「……赤い魔石?」
シルビィーから取り出した魔石は赤い光を放っていた。
輝き方や、微量ながら魔力を感じることからも魔石で間違いないだろう。
だが、赤い魔石など聞いたこともない。
魔石化による後遺症の可能性はあるが、断言は出来ない。
これは……。
「なんなんだ……これは?」
俺が手に取った赤い魔石を、クルムが覗きこみながら言う。
「さぁ、魔石っぽいが……なんなんだろうな」
これを取った瞬間、魔力の暴走も収まったし、原因がこれなのは確かなんだが……。
「ん……」
声が聞こえて来た方に目を向けると、そこには微かにだが目を開くシルビィーの姿があった。
原因となっていた赤い魔石や、回復魔法をかけたことが、影響したんだろう。
「えっ……シルビィー?」
クルムが目を丸くしながら、ベッドに横たわるシルビィーを見た。
「あれ? お姉……ちゃん」