軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

勇者パーティーの崩壊⑤

イシュタルの広場で宴が行われた晩。

アレン達勇者パーティーは、勇者のために設けられた例の建物の一室に集まっていた。

部屋の中には円形の大きな机と、それを囲むように置かれた六つの椅子があるが、そのうちの三つが空席となっている。

もともとは、ミイヤ、リナ、そしてロイドが座っていた席だ。

「くそ……なんで……」

アレンが不機嫌そうな表情で呟く。

ミイヤが出ていってしまったこともあるだろうが、アレンが不機嫌なのは、それだけが原因でない。

冒険者ギルドを出た後、冷静になったアレンはあることを思い出した。

それは、これが緊急依頼であると言うことだ。

勇者である以上、緊急依頼には参加しなければならない。

しかし、冒険者ギルドであんなことを言ってしまったため、アレン達は緊急依頼に参加することが出来ずにいた。

このままでは不味い……

そこでアレンはふと、あることを思い付く。

自分から行く必要はない。あいつらが、冒険者や騎士が向こうから来るのをただ待てばいいのだと。

勇者である自分の力なしではあのモンスターの大群から、イシュタルを守ることは出来まい。

あいつらは必ず、助けを求めにここへとやって来るはずだ。

そしたら冒険者や騎士に、冒険者ギルドでの無礼を謝らせ、その後で助けてやろうと。

アレンはそう考えていた。

ルルもシーナもアレンの考えに賛成し、冒険者や騎士が助けを求めやって来るのを待つことにした。

しかし、いくら待てども騎士達が来る気配がない。

それから数時間後、

ちょうど日が沈み始めた頃だろうか。

イシュタルの防衛に成功したという知らせが街中に広まった。

結果、緊急依頼だったにも関わらずアレン達、勇者パーティーが参加することなく、イシュタル防衛は成功した。

「アレン……このままじゃ私達、不味いんじゃない?」

ルルが不安そうな顔でアレンに尋ねる。

シーナも口には出さないが、不安であることがその表情から伝わってくる。

「あぁ……そうだな」

ルルの問いにアレンは表情一つ変えずにそう答えた。

焦りが見えないアレンの態度に、イラッときたルルは少し大きめの声でアレンへ再び尋ねようとする。

「ねぇ、アレン。本当に分かって……」

「そんなことは分かってんだよ!」

アレンが怒鳴り声を上げ、ルルを睨む。

アレンの瞳に写るのは焦りではなく、怒りだった。

ルルを睨むアレンの目は血走っており、かなり苛立っているのが分かる。

「それじゃ、どうするの? 私達このままじゃ追い出されるわよ」

ルルの言う通り、この建物にアレン達が住み続けることは出来ないだろう。

アレン達の住む建物は、勇者パーティーのために設けられた建物とは言えど、その所有権は王国にある。

それに、この建物は国民から集めた税で建てられたものだ。

勇者でない者をいつまでも住まわせることはないだろう。

尤も、だからといっていきなり追い出されるようなことはないだろうが、それも時間の問題。

ルル達が焦っているのはそのせいだろう。

だが、それでもアレンの表情に焦りはなかった。

「……ここを出るぞ」

「えっ……ここを出るんですか?」

シーナがアレンに尋ねる。

突然のことに驚いているのがその表情から分かる。

「あぁ、そうだ。ルル、シーナ、急いで荷物をまとめろ」

「アレン。別にそんなに急がなくても……」

ルルがそう言いかけた、その時だ。

アレンが立ち上がり、力強く机を叩く。

「あいつを、あのロイドを、英雄扱いするような街だぞ! どうせあいつのことだ。何かせこいことをしたんだろうがよ……だが、あいつに騙されるような奴もどうかしてんだろ! そんな街に残るつもりはねぇ。俺は今夜、街を出るぞ」

それだけ言うとアレンは部屋を出ていった。

荷物をまとめにいったのだろう。

少しの間、部屋の中に静寂が流れ、アレンの足音だけが微かに聞こえてくる。

「あの、ルルはどうするんですか?」

アレンの足音が聞こえなくなったのを確認し、シーナがルルに尋ねた。

「そうね……私はアレンについていくかな」

少し迷った後で、ルルはそう答えた。

「……それはどうして?」

「ほら。だって、私がこの街にいても街の人からは冷たい目で見られるだろうし……とりあえず今は、アレンと一緒にいた方がいいかなって……それで、シーナはどうするの?」

「……私もアレン様についていきます」

どうやら、シーナもアレンについていくらしい。

だが、そう答えたシーナの目は、かつてアレンに向けていた目とは明らかに違う目をしていた。

どこか自信のない瞳で、シーナがアレンの座っていた椅子を眺める。

もしかしたら、シーナは自分の回復魔法が弱まったせいでリナを救えず、アレンの評判を悪くしてしまったと思っており、その責任を感じているのかもしれない。

「そうね、きっとアレンなら何とかなるわよ。だって、勇者なんだしさ……」

ルルが不安そうなシーナを気遣い、笑みを浮かべる。

「それじゃ、私達も準備しないとね」

「……そうですね」

その後アレンら三人はそそくさと荷物をまとめ、イシュタルの街を出ていった。