軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

【開かれた世界】

運営がハルたちの要望を受け入れた。

【緊急アップデート:裏世界「ソルシア王国」の入場条件を変更します】

【変更前:旅人系職業のみ入場可能】

【変更後:全職業入場可能。ただし、PK行為を行ったプレイヤーには48時間の入場禁止ペナルティが課されます】

全職業開放。PKペナルティ付き。ハルたちの提案がそのまま採用された形だ。

フォーラムは、意外なほど好意的だった。

──「やっと全職業で入れる!」

──「マジでトワナイス」

──「PKペナルティ付きなのが賢い。荒らし対策がある」

──「この提案、旅人の集いから出たんだって?」

──「トワの弟子が発案したらしい」

──「弟子じゃなくて仲間だぞ(本人談)」

──「トワ周りの人材がどんどん有能になっていくな」

開放初日。裏世界に大量のプレイヤーが流れ込んできた。剣士、魔法使い、僧侶、弓使い。あらゆる職業のプレイヤーがソルシアの街を歩いている。

蘇った白い街に、旅人以外の人たちが加わった。赤い鎧の騎士、青いローブの魔法使い、緑の僧侶服──ソルシアが、表の世界と同じくらい賑やかになっている。

セレスがトワの肩から街を見た。

「トワ。いっぱいひとがいる。むかしのソルシアみたい」

「お前が見た、昔のソルシアと同じか?」

「うん──でも、むかしのソルシアは、たびびとだけだった。いまは、いろんなひとがいて、きれい」

セレスの角がぽわっと光った。嬉しい時の光り方だ。

「ノクス、みてるかな。ソルシア、にぎやかだよ」

壁画のノクスが、笑っている気がした。そう見えるのは、きっと気のせいではない。

開放されたソルシアを歩いていると、ゼクスからメッセージが来た。

ゼクス:「トワ。ソルシアの東地区に来い。面白いものを見つけた」

珍しい。ゼクスが「面白い」と言うのは滅多にない。

セレスの星渡りで東地区に転送した。

ゼクスがある建物の前に立っていた。古い道場のような建物。看板に文字が書かれている。

「この建物だ。──読んでみろ」

【「影歩きの修練場」──ソルシア王国暗殺術の発祥地】

冬夜はゼクスを見た。

「暗殺術の発祥地。──お前の職業のルーツが、ここにあるのか」

「そうらしい。BCOの暗殺者クラスは、ソルシアの暗殺術を元にしていた。──入るぞ」

道場の中に入った。壁には暗殺術の型が描かれた壁画。影に潜る術、気配を消す術、急所を突く術。ゼクスが使っている【影潜り】や【先制の絶技】の原型だ。

「俺のスキルは──ソルシアの旅人が編み出した技だったのか」

「旅人が、暗殺術を?」

「ソルシアは旅人の王国だ。旅人が様々な戦闘技術を研究していた。暗殺術もその一つだ。──つまり」

ゼクスが、にやりと不敵に笑った。珍しく、嬉しそうな笑み。

「俺は──元を辿れば旅人の系譜なんだ。お前と同じところから出た枝だ」

「……皮肉だな。PvPランキング一位の暗殺者が、旅人の末裔だったとは」

「皮肉じゃないぞ。──今は、気分がいい」

ゼクスが道場の奥に進んだ。奥には──NPC。影歩きの師範。

「おお、暗殺者の旅人か。珍しいな。──お前、【影潜り】が使えるか」

「使える。あんたが、これの原型を作ったのか」

「わしではない。わしの師が──いや、その先代が。何百年も前にな」

ゼクスがNPCと会話を続けた。冬夜は横で見ていた。ゼクスがNPCに話しかけるのを見るのは初めてだった。普段のゼクスは無口で、NPCとの会話は最低限だ。

でも、ゼクスは楽しそうに暗殺術のルーツについて聞いている。自分の技のルーツを知ることが、嬉しいのだろう。

【ゼクスの友好度が「影歩きの師範」に対して開放されました:1/10】

「友好度が。──俺にも、こういうシステムが動くのか」

「NPCと真剣に向き合えば、誰にでも開く」

「お前に言われると説得力がある。──通ってみるか。この道場に」

冬夜は少し嬉しかった。ゼクスが、自分と同じようにNPCとの関係を築こうとしているのが。

セレスがゼクスの元に飛んでいった。

「ゼクス。ソルシア、たのしい?」

「……悪くない」

「トワとおなじこと、いう」

「同じ根から出た枝だからな」

「つまり、にたものどーし?」

「おい、セレス。俺とゼクス、一緒にするな」

「全くだ。俺は未だに、こいつの首を狙っているからな」

「んー、わかんない。これ、ゼクス、つんでれ?」

「ちがう! ふざけたことを言うな!」

ゼクスが顔を赤くして抗議する中、トワは笑いが止まらなかった。

セレスもつられて笑っていた。