軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

「半分」

翌日。現実世界。

冬夜は朝からスマホの通知に埋もれていた。レヴナント討伐の配信アーカイブは再生数600万。「スープで転ばす」のクリップだけで200万再生されている。

蓮から電話。

『お前、敵にスープぶちまけたってマジ?』

「戦術だ」

『戦術wwwww 大学中で話題だぞ。ゲーム研究会のやつらが「トワの戦い方を論文にしたい」とか言ってた』

「頼むから、やめてくれ」

『その論文は俺に効く、か?』

「うるさい、切るぞ」

宮瀬からメッセージ。

宮瀬:「鏡像のヒント、役に立った?」

冬夜:「立った。お前のおかげで勝てた」

宮瀬:「えっ、本当に? あの授業の話が?」

冬夜:「本当だ。自分のコピーの弱点は、まだやったことのない行動だった。鏡に映らないもので勝った」

宮瀬:「……すごい。比較文化論が実戦に活きるとは思わなかったよ」

冬夜:「俺もだ」

宮瀬:「今度、そのゲームの話、もう少し聞かせてよ。内容じゃなくて、久坂くんがどう感じてるか」

冬夜:「……考えておく」

宮瀬:「考えておくじゃなくて、約束して」

冬夜:「……約束する」

宮瀬:「やった!」

冬夜はスマホを置いた。

──約束、か。最近、約束が増えた。宮瀬との約束。レナたちとの約束。ゼクスとの約束。

それを重荷とは思わない。面倒だとも感じない。むしろ──

いや、考えるのをやめた。考えなくてもわかっている。悪くない。

夜。ログイン。

セレスが飛んできた。

「トワ! おかえり!」

「ただいま」

「トワ、きょうはどこいく?」

「天蓋の遺跡の続きだ。レヴナントを倒した先にまだ道がある」

「いく! いく! ──あ、でも、そのまえに」

セレスがトワの鼻先まで飛んできて、むむっと顔をしかめている。

何か重要なお話がある時の顔だ。

「トワ。きのう、マルクがくれたリンゴ、まだある?」

「ある」

「きのうのリンゴは、あまかった。きょうのリンゴも、あまい?」

「同じリンゴだから、同じ味だと思うが……」

「ちがうの。きのうのリンゴは、あまかったの。きょうのリンゴは、ふつーのリンゴ」

「よく分からないが……味は同じだろ」

「んーん、ちがうもん」

冬夜はリンゴを渡した。セレスが一口齧って、うーんと首を傾げた。

「やっぱり、きのうのほうが、あまかった」

「気のせいだ」

「きのせいじゃない。しょうりのあじ」

セレスなりに、昨日の戦いが特別だったということだろう。

「……そうか。じゃあ、次に勝った時にまた食べればいい」

「うん! つぎかったら、おにく!」

「要求レベルが上がってないか?」

「だって、リンゴはもうたべた」

「……確かに」

トワはセレスを肩に乗せて、天蓋の遺跡に転送した。

レヴナントがいた広間の奥に──新しい道が開いていた。レヴナントを倒したことで封印が解けたのだろう。

道を進むと、さらに奥の広間に出た。そこには──壁画。

【壁画の翻訳:「七つの鍵は世界の記憶。全てを集めし旅人に、世界は真実を語る」】

世界の記憶。七つの欠片は──世界の記憶。

冬夜は手持ちの欠片を確認した。

世界地図の欠片:4/7。

残り三つ。

どこにあるのか。【旅人の羅針盤】を確認した。針が──三方向に微かに振れている。残り三つの欠片の在処を、遠くから指し示している。

一つは南方。まだ踏破していないエリアの方角。

一つは東方。海の向こう。

一つは──地下。深い、深い地下。

セレスが三方向を順番に見た。

「みなみ。ひがし。ちか。──トワ、どっちからいく?」

「近い方からいってみよう」

「じゃあ、みなみ!」

「まだまだ歩けそうだな」

「セレス、うれしい。トワといっしょに、もっとあるきたい」

「ああ、一緒に歩こう」

冬夜は壁画を見上げた。

七つの欠片。全エリア踏破率100%。旅人の最終試練。世界の果て。

道は長いが、焦る必要はないだろう。