作品タイトル不明
[複合属性]
火のエリア。灼原の大地。
昨日のソロ魔法使いに教えた蛇竜の攻略法。自分でも検証しておきたかった。
蛇竜の巣に向かった。パーティ全員で。
【灼炎の蛇竜 Lv85 HP:52,000 属性:火+土(複合)】
「いた。全長八メートル、赤い鱗に茶色の模様。火と土の複合属性」
「師匠……昨日説明してた、外殻と核の理論を実践するんですか」ハルがメモ帳を構えた。
「する。実戦データを取る。ハル、外殻の耐久値と核の露出時間を計測してくれ」
「了解です。導師の本領発揮ですね!」
トワが【果ての道標】を弓形態にした。風属性の矢はないが、見聞録のデータから外殻の最薄部を特定できる。
「外殻の土属性が、最も薄い箇所――腹部の第三鱗、厚さが他の四分の一しかない」
「四分の一……そこを狙えば、風属性なしでも貫通できますか」
「物理攻撃で貫通できる。ただし、精度が必要だ。第三鱗のサイズは拳一つ分……動いている蛇竜の腹を射抜く」
「師匠なら、当たりますよね」
「当てる」
蛇竜が動いた。首が右に振れた、前脚の振り下ろし。昨日の法則通り、左後方に回避。
蛇竜の腹が見えた。赤い鱗の中に、わずかに色の薄い一枚。第三鱗。
弓を引いた。放った。
【外殻貫通! 弱点ダメージ:8,200】
「通ったぞ、外殻を物理で貫通した」
「風属性なしでも、行けるんですか!」
「行ける。外殻の弱点を正確に突けば。昨日のソロ魔法使いには風属性での汎用解法を教えたが、見聞録なしでも物理でいける」
「方法によっては、攻略できるということですね!」
外殻が貫通された箇所から、赤い光が漏れている。『核』の火属性が露出している。
「『核』が見えた。ゼクス」
「了解――!」
ゼクスが影潜りから蛇竜の腹の下に出現。短剣を核に突き立てた。
【弱点クリティカル! ダメージ:9,400】
蛇竜が苦しんで身をくねらせた。外殻が再生し始める。
「再生速度を計測。外殻が閉じるまで4.2秒。昨日の推論では3秒と言ったが、実測では4秒以上ある。誤差を修正する」
「師匠……実測値をリアルタイムで修正するの、研究者みたいですよ」
「研究じゃない、攻略だ」
二巡目。再び外殻の弱点を射抜き、核を露出させ、全員で叩く。
三巡目。四巡目。パターンが確立されていく。そして――、
【灼炎の蛇竜を討伐しました!】
【ドロップ:灼炎の蛇鱗×4、火土の複合核×1】
「火と土の複合核……これは初めて見る素材だな」
タマキが目の色を変えた。
「複合核、二つの属性を含んだ素材! これで複合属性の薬が作れるかもしれませんね!」
「複合属性の薬とは、なんだ?」
「火と土を同時にバフできる薬です。今まで火耐性と土耐性は別々の薬だったんですけど、複合核を使えば一本で両方かけられる……薬の本数が、半分で済みます」
「効率が倍になるのか。開発してみてくれ」
「はい! 今すぐ!」
タマキがその場で調合を始めた。そして五分後。
【タマキが新レシピ「灼土の複合薬」を開発しました!】
【効果:火属性耐性+6%+土属性耐性+6%を同時に付与(2時間)】
「成功! 複合薬、第一号です!」
「他の複合属性のモンスターからも核が取れるなら、全組み合わせの複合薬が作れるな」
「はい! 七属性の組み合わせは二十一通り。全部の複合薬を作るのが目標です!」
「二十一種類の薬を開発するのか。薬師として何年分の仕事だ」
「普通なら何年もかかりますけど、トワさんのパーティにいれば素材が次々手に入るので。たぶん数ヶ月で全種類いけます」
「俺のパーティが素材の供給源扱いされてないか?」
「供給源です。最高の!」
見聞録に蛇竜の全データを記録した。外殻の構造、弱点の位置、再生速度、攻撃パターン、ドロップアイテム。フォーラムに上げればエルシオンで蛇竜に苦戦しているプレイヤーの助けになる。
「ハル。フォーラムに」
「もう書いてます」
「早いな」
「導師ですからね」