軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

青年とダークエルフ?

「こちらになります……あの森の辺りでオーガを見たと、うちの商人が申しておりました。皆様にはこの森でオーガを退治して頂きます」

ルーデル達は、商人になりすました帝国の工作員に案内されて強化型オーガのいる森へと進んでいた。その森では、先回りした帝国の兵士であるミース達が実験の観察に来ていた。命令通りに動く強化型オーガは、ルーデル達を待ち構える……その力は一般のオーガを遥かに超え、スピード、そして魔法にも高い防御力を持つ。

そんな勝敗の決まりきった実験を、ミースは渋々見る事にしていた。帝国の正式な任務であるから、手など抜く事は出来ない。

だが、そんなミースやルーデル達の上空には、一匹のドラゴンとエルフが急降下していた。

ルーデルは、段差の激しい森の中を進みながら周りを警戒していた。気性の荒いオーガが居ると言うのに、森の中は静かすぎる。それに加えて妙な違和感を感じて仕方なかった。バジルにしてもそうだ。昨日の晩に調べた情報では、確かにオーガの噂は聞いた。

それでも依頼をしてきた商人がおかしい。オーガが怖いからと、長期で滞在していると言うのに焦りが感じられない。商人にとって時間がかかるという事はそれだけ損をしているともいえるのに……

「ルーデル様、気を付けて下さい。この依頼は、最悪放棄する事も考えておいて下さい」

逃げる事を考えるのは卑怯ではない。だが、依頼を放棄するのは信用にかかわる。それを引き換えにしても逃げる事を考えないといけない。相当に胡散臭い依頼らしい……そう考えたルーデルが、急な斜面を登りきると上空から何かが急降下してきた。

「何だ!」

ユニアスが即座に反応して大剣を構え、バーガスは大きな盾を構えて全員の前に出る。そこには、依頼された討伐対象であるオーガを踏みつけたドラゴンと、その背に乗る騎士の格好をした人物の姿があった。

そしてその光景に全員が驚いた。いや、ただ一人だけ興奮している人物が……ルーデルだ。

「ウインドドラゴン! しかもリリム様も……黒くなっている!」

ウインドドラゴンの背に乗ったリリムは、黒く……ダークエルフになっており、ルーデルが言わなければ誰だかわからない程に変わっていた。寧ろ、その場にいた全員が

(何でわかったんだろう?)

疑問に思ったほどだ。

そんな驚いたルーデル達は、ウインドドラゴンが瞬殺したオーガに目が行く。オーガをドラグーンが倒した……これは別におかしくはないだろう。しかし、明らかにリリムの様子はおかしかった。

「ふ、フフフッ! この醜い化け物は、私の漆黒の炎で消し炭にしたわ!」

……その場のオーガは、ドラゴンに『押し潰されて』殺されていた。決して漆黒の炎など使われていないし、消し炭どころか潰された死体は残っている。そして、何故だかリリムは片腕で顔の半分を隠して、格好のいいポーズをとっていた。

「魔法なんか使ってねーよな?」

ユニアスが全員を見て確認を取ると、全員が頷いた。ルーデルも擁護しようとしたが、明らかに魔法で倒していないこの状況では擁護できないと思って渋々頷いたのだ。

「寧ろ、アレがドラグーンのリリムかが分からないな。ルーデルが言うなら間違いないのだろうが、ダークエルフと言えば危険だと聞いた事があるな」

リュークはそう言って警戒を強める。

「ドラグーンのリリムがダークエルフだ、とは聞いた事がありませんね。それも含めて聞いて……!?」

バジルが状況を整理しようと、リリムに話しかけようとした時だ。いきなりルーデルが、バジルに斬りかかった。

いや、正確には、バジルに接近していたリリムに斬りかかったのだ。リリムの手に持ったナイフと、ルーデルの剣が火花を散らす。

「なっ! 速過ぎるだろう!」

バーガスが遅れてリリムに盾で体当たりを仕掛けるが、リリムは余裕で避けてしまう。その背中には、エルフの魔力で出来た羽が黒く小刻みに激しく動いていた。……少し気持ち悪い、とバジルは冷や汗を流しながら思った。

一瞬で間合いを詰めたリリムにも驚きだが、それに反応したルーデルも流石だろう。そしてルーデルは、リリムがバジルに対して本気で斬りかかったと判断したのだ。

「どういうつもりですかリリム様? 今のは本気でしたよね」

「本気? フッ……私が本気を出したら、この場に居る全員を一瞬で殺せるわよ!」

ポーズを決めながら言い放つリリムに、リュークは魔法を放つ。ユニアスもリュークの攻撃後に斬りかかるが、リリムはそれを簡単に避けてしまう。五人がドラグーン一人に遊ばれているのだ。

ルーデルはリリムの戦い方を知らない。と言うか、ドラグーン個人の戦闘スタイルは機密扱いだ。弱点を教えるほど無能でもない。しかし、ドラグーンと言う人気の職業であるから、何処かで活躍すれば自然とその闘い方も広まってしまう。

それでもリリムの戦闘スタイルは謎のままだ。よほど素早く敵を倒すのか、さっきのバジルを殺そうとした時のように暗殺に特化したのか……リリムと戦いながら考えるルーデルに、動かないウインドドラゴンが話しかけてきた。

『いつぞやの人の子よ。我が契約者を救って欲しい……殺してくれないだろうか』

まるで直接心に響くその声に、ルーデルは感動と共に激しい動揺を感じていた。

激しく戦うルーデル達とドラグーンを遠目に見ながら、ミースたちは焦りを通り越して恐怖していた。帝国の兵士にとってドラグーンは死神だ。たった一騎のドラグーンがいるだけで、戦場ではとんでもない被害が出る。

道案内をしていた帝国の兵士も、全員がリリムに気を取られている隙に逃げてミースたちに合流していた。

「なんなのよ……なんでドラグーンがこんなに早く出てくるのよ! これじゃあ実験どころじゃ……」

どうしていいか分からないミースたちは、更にミスを犯す。近付いてきていたもう一人のドラグーンに気付かなかったのだ。

「実験って何の事かしら? 詳しく聞かせて貰えるわよね?」

ミースたちが振り返ったが誰もいない。その後に上を見上げると、そこには一人の赤い髪の騎士と赤いドラゴンが自分達の真上にまで来ていた。ミースたちは死を覚悟した。

そのドラグーンはカトレアだった。リリムの脱走に、人手が足りなくて問題を起こしたカトレアまで使う事にしたのだ。ドラグーンの団長が下した決断は、リリムが誰かに見つかる前なら捕獲して、見つかって問題を起こしていたら抹殺を命じていた。

「な、何の事かしら? 実験って言っても……そう! 森での魔物に対する実験よ」

取りあえず嘘を言ったミースの頬を、カトレアの剣がかすった。地面に突き刺さるカトレアの剣は、禍々しい形をしている。カトレアが天才と言われる理由の一つである『魔剣』だからだ。かすったミースの頬からは、少し斬ったのに血が出ていない。

そのままカトレアは、レッドドラゴンから飛び降りて魔剣の所に着地する。そのまま魔剣を回収するが、周りのミースの部下達も流石に落ち着きを取り戻して武器を構えた。

「急いでいるから手早く済ませるわ……この魔剣にも血を吸わせて、準備してから先輩と戦いたいし」

周りの帝国兵士がカトレアに斬りかかる中で、ミースはかすっただけで力が抜けた感覚になるその剣に恐怖した。そして、カトレアに斬られた部下達が、斬られても血を流さない……正確には血を吸われているのだろうが、そうして血が流れない不気味な斬り合いを見るミース。

そしてどうだろう……血を吸うごとに魔剣は力を増していく。そして最後の部下が斬り捨てられると、カトレアはミースに近づいた。

「さぁ、話して貰うわよ。帝国の軍人が、何でここに居るのかを!」

ミースの部下達の戦い方から、カトレアはミース達が帝国の軍人だと判断した。

魔剣をミースの喉元に突き付けるカトレア……すでに味方は呼んでいるから、リリムがこの場から離れても大丈夫だろうと思い込んでいた。誰かと戦闘しているようだが、それが誰かまでは確認していなかった。いや、もう死んでいるだろうと思って確認を怠ったのだ。

戦っているのがルーデル達で、未だに戦闘しているとは気付かなかったのだ。……ルーデル達が戦っている場所から、激しい爆発音が聞こえてくるまでは……