軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

外伝 歌姫編12

サクヤの下に来たイズミたちは、その背中に乗る。

周囲には粉々になった土人形の破片やら、機械化部隊の兵士たちが潰されていた。

サクヤは、背中に全員が乗り込むと空へと飛び上がる。

『飛び上がったらどうするの?』

そんな声に、イズミは。

「ルーデルのところに向かってくれ。ただし、手は出さない方向で……」

サクヤがいた場所は、瓦礫の山になっていた。少し動いただけでも周囲の建物を破壊してしまうサクヤが本気で暴れれば、セレスティアの城などすぐに破壊し尽くされるだろう。

イズミは思う。

(ドラゴンでも、古代兵器には勝てなかったのか)

風で乱れる髪をかき上げ、イズミは舞い上がったサクヤの背中で城下町を見る。

燃え上がり煙が何ヵ所からも立ち上っている。

暗い夜が不気味に明るくなっており、巨大な四足歩行の古代兵器がゆっくりとセレスティアの壁に激突していた。

そして――。

「なんだよ、アレ……」

アレイストが身を乗り出すと、古代兵器は一つ目から炎を噴き出して周囲の壁や建物を溶かしていた。

その全身が燃え上がった炎で照らされると、本当にお土産屋で見た置物と同じだったのだ。

壊れやすい置物と違い、古代兵器は止まることなく城を目指している。

動きが鈍く、避難している人たちが古代兵器とは反対側へと逃げ出している。

そんな光景を上空から見ていたクレオは。

「……私を守り神様のところへ連れていってください」

真剣な表情で言うクレオに、ミリアは言い返す。

「どうして! あんなところに行けば命が――」

「それでもです! 近づけないなら、近くまでで結構! これはセレスティア王女である私の命令です! ……もう、これ以上の迷惑はかけられません」

そう言って嗚咽を漏らすクレオに、アレイストが言う。

「まだそんな事を……エミリオに悪いと思わないのか!」

「思っています! でも、仕方ないじゃないですか。私にはこれしかできません。このために生まれて育てられてきました。今更違う生き方なんて……私を、あの守り神様のところに連れて行きなさい!」

クレオが真剣な表情で、涙を流しながら言う。

すると、サクヤの背中に進行方向から来る風とは違う、ルーデルが巻き起こした風が吹いた。

サクヤの背中に器用に着地すると、兜を脱いで言うのだ。

「残念だが、俺の受けた命令は明日の朝に『お前を儀式の祭壇まで護衛する事』だ。その命令には従えない」

『あ、ルーデル!』

「ルーデル、心配したぞ」

サクヤが喜び、イズミが安心する。ルーデルはサクヤの背中から古代兵器を見るのだった。

クレオは言う。

「命令です。お願いします」

「断る。俺はクルトアの騎士だからな。おっと、こう言うべきだったか? クルトア最強のドラグーンだ。古代兵器にいつまでも負けたなどと思われるのは心外だ。ここでけりをつけてやる」

ルーデルは、古代兵器を見て笑っていた。

イズミは右手を顔に当てて言う。

「ルーデル、不謹慎だ」

「悪いな。だが、アレを倒せば全て終わる。俺の任務はクレオを無事に送り届けることであって、守り神だか古代兵器を壊すなとは言われていないからな」

ミリアも呆れていた。

「言われてないけど! 確かに言われてないけど!!」

ネイトは、ルーデルを見て首を横に振っていた。

「学生時代と変わっていませんね。良くも悪くも、ですけど」

アレイストは地上を見ていた。

「……小さな古代兵器が動き回っている。そっちは僕がやる」

アレイストもやる気を見せていると、ルーデルは笑っていた。アレイストは、少し悲しそうな表情をして。

「ルーデル、僕はエミリオとは友達……ではなかったけど、死んで悲しかった。敵討ちじゃないけど、最後まで頑張るよ」

この場にいない事を理解しているルーデルは、短く。

「そうか」

と、呟く。そして、兜をかぶるとアレイストに。

「俺はサクヤと一緒に古代兵器を止める。できるだけ外で戦うが、戦闘の余波もある。避難も頼めるか」

アレイストも。

「もちろんだ!」

二人が拳を合わせるのを見て、クレオが言う。

「どうしてそこまで……私さえ犠牲になれば、誰も傷つかないのに」

その意見に、イズミは。

「大丈夫です」

「え?」

「ルーデルは無茶苦茶だけど、やると言ったらやる男ですから。これまでも、これからも……そういう男ですよ」

ミリアも呆れつつ。

「私も地上よね。アレイスト、ちゃんと指示を出しなさいよ」

アレイストが少し緊張しながら。

「ま、まかしぇてくれ!」

噛んだようだ。

ネイトがつまらなそうにボソリと。

「またミリア先輩ですか。帰ったら全員に言っておきますからね。ま、私の保身もありますが……情報の共有はハーレムメンバーの鉄の掟なので」

イズミは思った。

(大変なんだろうな、アレイストも)

ルーデルは、サクヤに言う。

「サクヤ、手頃なところに着地だ。その後は……あの古代兵器と決着をつけるぞ」

楽しそうにしていた。

(これさえなければ……もっと落ち着いてくれればいいのに)

イズミは呆れつつも嬉しそうにしている。

クレオは、古代兵器に挑もうとしているルーデルを見ていた。

地上に降り立ったサクヤは、アレイストたちと別れるとそのまま舞い上がる。

周囲の炎を吹き飛ばすような風を受けつつ、アレイストは周囲を見渡した。

「ミリアには高い位置から指示を出して貰おう。イズミさんは戦って貰うとして……ネイトはお姫様の護衛!」

ネイトが溜息を吐く。

「ま、この面子だとそうでしょうね。さ、行きましょうか」

すると、クレオが銀色のペンダントをアレイストに手渡した。

「え、これは?」

「エミリオがアレイスト殿に、と。きっと、エミリオもアレイスト殿の事を友達と思っていたのかも知れません」

「そうか……僕は友達を失ったのか」

悲しそうな声を出すアレイストに、クレオは言った。

「いえ、エミリオは――兄さんは嬉しそうでした。私は何もできませんでしたから、感謝しています。これは代償石と言われる鉱石で作られたものです。古代兵器のコアにも同じものが使用されていると聞いています」

アレイストはペンダントを握る手が震える。

(そんな危ないものなの!)

クレオは、代償石の事を伝えてくる。

「その名の通り、願いに代償を必要とします。小さな願いには小さな代償を、大きな願いには大きな代償を……こんなもの、使わない方がいいんでしょうけどね」

力なく笑うクレオに、アレイストはペンダントを懐へとしまい込む。

「……受け取っておくよ」

「ありがとうございます」

ネイトが、クレオの手を引いてその場から避難するのだった。

アレイストは剣を抜く。

近くには古代兵器と同じような、それらよりも小さな兵器が集まってきていた。

イズミも構え、アレイストに助言をした。

「斬っても駄目だ。粉々にしないと再生する」

「粉々……ね」

アレイストの影から槍が突き出ると、そのまま穂先がハンマーのようになって一体を叩きつぶした。

「――器用だな」

イズミが驚いていると、アレイストは溜息を吐く。

「これくらいは出来ないと、周りに置いて行かれるんだよ。さぁ、行こうか」

駆けだしたアレイストとイズミは、古代兵器を潰していくのだった。

空の上では、サクヤと共にルーデルが古代兵器に戦いを挑んでいた。

『このおぉぉぉ!!』

サクヤが真正面から古代兵器を殴ると、表面が簡単に割れた。

だが、その中身は空洞ではなく――。

『熱いぃぃぃ!!』

サクヤが腕をすぐに引き抜くと、煮えたぎるようなマグマが古代兵器の中からあふれ出ていた。

再生する表面の装甲により、中身はすぐに見えなくなる。

ルーデルは。

「俺のサクヤに何をしてんだぁ!」

大きな盾を作り出し、光が集まりつつある一つ目の前に出した。

盾が出現すると、その場に炎が噴き出して周囲を赤く照らす。

サクヤの手はどうにもなっていない。

マグマを熱い、で済ませるドラゴンは脅威だろう。しかし、これでは吹き飛ばせばマグマが周囲に飛び散ってしまう。

(吹き飛ばして中身をなくせば動かなくなる? いや、それならドラグーンが引き分けることもないはずだが……)

右手を左手でさすっているサクヤに、ルーデルは。

「サクヤ、空に上がる」

『こいつ嫌い!』

幼い声で嫌いだと言いながら、空に上がったルーデルとサクヤ。

吹き飛ばせば厄介な事になりそうだと思いながら、ルーデルは思案する。

(道を塞いで表面を破壊し、マグマの流れをコントロールすれば……)

そこまで考えついたところで、古代兵器の動きがおかしくなった。

「なんだ」

『あいつ、なんだか内側から』

サクヤが内側から何か蠢いている、などと言う前に古代兵器の表面が割れ始めた。

マグマは噴き出し、ガラガラと表面が崩れていく。

「どういう事だ。壊れたのか?」

『違う。来るよ』

サクヤが上昇すると、割れた古代兵器の丸い胴体から火がサクヤの方向に噴き出す。偶然ではなく、攻撃する意思が感じられた。

「くっ! サクヤ、右だ!」

サクヤが右に曲がるが、炎はサクヤを追尾してきた。

「なんなんだ?」

ルーデルは大きな盾を先程と同様に出現させる。しかし、炎がぶつかると盾が割れて炎の中からマグマの塊が蠢くように出現する。

そのままマグマは赤黒く燃え上がりながら姿を整えていく。

人の姿に翼が生えたような姿は、禍々しく見えた。

「……守り神には見えないな」

『見えないよね』

大きな一つ目を動かし、口を開くと古代兵器の中から出て来た怪物がサクヤに向かって飛んでくる。

ルーデルは光の剣を数百と出現させると、敵に向かってはなった。

巨大な怪物に小さな剣が次々に刺さっては爆発するが、マグマをまき散らすばかりで効果的とは思えなかった。

「大火力で吹き飛ばすべき、か……しかし、意外に速いな」

サクヤを追いかける怪物が口を開くと、そこから大きな火球がいくつも放たれる。まるで意思があるように追尾してくる攻撃を、盾を用意してルーデルは潰していく。

下を見れば、セレスティアの城下町からは遠ざかっていた。

「さて、本気でやり合うには、もう少しだけ離れたいところなんだが」

逃げながら適度に戦いやすい場所はないかと探すルーデルは、不気味な咆吼をあげる怪物を振り返る。

「焦るな。ちゃんと退治してやる」

何故か、そう言ってしまった。

自分でもなんでそんな事を口にしたのか、少しだけ不思議に思うルーデル。

『ルーデル?』

「いや、まるで退治してくれと泣いているようだからな。サクヤ、お前にも頑張って貰うぞ」

『うん!』

頼られて嬉しそうなサクヤに、ルーデルは微笑む。

振り返って怪物を見ると、こちらにまたしても攻撃を放とうとしていた。

今まで以上に大きな火の塊は、まるで大きな岩が炎をまとっているようだった。

「……アレは少しまずいな」

そう言って、ルーデルは右手を掲げる。

大きな光の槍が出現すると、放たれる前の岩に突き刺さって大爆発を起こした。

マグマが飛び散り、地面に落ちていく。

怪物の上半身は吹き飛んだのだが、下半身から盛り上がってきたマグマによって、すぐに再生するのだった。

『うわー』

サクヤも呆れている。

「古代兵器……相手にとって不足無しだな!」

ルーデルは嬉しそうにしていた。

同時に、冷静に思案もする。

(さて、一撃で吹き飛ばすには距離を取って時間が欲しいが、流石に逃がしてくれそうにない。接近すればサクヤが……)

追いかけてくる相手を見ながら、ルーデルは怪物とどう戦うのかをシミュレートする。

サクヤの強力な一撃で全てを吹き飛ばすにしても、方角を間違えればどこかの村や街に被害が出る。

それこそ、地形が変わってしまうのだ。

そして、溜めに時間も必要だった。

接近してなくなるまで叩き続けるのは、サクヤが熱がるので難しい。

「厄介だな。過去の先輩たちが、引き分けになったのもしょうがないのか? だが、ここで勝てば……」

『サクヤは褒められるかな?』

褒められたい幼子のようなサクヤに、ルーデルは頷いた。

「間違いなく褒められるぞ。ミスティス様も大喜びだ!」

『頑張るよ!』

そこまで言って、ルーデルは考えつく。

「サクヤ、水は作り出せるか?」

『無理!』

「だよな。俺もあいつを止められるほどに作り出せるか不安だ」

水でマグマの熱を下げて固める、などと考えたルーデル。

しかし、少量では意味がない。

(ウォータードラゴンなら、相性的に有利だったんだろうな)

サクヤの前では言えないと思いながら、ルーデルはそういった結論に達するのだった。