軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ナガに脅迫され仕方なくダンジョンに潜ることになった、ダンジョン協会本部の理事6人。一番若い者で52歳、もっとも年上で73歳であり、全員年齢的に体の衰えを感じている頃である。

高齢者が多いため、定年の概念はとっくに消えている。

「なんでこんなことに……」

「くそ、せめて血圧の薬だけでも取りに行かせてくれ!」

理事の一人がメガネに 縋(すが) りついた。メガネはそれを物理的に一蹴する。

「駄目に決まってるゥ」

「ぐべっ」

壁に打ち付けられた老人は、自分の背後の壁から 滲(にじ) み出てきたスライムに青ざめ、慌ててじたばたと起き上がった。

若い魔法使いが、それを冷めた目で見る。

「ダンジョンなんだから、色んな効能の素材あるでしょ。つーか一部は試験問題にもなってるし。ダンジョン協会のお偉方なんだから知ってて当然じゃん。自分で採ればいい」

そう言ってから、通路の奥に火球を発射した。コボルトの群れに直撃し、まとめて吹き飛ばす。

「足手まとい連れててもなァ……。次からこいつらにやらせよう」

メガネはコボルトの死骸から奪った剣を理事たちに投げて寄越した。急に飛んできた刃物に慌てふためく様子に、すっかり呆れた顔をする。

握り方すらなっていないが、後ろから小突くようにして、先頭を歩かせた。

「ひぃ、無理だ! 死んでしまう!」

「こんなこと、違法行為だぞ!? じきに他の探索者が助けに来るだろう!」

「来ねェよ」

メガネが 顎(あご) をしゃくった先には、墜落し炎上するドローンが6台。

牡羊の会のドローンだけが浮いている。

「俺らのは配信停止のまま。解除されてねェからなァ」

「何かあったら全滅っすね!」

「なんで嬉しそうなんだよ、ぎゃはははは」

楽しそうな牡羊の会。理事たちの顔からすっかり血の気が引いた。

護衛ではなく護送。それをはっきりと痛感させられる。

「壊れてる……」

その呟きはドローンに対してのものか、牡羊の会に対してのものだったのか。

5層も下らないうちに理事たちはボロボロになっていた。全身に細かな切り傷や打撲、足は慣れない運動で豆と靴擦れが出来てひどいことになっている。

階段で火を焚いて休憩する面々。メガネが手に持つバールを火にかざし、懐かしそうな表情で眺めている。

「バール拾ったんすか」

「あァ。俺やナガがァまだ《《冒険者》》だった頃、こいつが一番人気だったんだよ」

「ふーん、チンピラみたいっすね」

「今も昔もそうだァ」

メガネは笑った。

余裕たっぷりの牡羊の会に対し、後ろから小突きまわされ戦わされていた理事たちは、もう反抗する元気もない。革靴を脱いで壁にもたれかかり、痛みに呻いている。

「うぅ、腰が……」

「なんでこんな目に合わなければ」

そこに強面の魔法使いがやってきて、焼かれた肉の入ったシェラカップを置いた。

「コボルトを焼いた。お前らにやる食料はねえ。食いもんが欲しければ現地調達したものを焼いてやる」

「コボルトだと、そんなもの食えるか……」

「こんなの食べ物ではない」

「人権無視だ」

文句を言う理事たちに、メガネが横から口を挟む。

「嫌なら食わなきゃァいい。明日は俺たちがァ前に出てペースを上げる。全力で歩いてもらうゥ。遅れた奴がその日の晩飯だァ」

そう言いながら自分もコボルト肉を齧った。「くせェ」と不快そうに顔をしかめつつ、それでも飲み下す。

理事たちもおそるおそるコボルト肉に手を伸ばすが。

「お、おええ」

「ぐふっ、く、ぐざい……」

日頃の美食が 祟(たた) り、耐えきれずに吐き戻してしまった。もったいねェなと言いつつ、何もしてやらないメガネ。一方で他の牡羊の会メンバーは、携帯食料を知らん顔で食べていた。

理事たちは今後もこんな食生活が続くのかと絶望を深めた。

「うわああああああああああ」

森の中に悲鳴が響く。

「ブモッブモッブモッ」

「フシュー! フゴフゴ! フシューー!」

両手を広げながら迫るオーク達。久方ぶりの獲物に興奮する彼らは、アドレナリンが出過ぎているのか、股間をもっこり盛り上げている。

すっかり革靴もすり切れた理事たちは、どたばたと走ってオークから逃げ回っている。それを木の上から眺める牡羊の会たち。

「いやァ、だいぶマシな動きになったなァ」

「ちょっと痩せて軽くなったんじゃないすか?」

ロクなものも食えずに走らされているせいで、ベルトを切らなければいけないほど理事たちは急に激やせしている。

道中で何回か食あたりしているのも原因かもしれない。

何発かずつ火球をオークに叩き込んでから、メガネが飛び降りて撲殺しに行く。

囮にされた理事たちに休みも与えず、メガネたちはさらに下を目指した。

どうにかこうにかエルフの里までたどり着いた理事たちは、メガネの翻訳アプリを通してキーティアに挨拶をした。

非礼を謝罪する理事たちに、キーティアはきょとんとしてから、思い出したように手を打った。

『思い出したのじゃ! そういえばそんな話じゃったな! うむ。では、仕事を与えてやろう!』

ナガの言葉を思い出すキーティア。

一体どんな仕事を与えられるのか、戦々恐々とする理事たちに、キーティアは無垢な笑顔で言う。

『穴を掘って埋める仕事じゃ!』

2章 完