軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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あの鳥×虫×植物のモンスターが元人間だと。

『世界樹の影響でああなった』

「げ」

思わず自分の手を眺めてしまう。

俺の体の中には世界樹の苗が大量に入っている。ああはなりたくねえぞ。

『エルフは元々は、ただの長命な人種だった。少なくとも出会ったときはな。我らが骨に成り果てたように、彼らも変化し続けている』

『長い年月で、ってやつか。まぁ俺ら人間も昔はサルだったしな』

ノーライフキングが噴き出した。

『お前らの祖先はサルなのか! ははっはははは!』

バカにしたような笑い声だ。思わず頭に拳骨を振り下ろした。

『ぎゅぇっ、なにをする!』

『馬鹿にしてるが、そっちの世界では何が人間に進化したんだ?』

『マーモットの仲間だ!』

デカい声で叫ぶ、デブのくそでかネズミだ。

あんな頭悪そうな動物からも、人間みたいに進化できるもんなんだな。

『あんま誇れるもんじゃねえぞ、それ』

『まあいい。段々とダンジョンに適応し魔法の才を伸ばし、あるときを境に世界樹に縋るようになった。完全に呑まれた様子ではないから、《《中間宿主》》にされたってところであろう。いつの間にかあんな植物生命になっていたが、何があったかはわからん。当時の奴らも語ろうとはせんかった』

『話したくねえって感じだったのか?』

『いや、気になっていないような。まるで最初からそうだったかのような振る舞いだ』

脳みそまで寄生されてるじゃねえか。ひでえな。

『聖剣を使えた《《純粋な》》存在をエルフは勇者だなんだと言ってるが、実のところ、時代に取り残された長生きのジジイに特攻させただけ』

『ほんとあいつらの生態ロクでもねえな』

『強者にすりよるのが上手いから生き残ってる』

ゴマすりクソモンスターかよ。火山にでも封印されとけ。

『すり寄る相手を間違えて、いいザマだ』

それは植物体になってしまったことを言っているのか、俺ら人類に保護されたことを言っているのか。

世界樹に関しては、本当に早いところ確認した方が良さそうだ。どれくらい奥に本体がいるのか知らねえが、現物をちゃんと目で拝んでおかねえとな。

ダンジョンから帰還。今回は配信もつけていなかったため、一般人や探索者は集まっていない。だが、メディア関係者がカメラを構えて大量に待ち構えていた。

支部長(えま) ちゃんが駆け寄って来る。

「よく帰還されました! 無茶な任務を……ヴッ、よく達成されました。亡くなられた方には哀悼の意を示します……」

俺の両手を掴み、芝居がかった様子で言う。

――途中で吐きそうになってなかったか? そんなに臭ぇか?

俺もできるだけ悲痛な表情を作った。

「牡羊の会のメンバーを救おうと最善は尽くしたが、広すぎる戦場と敵味方の数が多く、どうにもならなかった。無念だ」

カメラが俺の顔に向けられた。

この茶番は、隼人の提案で用意されたものだ。

せっかくだし悲劇の戦死を演出しようぜということになり、支部長ちゃんにも協力してもらっている。

メディアは支部長ちゃん情報を部分的にリークし、集めたものだ。

「現地でモンスターを手なずけ、深層に日本の探索者の拠点を作ることには成功し、聖剣も確保できた」

事前に用意したセリフを言う。

記者たちの間から「おお……」「聖剣……」「これで世界にリードできる……」「流石狼の王を倒した探索者チームだ」などとどよめきがあがった。

俺はざわつきが収まるまで待ってから、次の言葉を続ける。

「だが、無茶な任務を割り振られた牡羊の会に、あまりにも多くの犠牲が出てしまった。未来ある若者たちが、遺族が訪ねることもできない地下奥深くで、その命を散らしてしまった。可能な限り遺体は回収したが、モンスターの苛烈な攻撃で、遺体も残らなかった者だっている」

階段の下で隼人にタイミングを指示され、メガネと牡羊の会の生き残りが上がってきた。

一人残らず、あまりにもボロボロの姿。先頭を歩くメガネは手を失っている。生気も覇気もなく、衣服がどろどろの彼らに、記者たちは息を飲んだ。

「すぐに病院に搬送します」

支部長ちゃんが指示し、職員たちが牡羊の会を外に案内していく。なお、メガネは逃げないように別室に確保だ。

続いてドローンに牽引された 橇(そり) が、ガタガタと音を立てながら階段から上がって来た。ビニールシートがかぶされているが、乾いた血がこびりついた手足がはみだしている。

「うっ」

誰かが吐き気を堪える声がした。

地上で平和な仕事をしていれば、目にかかれないモンだろう。いや、この数となれば、ダンジョンに潜っている俺だってそうそう見ない光景だ。心が麻痺するような経験がなければショッキングだろうな。

「これ以上のことは、機密にあたるため俺の口からは言えない。だが、たまたま現場近くに別の探索者がいたらしい。彼らに訊けば、何かわかるかもな」

そう言い残すと、俺らも支部長ちゃんに案内されて医務室に向かった。

俺を筆頭に、スイと山里、それに 比嘉(ひが) も幾らかの破片を受けていた。それらを摘出してもらい、トウカの魔法で傷を塞ぐ。

俺以外は部分麻酔を受け、ちゃんと手術室でやってもらっているのに、俺だけ雑に診察室で無麻酔だ。

「先生、なんか俺だけ扱いおかしくね?」

「いやぁ、何度か配信を拝見したのですが、どれだけ不衛生な場所で、どれだけ大きな傷を受けても平気そうでしたので」

それでも職業倫理バグりすぎだろ。

「治療をできる魔法使いがいないパーティーだと、一刻を争う怪我人が何人も同時やってくるなんてザラでね。ここじゃ日常茶飯事ですよ」

地味な顔の中年医師のメガネがキラリと光った。なんか、モンスターより怖いんだが。

「まぁ、現に平気そうじゃないですか」

「痛みには慣れてるからな」

とは言ったものの。世界樹の苗が邪魔するからなのか、切開したところを金具でがっつり開いて固定している。普通にダメージ負うより痛い。

ちょっとした強がりだ。

あらかたの破片を取り除き、復活。体に違和感はねえ。

スイに預けていたノーライフキングを回収し、抱き上げる。

「よっし、そんじゃ 支部長(えま) ちゃん、理事のやつらのところに連れて行ってくれ」