軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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キーティアが語るところによれば、牡羊の会の第一陣は、俺たちが去ってすぐに来たらしい。

その「すぐ」がどれくらいの時間なのかはハッキリしない。

これだから時間間隔が違うモンスターは役に立たねえ。

彼らは俺たち同様に話が通じるらしく、 不死の王(ノーライフキング) との戦いに協力することも約束してくれたそうだ。

音声入りの配信映像を協会から提供されて、しかも、トウカが作った翻訳用データまで引っこ抜かれている、とな。

『ぴぃ、怒らないで欲しいのじゃ。我らは悪くないのじゃ』

わかってるわ、んなこと。

そもそも牡羊の会でなければ、協会本部が変な動きをしなければ、俺らだって探索者同士で対立なんかしねえ。

牡羊の会は最初に階段に通じる道を整備し、次々と物資を搬入。人数を増やしながら工事を進めていった、と。

木にワイヤーロープを固定している杭を見た。

そんなに頑丈そうではない。シンプルに釘みたいなのを打ち込んでいるだけのようだ。大型モンスターの衝突なんか受ければ、簡単に外れてしまうだろう。

もしかすると、深層ではない階層に、フィールド上の拠点を設営しようとしていたのかもな。

『で、あいつらはこんなもん作ってどうするって?』

『こ、ここに 不死の王(ノーライフキング) を誘い込んで、討伐するんじゃと……。我らはただ、生命の木だけ守っておれば良いと言われたのじゃ!』

『で、肝心の生命の木は?』

キーティアは案内しようと立ち上がったが、すぐによろめいて転んだ。

『アッ、痺れ……!』

思わずなんとも言えない顔になった。

キーティアは足に触れるか触れないかのところで、手をわなわなと震わせている。

ヒルネがそっと足の裏に触れた。

『あうっ!? や、やめるのじゃ!』

悲鳴がうるせえ。

エルフは循環器系がやたら強い。大量の酸素を消費する体の作りをしているってことは、血流を止められるのに弱いのか。

『まあいい、なんとなく場所はわかる。一度行ったことあるしな』

俺はじたばたもがくキーティアを抱え、生命の木のところに向かった。

白銀の森。生命の木の群生地を一言で言い表すなら、それになる。

カエデのような深く切れ込みの入った葉が、風もないのにさわさわと揺れていた。

「これは……壮観ですね」

「綺麗」

トウカとスイが褒めた。地面に放り捨てられたキーティアは、転がったまま胸を張る。

確かに見た目はクリスマスの飾りみたいで綺麗なんだが、エルフの本体と思うと、ちょっとな。

「おう、遅かったじゃねえかァ」

生命の木の間から、えんじ色のプロテクターを身に着けたメガネがのそりと出てきた。隣には 関(せき) を連れている。

関は消防士のような分厚い耐火服を着込み、口元にはガスマスクを着けている。背中にはタンク、そこから伸びたホースが腰に提げられた銃器のようなものに繋がっていた。

メガネが手に持っているのは、刀身60センチほどの、黒塗りのマチェット。

草やツルを斬り払うのによく使われる、薄刃の 山刀(さんとう) である。

「いやがったか。やけに到着が早いな。猫型ロボットでも仲間にしたか?」

こいつら機動力高すぎだろ。独自の道でも整備してんのか?

「これが例のあいつらか?」

山里がふわっふわな聞き方をしてくる。

「そうだ。あれがそれだ」

合わせて俺もふわっふわ。

「ロボットの仲間はいねェが、もっと使える仲間はたくさんいるもんでなァ。そうだそうだ、準備が整ったから、エルフの姫さんに挨拶をしたかったんだァ。ちょうどいい」

メガネはマチェットの先で白銀の森を指し示した。

その口元が歪む。

『姫さん。森に燃料を仕掛け終えました、ってなァ。生命の木はいつでも焼き払える。嫌だったら、さっさと聖剣を差し出せ』

こいつ――。

キーティアは何を言われたのかわかっていない様子で、きょとんとした。

『ど、どういうことじゃ? 味方ではないのかの?』

『燃料がわかんねェのか、エルフは』

拍子抜けしたようにメガネは肩をすくめた。

それから、なんてこともない様子で言う。

『関、適当にィ1本焼け。それで理解すんだろォ?』

『うす』

関が持ち上げた銃部の先端から、ちらりと炎が漏れた。

こいつら、火炎放射器なんて持ち込んでやがる。

『させねぇよ、阿呆が』

腰から抜き放ったククリナイフで、関の首を狙う。割り込んだメガネのマチェットとぶつかり、甲高い音を立てる。

鍔迫(つばぜ) り合いになった刃が点で潰れ合い、互いに食い込んだ。

勢いに押されたメガネの体がずるずると滑り、関にぶつかった。

『ちィ、馬鹿力め』

カンッ。耳元で軽い音がした。

見れば、俺に当たるギリギリのところで、シャベルの刃に突き刺さる矢があった。差し伸べられたシャベルが、俺守る盾になっている。

プラスチックの羽と、柔らかくしなるシャフト。ご丁寧に、端から端まで黒塗りだ。

樹上に渡された足場の上には、アーチェリーのような機械弓を構えた、牡羊の会構成員がいた。

なるほどな?

この御大層な設備は、アンデッドよりむしろ俺たちを 牽制(けんせい) してんのか。

『ナガァ、お前と遊んでる場合じゃねェんだ。お前も戦果ゼロで帰りたくはねェだろ? 姫様守りたけりゃ、大人しくしとけェ』

舌打ちが漏れる。

仲間たちは人間と戦ったことがないのか、動きが 鈍(にぶ) い。普段通りの実力を出せそうなのはシャベルマンと――。

『させねぇよ、阿呆が。です!』

関の背後をとり、背中にワスプナイフを突きつけるヒルネ、か。

『あわ、あわわ』

マジでエルフは役に立たねえな!