軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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少し進んだ先では、巨大な蜘蛛の巣の塊が十字路を塞いでいた。その塊から放射状に大量の感知糸が伸びている。

これはアラクネが使う、感知糸の情報伝達ハブだ。あちこちに張り巡らせた太い感知糸をこの塊の中で分別し、細い糸に再接続する。

アラクネ本体の居場所を悟られないようにするためのものだな。

「基本的に、アラクネはハブを攻撃する敵に不意打ちをとれる場所にいる」

「ふむ……」

俺の言葉に隼人は天井に目をやった。頭上を警戒するのは分かるが、既に俺が確認済みだ。

柚子がマップを展開し拡大する。

「マップ情報だと、そんな都合の良い地形ないけど。普通に十字路のどこか先で待ち構えてるって考える方が自然」

「不意打ちされたところで強行突破出来るメンバーだとは思いますが」

トウカもパイルバンカーを構えて強気な発言をした。ユエが大きく溜息をつく。

「こういうときの為に魔法はあるのだ」

やれやれと呆れた雰囲気で、コンテナから大きなボール紙の包みを取り出した。ナイフでさっくりと開けば、ガラガラと骨がこぼれ落ちる。

「豚の骨を買った。出汁用だったから、お金がかかった。骨なのにだ」

ぶつくさ言いながら、豚骨を指でつつく。カタカタ軽い音を立て、骨が組み上がった。スケルトンピッグってところか?

頭蓋骨をひと撫でし、ユエは蜘蛛の巣ハブを指さす。

「あれを破壊してこい。よいな?」

スケルトンピッグは顎の骨を何度か打ち合わせると、前足でざっざと砂を掻く。

「なるほど、囮」

柚子が感心した口ぶりで言いながら、腰に提げた刀の鯉口を切った。今更だが、柚子も隼人も武器が変わっている。閉所での戦闘を意識しているのか、どちらも軍刀をベルトに吊っていた。

薩摩クランの剣士は皆、同じような刀を使っている。近場で量産しているのだろう。武器は手に入りやすさとメンテナンス性が重要だ。この地で長期間戦うなら、そういう選択肢もあるというわけだ。

「トウカ、念のため障壁頼む。スイは魔法攻撃の準備。俺と隼人が前で、ヒルネと柚子が1歩後ろから状況見て飛び込むアタッカーでいくぞ」

「承知いたしました」

全員の体勢が整ったタイミングで、豚骨が駆け出していく。上下左右に張り巡らされた糸の塊に突っ込み、絡め取られた瞬間――。

ごばっと土砂崩れのように、天井が崩落した。

舞い上がる粉塵と、吹き飛んだ瓦礫が障壁にぶつかり渦を巻く。

「ブービートラップ?」

柚子が眉をひそめた。

「とりあえず吹っ飛ばせ!」

「おっけー!」

障壁が解除され、スイが大量に黒い飛礫を放つ。砂煙の中を入念に薙ぎ払うように、小さな黒曜石の弾丸が連射された。

見えない先の当り判定を探るように耳を澄ます。

ダンジョンの壁、瓦礫にぶつかる硬質な音。豚骨が巻き込まれたらしき、硬くて脆いものが壊れる音。蜘蛛の巣に当たったのか、音の響かない場所。

そして、弾性のあるものに当たった、鈍い打撃音。

「いるぞ! 風をくれ!」

柚子が突風を放った。軽い粒子だけが吹き飛ばされ、一気に視界が良くなる。

スイの連射攻撃に晒されていたものの正体が明らかになった。

「オーク4、アラクネ2!」

オークはいつもの通り、力士のような体格の豚男だ。普段見かける個体は上裸なのに、今回は真っ白なポンチョをかぶっている。

アラクネは個体によって人間と蜘蛛の割合が違ったり、ベースになっている蜘蛛の種類が違ったりする。今回出てきたのは、2匹ともオオジョロウグモの体に、人間の胸から上を乗っけたような姿だ。

バネで弾かれたように、俺と隼人が飛び出した。

大上段から斬りかかる。オークを袈裟懸けに真っ二つにするはずだったツヴァイハンダーが、みしりと音を立てて止まった。

オークの肩を大きく陥没させるようにめり込んでいるが、斬れていない。鈍器で殴ったようなダメージの与え方になっていた。

「防刃チョッキのつもりか!?」

すかさず剣を引き戻しながら、後ろ回し蹴りを顔面にぶち込み、吹き飛ばす。

隼人は器用にオークの眼球から脳を刺し貫いていた。

「こんなの初めて見たね」

「薩摩クランに何度もやられてるから、学習した?」

隼人と柚子の言葉に得心がいく。剣士ばかりの薩摩クランだ。刃を防げれば、一般隊士程度なら一気に脅威度が下がる。

いやぁ、どうだろうな。なんか防刃装備ごと斬りそうな怖さもある。

「アラクネの糸で防刃ポンチョを作ったってとこか。うぜえな」

頑丈な肉体を持つオークに、切断無効をつけてくるのは反則だろ。

生き残った2体のオークを盾にしながら、アラクネが蜘蛛の尻をこちらに向けてきた。

「障壁!」

咄嗟に叫ぶ。俺と隼人の目の前に、半透明の板が生じた。

アラクネがネットランチャーの要領で、粘ついた網を放つ。それはオークを巻き込み、障壁にべっとりと絡みついた。

冷や汗が流れる。

喰らってしまえば、馬鹿力のオークと強制的にゼロ距離の組み討ちを強いられる技だ。

「徹底的にオークの強みを活かす立ち回りをしますね」

「優秀なサポーターだ」

トウカの背後に隠れながら、ユエが上から目線で評した。

障壁が消え、網に絡まったオークが取り残される。動きが不自由になったそれを、俺と隼人がさっくり始末した。

あとはアラクネ2か。

「アラクネとの戦闘経験ない奴からいくか」