軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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魔法の使い方はユエに教わった。

詠唱が必要な場面とそうじゃない場面もわかる。なんとなく精霊の反応も掴めてきた。

だからこそ、マーリンの恐ろしさがわかる。これだけ自由気ままに蹂躙しておいて、未だに手を抜いている。

それだというのに、負ける気がしないのはなぜだろうか。

「ありがとう、みんな」

手を横にゆっくり薙ぐように動かす。それだけの動きで、精霊達が歓喜の声を上げるのを感じた。

空中に火球が幾つも横に並ぶ。

「行け」

粘着性焼夷弾の火球が連続して放たれた。マーリンの表情が変わる。大量の泥水を魔法で持ち上げ、大きな壁のようにした。着弾した場所から、炎と蒸気が吹き上がる。

「なーんで、そんな急に使いこなせてるワケ?」

「さぁ?」

これが王権なのだろうか。

自分の力の振るい方が不思議と理解できる。知識が流れ込んできたとかではなくて、元からあった知識の引き出しの開け方を理解した、っていう感じ。

なぜナガは使い方がわからずにいたんだろう。

炸裂する火球を黒曜石の殻にくるんで、泥水の中に叩き込む。血相を変えたマーリンが空に浮上。泥の壁が爆散して崩壊した。

「っしゃおら!」

金城が放ったバリスタを、マーリンは鬱陶しそうに打ち払う。

次々と放つ火球。終わりの無い連射を空中で躱しながら、マーリンが叫んだ。

「絶対におかしい! 明らかに人間が扱う魔法を超えているでしょ! 王権とかそういうレベルじゃない!」

空中で回避されるなら、やっぱりこれかな?

適当な距離で炸裂するようにして、中に黒曜石の破片を混ぜてみよう。

「さらっとエグいことを……!」

全身に細かい破片が突き刺さったまま、マーリンが指先に光を集めた。世界樹の再生力があるせいで、細かい攻撃じゃ痛手になっていない。

マーリンの指がこちらに向けられた。たぶんレーザー的なの。カルカと違って、当たれば私じゃ死ぬ。

光の障壁を浅い角度で設置。撃たれた光線を斜めに受け流す。

魔法でやりたかったのに出来なかったことが、全部思い通りに出来る。ゲームで言うところの、操作性が急に良くなったような感覚だ。

「おかしい。本当におかしいな。王権だけでそこまで力を得られるはずもない。元々あった力が引き出された? それにしても違和感があるけれど」

マーリンが指を地面に振り下ろした。幾本もの岩の槍が立ち上がる。障壁の階段を駆け上がって回避。足下から次々と障壁の砕ける音がした。

ナガに危害を加えるつもりはないみたい。ナガと、一緒にいるユエは無事。

空中でマーリンと同じ高さまで上がり対峙した。

眼下には、こちらを見上げる仲間たちの姿。カルカだけいなくなっているけれど、どこに行ったんだろう。

「えーと。確か君の名前は……スイ サトウだったけね。中華圏の人間は漢字で意味を捉えなければいけないから厄介だ」

日本は中華圏なのだろうか。違う気もするけれど、日本人から見たヨーロッパなんて大体同じに見えるから、お互いにそんな感覚なのだろう。

「名前になんの意味があるっていうの?」

「大いにあるさ。大体変なことをしてくる人間には、変な血が混ざってるというもの――ああ、なるほど。なるほどなるほど、そういうことか」

マーリンは不愉快そうに顔をしかめた。

勝手に納得されても困る。

「サトウ、佐藤ね。そっか。日本人って本当に奇妙な民族だね」

ダラダラと無駄話をしてくれている間に、精霊たちに小声で語りかけ、大きな魔法の準備をしていく。儀式魔法ほどじゃないけれど、十分な威力を発揮できるはず。

マーリンも目の前に障壁を張りながら、右手を空に掲げた。精霊達がざわついている。大きな魔法を使う予兆だ。

「かつて栄華を極め、最も高貴なる血を取り込んだ一族、藤原氏の末裔。日本でもっともありふれた平凡な名字に、神の血が混ざっているなんてね」

鉛色の空に稲妻が走る。曇天にヒビが入り出した。

神の血。天皇家のことだろうか。そんな血が自分に入っている自覚はないけれど。もしかすると、歴史をたどればこの体に1滴くらいは混ざっているのかもしれない。

「多くの日本人の願いを集めて、身に流れる力を触媒として、王権の力を引き出したってところかな。ちょっとナガを世界樹にするにはノイズかな。殺せるならここで殺しておこうか」

ナガは怒ったり笑ったりするのが良いんだ。だからナガに助けて欲しくて、ナガを助けてあげたくなるんだ。

「話長いね、ウザいよ。ナガは世界樹にさせないから」

マーリンの表情が消えた。

雲の切れ間から赤い竜が顔を覗かせる。かなりの大きさだ。

召喚みたいなものだろうか。

「ちょっと本気で行くよ?」

「そういうのいいから。いい年でしょ、キツいよ」

顔真っ赤。自分で出した竜とお揃いだね。