軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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赤毛の女性はポピーとだけ名乗った。明らかに偽名くさい適当な言い方だったが、出された身分証は本物に見える。

まぁ名前なんてなんでもいい。実物の本体が目の前にいるんだからな。偽名で暴力は防げない。

「なんか俺らのこと追い回してたよな?」

『なんのことだか』

ポピーは肩をすくめた。

のらりくらりとした態度は腹立つが、自分から翻訳アプリを起動したことだけは褒めてやろう。

何を企んでるのか知らないが、とりあえずシャベルマンに追い回されてるイメージしかねえしな。

「で、そこのデカいのは?」

アーサーとポピーの後ろに付き従うデカい男……なのか?

身長3メートル近くあるんじゃないか。胸板も厚いどころじゃないし、腕の太さも俺の胴回りくらいある。

いや、これどう考えても人間じゃねえだろ。

頭に麻袋のようなものを被り、ぴっちぴちのレザー上下を着ている。背中にはバカみたいなサイズのハンマーを背負っていた。

よく見ると絶妙に気持ち悪いな。

『あー、ブルちゃん? ブルちゃんはモンスターね。気にしなくて大丈夫かも~。エルフの里までの階層で出すつもりはないし!』

「モンスター? 本当の意味でのモンスター?」

スイが眉をひそめた。

本物のモンスターなら俺らも連れているけどな。見た目はただの幼女だが。

「なかなか大型だが、コントロール出来ているのか?」

山里も疑問の声をあげた。

このサイズが街中で暴れたらとんでもないことになるな。

一般的にモンスターの身体能力は同サイズの動物に優る。

リザードマンに変身したワーウルフでもかなりの被害を出したからな。街中で暴れられたら、とんでもないことになるぞ。

『コントロールはバッチリ! 怒らせない限りはとても大人しいわ。ね、ブルちゃん』

「ぶもっ」

はい、解決したな。絶対ミノタウロスだろ。後、絶対にどっかで怒るぞこいつ。

「よーし、めっちゃ距離とって進むぞ。俺らバギーで先行するから、半径100メートル以内に入んな」

『あ、ちょっと待って!』

ポピーの声を無視し、ダンジョンに入り口にぞろぞろと向かう俺ら。その背中にアーサーの声がかけられる。

『怖いのか? ブルちゃんごときが』

「乗らねーよ? 喧嘩で俺に勝ってから言えよ」

『今決着をつけてもいいんだぞ』

アーサーが指の骨を鳴らした。

その後頭部をポピーが叩く。大げさに痛がるアーサーは、もごもごと不満そうに口を動かした。

『やめなさい。どっちが勝っても損しかない!』

ポピーは腰に手を当てて怒る。すっげえ、映画でしか見ないような仕草するな。

「じゃあ、そういうことで」

俺らは地下1層に降りてバギーに乗り込む。

しばらく触っていなかったせいで、埃が積もってやがる。うっすら黄色いシートを撫でると、触った部分だけ艶やかな黒色が顔を覗かせた。

引っ張り出したシートベルトからも粉が舞う。

なんかちょっと臭いな。合成繊維のメッシュを指でこすると、赤黒い粉がとれた。俺の血じゃねえかよ。

エンジンが重たい音を立てた。

今回も俺の隣は山里だ。ユエは膝に抱えておく。

「シートベルトはないのか?」

「ないぞ?」

「事故を起こしたら?」

「ユエだけ吹き飛ぶ」

「絶対に道連れにしてやる」

おお怖い。

遊んでいると、のそのそとシャベルマンがやってきた。俺らのバギーの屋根上に登り始める。

「何遊んでんだ?」

シャベルマンは無言で前方のバギーを指さす。そこには、1人でバギーの全スペースを埋め尽くすトウカの姿があった。バギーのサスペンションがぐっと沈んでいる。

「装備重量ヤバすぎだろ」

「トウカちゃん、来年くらいになったらほぼ戦車になってんじゃねえか?」

「二足歩行戦車はロマンがあるな」

トウカが車両を独占したせいで追い出されたシャベルマンが、俺らの方に来た?

いや、それでもまだ分乗出来るだろ。俺ら9人+1匹なんだから、まだ座席に余裕あるぞ。

シャベルマンはバギーの屋根にどっかりと座り込んで、涼しい顔をしている。こいつが良いならそれでいいか。何考えてるかわかんねえしな。

山里も慣れた様子で、そのままバギーを発進させた。

時速30キロくらいの速さでダンジョンを駆け抜ける。他の探索者が潜っていない分、かなり動きやすい。

後ろからついて来ているか知らねえが、置いていけたら御の字くらいの勢いだ。

地下20層あたりの見晴らしが良い階層までついたときに、ヒルネが大きな声を上げた。

「ついてきてますよー!」

「マジかよ」

慌てて振り返る。

墓場を疾走するブルちゃんと、お姫様抱っこされているポピー。その横を走るアーサーの姿があった。

「体力あるな」

「お前さんと喧嘩出来てるんだから、そうだろうなぁ」

山里がのんびりと言った。

そんなもんかね。なんか戦ったときに違和感あったんだよな。頑丈過ぎるというか、壊れないんだよな。打撃で殺せるイメージが湧かない。

「もうちょい引っ張って限界見てやろうぜ」

「そうするか」

俺たちは少しずつ速度を上げていった。

地下35層。樹木が多くなってきた辺りでバギーを止める。最終的には時速50キロくらい出してたか?

降車した俺はぐっと体を伸ばしながら言う。

「最後までついてきたな」

アーサーもブルちゃんもケロリと余裕の表情を浮かべていた。

俺は山里と視線を交わした。警戒度を一段階引き上げる。