軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

何故なのか

転生、したようです。

なにって昨今流行りの異世界転生ですよ。

でもなんというか、正直これは想定外です。

異世界転生といったら、冷血侯爵の婚約者だとか妹だとか娘だとか、悪役令嬢、やり直し何回目とかおまえを愛さないからの溺愛とか、モブなのに巻き込まれて何故か溺愛されちゃうんですー! ……が鉄板じゃないですか!?

いえ、モブは合ってます。侯爵の妹なのも合ってますとも。ただ、お兄様が覇王系なだけで。

何故 覇 王 系 なのか

前世の私なにか悪いことした!?

生まれ変わったらお兄ちゃん欲しいなーとは思ってた! 思ってたよ!? でも覇王系は希望していなかったっていうか、想像もしていなかった!!

美しいけれども氷のように凍てついた心を可愛い?妹が愛で溶かすとか、そういうのに憧れていたりもしたのに。

何度も言ってしまうけれども、何故覇王。何故なのか。

「いかがした、シルビア。可愛いそなたの心を曇らすものはこの兄が払ってくれようぞ!」

なにこの絶対王者感! 王様より王様っぽい!

手に持ってるティーカップがかわいそうに思えてくるほど小さい! 覇王なのに上品!(偏見) あ、小指は立てないんだ、なんか安心した。

「不満などありませんわ」

さすが侯爵家というべきなのか、覇王な兄にも婚約者はいるんです。権力とか財力にものをいわせたのかと思っていたのに、まさかのお相手からの求婚! この国一番の美貌といわれる令嬢。その上公爵家。権力も財力もあちらが上で、何故兄を、と思わなくもない。王家と婚姻を結ぶのが嫌で逃げてきたとか、そういう風でもない。異世界ものにありがちなあんぽんたんな王家でもなく、真っ当だし。

兄の婚約者、王太子殿下の初恋だったらしい。でも横槍、入れられないよね、覇王だから。

覇王だけれど、良い人なんだよね、兄(偏見)。悪は許さないし、侯爵なのに自ら領地巡回して治安維持に努めるし。まぁ、あの兄を見たら賊も逃げるとは思うんですけれどね。

苦虫を噛み潰したような表情で、何を言い出すのかと待っていれば……。

「そなたの婚約者もそろそろ決めねばとは思うのだが……」

いやいや、普通に嫌でしょ、義兄が覇王とか。侯爵令嬢に生まれてなに不自由なく暮らさせていただいておりますけれど、これは生涯独身コースまっしぐらだろうと覚悟しておりますとも。

「如何せん、どいつもこいつも軟弱そうな姿絵でな」

「……お兄様、まさかご自身と比べてらっしゃるわけではありませんよね?」

「無論、この私だ」

無茶言わないで!?

この世に覇王が溢れていたら怖い!! なにその世紀末!

そもそも武闘派の家門でもないのに、普段着が鎧ってどういうことなの。お金あるんだし、作ろう!? たとえ筋肉でパッツンパッツンになったり、動いたらパァンって弾けたとしても!(幼い頃に目の前で見た)

お父様もお母様もほっそりしているし、私も普通体型なのに、何処で遺伝子組み変わったの、それとも潜性遺伝子なの? 教えて 進化論(ダーウィン) 。

「私はお兄様のような体格ではない方が好みなのです」

「何を言う! そんな細身ではそなたを守るどころか風に吹かれて飛んでしまうかも知れぬではないか!」

兄よ! 人は簡単に風で飛ばないし、この国乱れてませんから普通の護衛で大丈夫だし、あなたを敵に回そうとする人いないからね!?

「お兄様が何と仰いましても、私は細身の紳士が好みなのです!」

「ぅぬう……」

兄、超不満気……。

やはり生涯独身確定っぽい。いやでも、いいかもしれないぞ独身。夫に縛られることなく自由に生きる! 幸いにも母方祖母が私にと分与してくれた財産で生きていくのに困らないし、この兄を敵にする人もいないだろうし、我が家侯爵家だし!

……私知ってる、怖いもの見たさって奴だと思う。それか罰ゲーム。

「あらあらまぁまぁ、シルビア様は人気者ね」

兄の婚約者であり、絶世の美貌を持つ 公爵令嬢(ジョーゼット) が、積み上げられた釣り書きを見て感嘆の声を上げる。誰宛かって? 私らしいです。

「……どなたかとお間違いなのでは?」

罰ゲームでもなければ、じゃないほう的なのもあるかもしれない。似た名前の令嬢いたかしら?

「ぅぬぅ……」

苛立つ兄に室内の空気がヒリつく。覇王だから凍らないのよね。燃えを通り越して荒野のような。執事長は慣れた顔をしているけれど、ジョーゼット様付きの侍女は兄にまだ不慣れなようで僅かに表情が強張っている。頑張って!

「シルビア様は細身のガッシリした紳士がお好みだと伺ったのだけれど」

「細身の紳士です、ジョーゼットお義姉様」

勝手にガッシリが足されてる!

「まぁ、そのような風に吹かれたら飛ばされそうな方が良いの?」

飛ばないから! その共通認識なんなの!?

「大事な妹を任せられるような、岩のように堅牢な男子が望ましいのだがな」

「細身で!」

要塞は求めてませんよ!!

「それに私は生涯独身でも良いのです」

「なんだと!」

あ、やっぱり家の為に結婚しろって言われる?

「そなたはてっきり何処かに嫁ぎたいのだと思っておったのだが、その希望がないなら 永遠(とわ) に家にいるが良いぞ!」

「名案だわ!」

永遠(とわ) て!

諸手をあげて喜ばれたけど、良くはない。

「お二人とも、年頃の令嬢がずっと家にいては良からぬ噂がたちます。私の気持ちはさておいて、お相手を探してくださいませ」

義兄が覇王でも良いと言ってくれる人ならばワガママ言いませんよ。あの兄の血縁者を虐められる根性のある人もそうそういないと思うし。

さて、婚約者の二人の邪魔をしてはならないのでそろそろ部屋を出なくては。

部屋を出る前に、振り返る。

「細身の紳士でお願いいたします」

念押し(圧)。