軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六百四十二話 辱め

それは、突如空に映し出された。

「って、アレは……」

「ばかな……か、鑑賞会……?!」

カリーダンスをして今日の夕食を準備していた一同は思わず手を止めて立ち上がった。

「ウキー、こりゃいいや! メシ食いながらおもしれーもんが見れるぞー!」

「しかも、オドレらと一緒にコレ見れるとか、ワイらはどうやら大当たりのようやな」

「ほう、今日は僕も坊やたちと一緒にか……楽しそうだ」

「んあぁ~! 僕も楽しみなのん!」

「わぁ、鑑賞会! 鑑賞会だぁ~! ジャポーネでのトラブルがあって、もう無いと思ってたから、やった~! 楽しみだね、ラル先生!」

「いや、アミクス、そんな浮かれ……いやいや、ちょっと待て! そもそもこの鑑賞会の黒幕は……」

一部浮かれ、一部では形相を変えて周囲を見渡す。

そう、そもそもこの世界を巻き込む鑑賞会は、すべて一人の黒幕によって起こされていたものである。

「んまぁ! んまぁ! 鑑賞会なのです~! お母さん、アース、鑑賞会なのです! しかも、今日はアースと一緒にくっついて……えへ、えへへへへ、今日の鑑賞会はアースとくっついて私は世界一の特等席なのです~!」

クロンがキャッキャッと浮かれて興奮しながらアースにくっつこうとする。

だが、その前にアースは立ち上がり……

「パリピ……パリピぃイイィい、どこだぁ嗚呼あああ、どこ行きやがったぁあああ、今日も人を晒しもんにしやがってぇぇぇえ、ぶちのめすぅ!」

そう、鑑賞会の全ての黒幕であるパリピ。そのパリピは今、自分たちと行動を共にしている。

にも拘わらず、まさかそれを今日もやるとはアースも予想外であり、今までの全ての鬱憤も込めて怒りを爆発させた。

だが……

「……いない……そういえば、あやつは昼間のちょっとした追いかけっこで気づけば……いなくてよい奴なので、いないことを気にしなかったが……まさか、コレも見越して……」

ヤミディレも思わず頭を抱えてしまった。

そう、パリピは昼間は一緒に行動していたのだが、気づけば姿をくらましていたのだった。

「うおおお、もうこの辱めええをどうにかぁあああ、もういっそのこと空に大魔螺旋でもぶち込んで破壊するか!?」

「もぉ、落ち着くのです、アース。いいではないですか」

「落ち着けるかぁ、クロン、俺の、俺のプライベートを世界中に、もうこれをどれだけだと思ってんだぁ! 俺の恥ずかしい姿を―――」

「恥ずかしくなんてないのです。アースは全部カッコ良すぎて私はむしろ好きが止まらないぐらいなのです!」

暴れるアースを宥めようとするクロン。

そう、実はアースのような完全当事者でなければ、鑑賞会自体は世界中が喜ぶイベント。

「そうだな……ま、まあ、落ち着いたらどうだ、アース・ラガン」

「ヤミディレ、あんただってあの鑑賞会でクッソ恥ずかしいのを晒されただろうが!」

「そ、それはそうだが……」

そして、あの鑑賞会で辱めを受けたのはアースだけではない。

しかし、その一人でもあるヤミディレは、呆れたり、同情と哀れみをアースに向けるが、もうジタバタしようとはしない。

何故なら……

(まあ、どの場面から始まるかは知らないが、少なくとも今夜は私が辱められることはないだろうからな……)

と、今夜は安全地帯から鑑賞できるだろうという想いもあるためだ。

そして、実際にアース以外の世界中は……

「何と……昨日のジャポーネの件で一回飛ばしになりましたが……まさかちゃんと放映するとは……やはり、あの闇の賢人はマメな……」

「ぐわははははははは、なんじゃ~、今日もやるのか。しかし、ノジャやゴウダ、さらには昨日のあのオモチャやらの戦いに続いて、果たして面白い物が見れるのかのぉ? 蛇足はよろしくないぞぉ?」

カクレテールでも今日一日の修行を終えた者たちが浜辺で空を見上げて笑っていた。

サディスが、バサラが、そして……

「いや、しかしちゃんと見たかったぞ、我も! 過去から帰ったアース……この時代のエスピやスレイヤと再会した時のその後……」

「うんうん、僕も気になってたんだよぉ、いやぁ、良かった」

「やれやれ……今日もアースは晒し物になるわけか」

幼馴染組のフィアンセイ、フー、リヴァルが……

「いやぁ、やっぱもうこれが無いと寂しいっすよねぇ。なんか、最近はもう『よっ、パリピ、ナイス~』って思っちまうっす」

「お兄ちゃんのこと分かるのは嬉しい」

「確かに、何だかんだで楽しいかな」

カルイ、アマエ、ツクシらも……

「確かに、コレを見た後ではより一層トレーニングへのモチベーションが上がる」

「うん、僕らも負けてられない……ってなるよね」

「オラぁ、今日も見せてもらうぞぉ、アース!」

マチョウや他の面々も、誰もが「これを待ってました」と皆で汗を拭きながら浜辺に座って鑑賞モードに入った。

それはジャポーネでも、エルフの集落でも……

「あら……今日も始まった……わね」

「ぬぬ……わらわたちが婿殿不在で悶々としているというのに、パリピの奴は通常運転なのじゃ」

「そのようじゃな~い。っていうか、今日の章は……ひょっとしたら……」

「うむ……順序として、ワシらのここ数日のことなのではないかのう?」

「あぁ……となると……まずい、アミクスが本格的に世界デビューして……求婚者が……嗚呼、アミクスぅぅぅ」

「ちょっと、あなた、落ち着きなさいよ!」

シノブやノジャ、ミカドや族長らを中心に住民のエルフたちも大はしゃぎし……

世界各国の都市、帝都でもまた「今日も始まった!」と歓声を上げる。

そして……

「まさに……前夜祭というものだな……吾輩たちの決戦のな……」

これからまさにアースたちが戦いに行くべき相手もまた、同じ空を見上げていた。

「ま、マジか……つか、俺ら……」

「……捕まったまま今日も見るのね……」

それは、捕まったヒイロとマアムも同じこと。

そう、アースと一部の者たちを除いて……

「「「「鑑賞会! 鑑賞会! 鑑賞会! 鑑賞会! パリピナイっス~!!!!」」」」

鑑賞会を喜び、なんならパリピを称賛しているという有様だった。

「だー、クソ、何でどいつもこいつも喜んでるんだよぉ! 誰か一緒に俺とパリピを見つけてぶちのめして力づくで止めてやろうとか思ってる奴はいねーのかよぉ!」

そんな味方のいない状況で、荒れていたアースは更に癇癪起こして地団駄。

「あは……お兄ちゃん可哀想に……うん、でも、もう諦めるしかないね……」

「お兄さん、気を確かに……」

いずれにせよ、もはや今からどこにいるか分からないパリピを探して鑑賞会を止めるというのは不可能なため、エスピとスレイヤは苦笑しながらアースを宥めた。

「いやいや、エスピ、スレイヤ、お前らだってこの鑑賞会では俺とべったりだから、お前らも晒されるんだぞ!」

「ま、まあ、そうだけど……だけど、まぁ……ここまで来たら見られて困るものはもうないかなぁって……」

「お兄さんは恋愛方面で色々と恥ずかしい場面があったりはするだろうけど、僕らは特に……だからね」

「な、なにィ……」

「それに……まぁ、お兄ちゃんのカッコいいシーンを再び見れるっていうのは私たちにとっても……」

「うん、まあ、悪いことじゃないかなって……」

エスピもスレイヤも、この鑑賞会を通じて色々と晒されてパリピに怒りを抱く瞬間は数多くあったが、それはそれとしてアースの名場面を見ることができるというこの鑑賞会は、単純に視聴者として楽しんでたりもしていた。

そのため、アースほど癇癪を起こしたりすることは―――――

『いーこいーこ……どうだ?』

『おにーちゃんだぁ……おにーちゃんの匂い……おにーちゃんの手……ぐすっ、本当に本当の……おにーちゃんだ~……』

「ふぁっ!!???」

そのとき、開始された鑑賞会、最初の場面。

「ちょ、ちょっ、え、え!? わ、わた、私が……」

空に映し出されたのは、アースに膝枕をされながら頭を撫でられ、子供の様にデレデレ甘えている、大人エスピと……

『大きくなったな……スレイヤ……いーこ、いーこ』

『……お兄さん……』

「ほわぅわ!?」

いい歳をして、実年齢は年下であるアースに膝枕されて頭を撫でられて嬉しそうな大人スレイヤの……

「きゃあああああああああ、兄さんと姉さんが、か、かわ、アース様に膝枕されて……きゃーーー、かわいいい! これ、アレでしょ? そっか、再会直後なんでしょ!?」

「あらあら、羨ましいのです~、うふふふ、でも、お気持ち分かるのです。大好きなアースと再会できて、甘えんぼさんになりたい気持ちは分かるのです。って、お母さん、笑うのはメッ!」

「し、しかし、クロン様……ぷっ……く、くくく、く、あの、我ら六覇の宿敵だったエスピが……くくく」

「おやおや……可愛い弟妹じゃないか、坊や♪」

そう、それはまさに、時を超えてようやくアースとエスピとスレイヤが再会した直後のこと。

十数年会えず、甘えることもできなかった反動で、年齢など関係なくアースに思いっきり甘えるエスピとスレイヤの姿から鑑賞会は始まり……

「ぐわああああああ、パ、パリピぃぃぃいいい、ぶっとばす! お兄ちゃん、パリピ探そう、ぶっとばす!」

「死で償わせよう……あの魔族を……!」

アースを宥めていたはずのエスピとスレイヤが、開始直後の辱めで怒りをあらわにしたのだった。

だが、世界は喜んだ――――これを見たかった―――と。

そして、始まる!