軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百九十四話 幕間・かみ(笑)

俺はヨーセイ・ドラグ。

神に選ばれた男だ。

次代の神の子を生むための鍵となる男。

だが、もう今は違う。

もはや俺自身が神だ。

神を生むために俺がクロンの相手として選ばれたのではない。

俺の子を生むにふさわしい女として、俺がクロンを選んだんだ。

クロンは俺の妻となるにふさわしい美しさを持っている。

俺たちは結ばれるべき運命。

色々と躓くこともあったが、それもまた一つの試練。

その試練を乗り越え、スーパーヨーセイになった俺は、もはや俺自身が神を超越したと言ってもいい。

そうだ、俺はもはや超越者。

――ヨーセ~イ!

――ヨーセイくん!

――ヨーセイ

――ヨーセイ殿!

――ヨーセイさん!

たまになら他の女たちも相手にしてやっていい。

何の憂いもない未来。

ああ……想像できる。

神の神殿で玉座に座る俺。

女神の衣を纏ったクロン。

そしてその俺とクロンの背後に並ぶ、俺の子種を順番待ちする女たちで溢れる光景。

神である俺の血筋を残すなら、女は多いに越したことはないし、クロンだって産める人数は限られるだろうからな。

とはいえ、それでもやはりまずはクロンに俺の子を産ませるのが先決だな。

俺とクロンの子だ、きっと聡明に違いない。

娘ならきっと……

「アークは今日もお勉強しました……ちらちら……パパ……アークは……いつもよりちょっと早く問題解きました……ちらちらちらちら……アークは言われる前にお部屋のお掃除もしました……ちらちらちらちらちらちらちら……パパ……あう……」

ん? なんだろう……急に俺の頭の中にイメージが……ああ、いいじゃないか。

クロンの容姿を引き継いだ、お淑やかで物静かな可愛い女の子になるだろう。きっと父である俺に懐いて、そんな俺に甘えたい気持ちもあるはず。

俺だって神とはいえ、親として子供を―――

「そっかァ! えらいぞ、アーク! よーっし、今日はもう遊ぼ遊ぼ! オラ、マジカルフットワークオンブだ~!」

「ひゃあ、パパ、あう、お外でオンブは恥ずかしいです……アークはもう子供じゃ……~~~にへへ」

「おんぶが嫌~? そんな冷たい娘には抱っこ好き好きの刑だ~、大魔ハグ~!」

「きゃおォ!? んもう、パパ……もう、パパはアークが大好きすぎます仕方ないですパパがアークを大好きなので仕方ないのでアークはオンブも抱っこもされるのですこれは抗えない事象であることとアークは将来パパのお嫁さんになるので問題ありません」

え?!

俺が娘を……アークを抱きしめようとしたら、俺より先に誰かが!?

ちょっと待て! そこで何でお前が出てくるんだ!

「ほぉ~、そうかぁ、アークはパパのお嫁さんになりたいのか~?」

「違うのです。パパがアークをお嫁さんにしたいのであって、アークはパパの願望を言葉にし、そして娘である以上、アークは仕方ないのでパパの願いを叶えてあげる親孝行娘なのです」

そう言って、俺の娘が俺以外の男に……ふ、ふざけるな! どういうことだ! 何で俺の娘が他の男に触られて、しかもオンブや抱っこされて、しかもあいつのことを、あの『悪魔の男』をパパとか呼んでるんだ!

いや、待て、これは何だ? 俺は何を見てるんだ? いや、その前に俺の娘、いつ生まれ?

あれ? 俺はさっきまでそもそもクロンと……いや、まずはとにかく俺の娘を離せ! 俺の声が聞こえないのか!

「んも~、ダメですよ、アース! アーク! 夜には団体のお客さんが来ますので、今から準備です! それと、パパのお嫁さんは私なのです!」

そう言って俺の妻である女神が……なんだ!? なんで俺の妻が、神の妻がそんな料理人みたいな白い服とかコックの帽子とか被って……女神の衣、神聖なるドレスなどを纏っているはずのクロンが、どうしてこんな庶民の格好をしているんだ!

いやいや、ナンダコレ? よく見たらこの建物……女神のカリー屋!? ナンダソレハ!

「え~、少しぐらいいいじゃねえかよぉ~クロン~」

「ママは心が狭い嫉妬女神です。いい加減にパパとアークの仲を認めるべきなのです。……パパ、ちゅっ」

―――ッ!? 俺の娘が悪魔の男の頬に!?

「あー! アーク! むぅ、パパのホッペにチュウしましたね! なら私は……ア~ス~んちゅううう~」

や、やめろぉ! 何でだよ! 何で俺の娘がそんな男の頬にキスして、クロンがそんな男に唇を、し、しかも舌をいっぱい……やめろぉ! ネチョネチョ音を立てるなぁ!

「ママ! お下劣なのです! 子供の前で、しかも外では恥を知るべきだとアークは進言します。パパの現・妻という特権乱用もありえないとアークは思います。しかもこういった行為を外でやるのは、公然わいせつ罪という違法行為でありますので、ママは牢屋でばっちいご飯を食べてるのです」

「えへへへ~、夫婦のラブラブは治外法権というやつなのです~! ちゅっちゅっ♥」

「む、娘も治外法権なのです! ちゅっちゅ」

あぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!!!

やめろおおおおおおおおおおおおお!!!! 俺の娘が、妻が、どうしてこんな男にィィィ!!!

「こら、やめないかみっともないぞ」

「あう、おばーさま……」

「あらぁ、お母さんに見つかっちゃいましたぁ~」

は? え? なんで、え? 大神官? ヤミディレ……大神官まで登場……エプロン姿で、何でこんな格好? いや、おばーさまとかお母さんとかどういう……

「クロン。娘相手にむきになるな」

「えへへへ」

「アーク。レディがはしたないぞ」

「う~」

「アース。お前も鼻の下伸ばすな。みっともない」

「わりーな、義母さん」

なぜ、大神官までこんな庶民な……し、しかも、クロン相手に敬語でもなく呼び捨てで? しかも、母だの、いや、さらりとあの男まで母と……どういう……

「ほら、アーク。お勉強が終わったのなら一緒に買い物に行こう。……今日は良くできていたので、好きな菓子を買ってやる」

「ふぁうっ!? こ、これは、べ、別にお菓子につられたわけではないのです。アークは卑しくありません。おばーさまのご厚意に甘えるのが孫の礼儀なだけなので……」

と、そう言って、俺の娘なはずのアークが大神官に抱っこされてそのまま……

「んふふふふ……アース」

「なんだよ、クロン。さ、準備に―――」

「後です♥」

そして、店内に戻った二人が……クロンがニコニコ笑って……マテ、コレ、クロンか?! クロンはもっと可憐に笑う女の子で……なんでこんな妖しい、いやらしい笑みを……そのままクロンはあの男の手を引いて……し、寝室!?

「おいおい、昼間っからか?」

「ライバルに対抗してキスしてたら、悶々としてしまい、夜の準備に集中できませんので♥」

く、クロンが、そのまま、て、手まで妖しくあの男の身体を這わせ、まさぐって……やめろおおおお! そんなところを触るなぁぁぁああ!

「ちゅぱちゅぱ」

「こらこら」

ゆ、指!? あの男の指を一本一本、クロンが口にくわえてチュパチュパ飴のように……

「うふふふふ、今では口の中でサクランボのヘタを三つ同時に結べる私の舌で……アースの口の中以外のところ、隅々までい~~~っぱい舐めちゃいたいです♥」

「そっかぁ、エッチな女神さまだぜ」

「違います、エッチなお嫁さんです♥」

あ、あの野郎ぅぅ! クロンを抱きしめて、エプロンの裏から、く、クロンのスカートの中に手を入れて、し、尻を……やめろおおお、まさぐるなぁぁああ! 俺のぉぉおお俺のぉぉおおお!

「二人目作るか?」

「えへへへ……二人でも三人でもいつまでも♪」

うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!

「えへへへ、分かりましたかぁ~、見てますか~、ヨーセイ、んちゅっ、ちゅぷ、ちゅぷ」

クロン!? キスしながら、あの男の身体を舐めながら、俺をチラッと見て……

「私はアースにこうしたい、こうされたい、こうなりたいと日々思っているのです。申し訳ありませんが、私は―――――」

あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

「やめろぉぉお、クロン! お前がそんな、女神のお前が! 神聖であるべきお前が、そんな発情した犬みたいにみっともない真似ぉぉぉおお!」

「犬? 犬さんですか……それ、いいかもしれないです! わんわんわんわんちゅちゅちゅちゅ、アースぅ、可愛がって欲しいわん!」

「な゛っ……」

「お母さんに内緒で回収した理想の夫婦性生活では、お尻が――――」

「嗚呼嗚呼アアアアアアア亜ぁぁ!?」

やめろぉぉぉ、お、あ、ああ、床に四つん這いになって、いつの間にか首輪をつけたクロンが、獣の耳を生やして、尻尾を振って、わんわん……違う違う違う、こんなのクロンじゃない!

違う違う違う!

神である俺にふさわしいクロンは、嗚呼、もうやめてくれぇ! クロンは、クロンは――――こんな阿婆擦れのクソ女じゃないはずだァァァ!

「というわけで、ヨーセイの気持ちには答えられません。そして、ヨーセイにはヨーセイで、あなたを支えてくれる人がいるはずでしょう? 鑑賞会でも出てたではないですか」

「ア亜ぁ!? 何をぉお!?」

「ほら、あの五人の女の子たちです。ちゃ~んと大事にしてあげないとダメですよ? あんまりあなたが酷いと……あの子たちまで……」

「ッ!?」

え? あいつらが……チヨたちが……俺にだけ発情していた女たちが……俺を見捨てて……

「この世には男の人はいっぱいいるのです。ですからいつまでも女の子が自分が好きだと思っていると……あなたよりもっと自分を大切にしてくれる人が現れちゃったらどうするのですか?」

あ、ああ……あいつら……そんな目で……やめろ……

――あぁ~ん♥ ヨーセイなんかよりずっといいよぉ♥

――よーせいくん? ヨーセイ……ああ、もうそんなのどうだっていいの

あいつらが俺から離れて……あ、ぁ亜ア……

「こんなふうになっちゃいますよ?」

頭が―――

「ふう……素質も肉体的な強さも魔力も充実させてもメンタルがついていかないカメ……まぁ、暁光眼を前に精神を保つことなど常人では無理カメ……」

「え? あ…………あれ? これは……」

そのとき、俺の視界の風景が一変した。

「俺は一体……」

「正気に戻るカメ。一秒ほど、あの娘の暁光眼の幻術にかかっていたカメ」

何だが長い悪夢を見ていたような……ここは……海の上? 足元……これはゲンブの!?

「むぅ……下の亀さんが魔力をヨーセイに送って私のかけた瞳術の魔力を弾きましたね……」

「当然です、クロン様。ある意味で深海の連中ほど暁光眼のメカニズムを理解しているものはいませんので」

「そうなのですか。ですが、この一秒ほどの時間で私がどれだけアースを想っているか分かってもらえたはずだと思います」

幻術? 一秒? あれほど濃い悪夢のような時間が一秒?

いや、それよりも、さっきのは幻……現実じゃない? あんな頭が割れそうで、吐き気がするようなものが……

「はあはあはあはあ……幻術……そ、そうか、クロンが、あ、あんな淫乱なわけが……はあはあはあ……あいつらだって、お、俺から、離れるわけが……ない! ないんだ! あるわけがないさ! そうだ、俺はもう誰にも負けない最強のスーパーヨーセイなんだから!」

忘れろ……気に留めるな……あんなの幻……精神攻撃だ……たとえどれだけリアリティーがあって、全てが「本当」のようなものであったとしても……

「嘘に決まってるんだァァあ! メガウィンドカッ―――」

「暁光眼発動! クサハーエル!」

あ……あれ? 何だ? また視界が……樹木!? 待て、ここは海の上のはずなのに、急に大森林が、大木が、そして蔓が四方から俺を縛っ――――

「はあ……メンタルだけでなく……経験値も……暁光眼に対して無知で無警戒……なるほど……コレしかいない中でアース・ラガンを見つけたらヤミディレがそっちに飛びついたのも仕方ないカメ……」

だめだ、訳が分からない……ただ、ゲンブの俺に対するガッカリしたような声が……ダメだ……なんだかもう……消えてしまいた―――

――ならばさっさと意識を手放せ……

「え……」

――だが、こうも早く心折れてくれるとは予想以上……器に自我は不要……道具や武器にも自我は不要……心折れ、消えてしまいたくなったと思った今ならば貴様の自我を完全に真っ白にして廃人にできる……わちしの瞳ならば……

「誰だ、この声……俺の脳裏に……」

そのとき、一人の……羽衣を纏った天女? 海のように青い肌の女が現れ……クロンと同じ目を光らせて―――

「え? 誰です、あの女性は? また誰かが……」

「なんだァ? いや、マジで誰だ?」

「な、なんだと、あいつ……あいつまで!」

「うお、おおお、おおお、ヤミディレの姐さんアレ、アレは!」

クロンは知らない? だけど、大神官様とあの筋肉の女はこの女を知っている様子で……

「ちょ、何故あなた様まで!?」

「予想外の展開で出てしまったが……ゲンブよ。器完成に貢献ご苦労。派手に暴れたことは大目に見てやろう」

ゲンブも―――――

「さあ、……望み通り、何も分からなくしてやろう……貴様の自我を……達成感は無いかもしれんが、器となる褒美として、何にも惑わされずにこの場にいる者たちを葬れる力を発揮させてやる」

そしてそこで俺は―――――