軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百八十九話 親と子

ゴドラが暴れた中心街からはそれなりに離れた距離にあったオウナの家。

建物の倒壊自体は免れていた。

しかしそれでも激しい揺れやら衝撃の余波で家の中は物が激しく散乱していた。

それなりに裕福な家ゆえにそれなりに多くの部屋及び多くの家具や物が置いてあるだけに、片付けもメンドクサイことになる……普通なら。

「ふわふわクリーニング!」

ただ、エスピが居れば触れるまでもなく、倒れている物を全て浮かせて、本来あったと思われる場所に建て直したり、散らばっているガラスの破片などを分別して回収したりと、楽である。

「ふむ……少し家に使われている鉄の素材が弱っているな……なら、補強造鉄基地化進化! ついでにただの補強だけじゃなく、要塞のような作りにしておこう」

痛んだ家もスレイヤが元の家以上に補強する。

「ふふふふ、すごいな坊やの妹と弟は。最初これだけの人数での片づけは時間がかかるだろうから天空世界から手の空いている騎士の子たちを呼んで来ようと思ったのだが……」

戦えば世界最強クラスであり、世界でも稀有な能力を持っている二人の能力を家の片づけに使うという贅沢な状況に苦笑するガアル。

だが、ガアルがふと隣を見ると……

「………………」

庭の隅でアースが何か……

「あれ? 坊や?」

片付けの手伝いを一緒にしていたアースが、庭に座り込んで何か真剣な表情をして、何か箱のようなものを開けて中を見つめていた。

その真剣な表情に思わずドキッとするガアルは、一体アースが何を見ているのだろうと気になって近づこうとする。

すると……

「……『全世界魔法学園女生徒パンチラコレクション』……『淫乱メイドの作り方』……『エロ戦士大全』……『パカパカマジカルミラー馬車』……『もし時間停止能力者なら』……『エッチな獣人お姉さん』……『サキュバスコレクション』……『ふたりスケベ』……『悩殺ポージング』、『気持ちいい子作り』……ううむ……おそるべし」

たまたま見つけた箱を開けると、そこにはオウナのコレクション本があった。

煽情的な女の姿を表紙にした多くのタイトルが目に入り、思わず感嘆の声を漏らしてしまう。

『ヲイ……』

『ま、待て、トレイナ。そんな目で俺を見るな! これは、偶然! そう、偶然だ! たまたま目の前にあった大きな箱を開けたら、たまたまこういうのが出て来ただけであり、別に興味あるとかそんなんじゃないんだからな!』

『では、さっさと箱を閉じて部屋に入れたらよいだろう』

『い、いや、うん、そ、そうするぜ。だ、だけど、オウナって意外と謎めいているところがあり、ひょっとしたらその秘密が何か知れるんじゃないかと思い、ちょっと調べようと……』

『……はぁ……まぁ……あの小僧……少々奥底が気になるところがあるというのは否定せんが……』

『え、なに? ああ、まあ、だろ? だからこうして怪しいものがないか、ひょっとしたらこの本だって表紙でカモフラージュしていて中身は実は重要なものとか―――』

呆れるトレイナに対して言い訳を並べて、どうしても気になる本の中身を少し見ようかと……

「わぁ~……エッチな女の子がいっぱいだぁ~」

「ッ!? わ、っ、え、あ、アミクス!?」

すると、アースが気づいたときには、箱の中身を取り出して、アミクスが顔を赤くしながらソレをパラパラと捲っていたのだった。

「ちょ、アミクス、み、見ちゃいけません! お父さんに怒られるぞ! あと、スレイヤにもエスピにも!」

「わ、アース様、もうちょっとだけぇ! あ、この『悩殺ポージング』と『気持ちいい子作り』っていう本だけでも」

「お前にゃ必要ないからぁ!」

「あるもん!」

純真無垢な森の妖精であるアミクスが下品極まりない本を読んでいるという姿に、アースは慌てて本を取り上げようとするが、色々と興味津々のアミクスは抵抗する。

「だって、赤ちゃん作るときとか、こーいうの必要になるし……」

「いや、だ、だけど、お前にはまだ早い!」

「むぅ、そんなことないもん! それなら、アース様とオウナくんだって私と同じ歳ぐらいだもん! 二人が読めるのに、私だけ読めないのおかしいもん!」

「いや、俺も読まないし! オウナはただの変態法律破り野郎だから、本当は逮捕されるんだからな!」

「いけないはずないもん! だって、アース様のお父さんとお母さんも……アース様ぐらいの歳に、そ、その、ソレして、アース様がデキて……」

「ソレは忘れろぉ!」

「だから、私もアース様と赤ちゃんを作るためのべんきょ…………え?」

「ッ!?」

「あ……あ、ちが、い、今のはちが、いや、ちがくないけど、コレはノジャちゃんの入れ知恵で……」

「……エ、ナンダッテ? イマヨクキコエナカッタ」

鑑賞会でパリピが嫌がらせで世界に知らせた衝撃の事実。

ゴウダを倒したと思い込んで有頂天になっていた人類連合軍。

アースやフィアンセイたちの年齢や時期を考えれば、実はその頃にヒイロたちは……という、アースたちも知りたくなかったようなことが発覚。

アミクスはそれを引き合いにだし、なおかつノジャと二人で話をしていた時の野望を興奮で口を滑らせてしまった。

アースもばっちり聞こえてしまったのだが、この話題を追及するとまずいと思って、あえて聞こえないふりをして誤魔化した。

すると……

「まったく……エッチな坊やと妖精さんだね……」

「わっ、ガアル!?」

「ひゃ、王子さん!?」

あきれた様子で目を細めるガアル、

「お兄ちゃんさ~あのさ~」

「アミクス、ちょっとこっちにきて正座しなさい」

「うお、エスピ!? スレイヤ!? いや、ちが、これは?!」

「ひゃぁ!? 姉さん、兄さん、あ、あのぉ、これは!」

と、作業を中断してエスピとスレイヤも怪訝な顔をしてそこに立っていた。

三人の非難の様子に狼狽えるアースとアミクス。

すると、ガアルが一冊の本を持った。

「まぁ、年頃の二人は気になるかもしれないが……」

王子のキラキラの苦笑顔。

そんな顔をしながら手に持っているのが『孕ませ』というあまりにもいかがわしい単語が書いている本で、見るに堪えない。

ただ、ガアルは……

「こういう行為で赤ちゃんは確かに授かるかもしれないが……生まれた子供をちゃんと愛せるようでないと……子供が苦労するよ」

と、どこか実感の籠ったことを口にした。

一瞬意味が分からなかったアースたちだが、すぐに理解した。

「なあ、ガアル……アレから親父さんと何か話でもしたのか?」

もともと、ガアルは父親と良好な関係ではなかった。

そんな中で、天空世界でパリピの謀略にハマった父親は心も体も壊し、地位も何もかもを失い、ガアルとの親子関係も崩壊したような状況だった。

アースもその後どうなったか特に気にせず旅立ったのだが、そんなガアルの父親が今回……

「いいや、話はできていないよ……ダディも廃人のような日々が続き、僕がアレから何度か顔を見せても特に反応も示さなかった……ダディに褒められたい……そう思って頑張ってきたけど……そこがうまくいかなかったのは坊やと同じかもしれないね」

「そうか……」

「……少なくとも……色々と不満や仲違いがあったとしても……居なくなった息子をどこまでも追いかけに来る君のご両親のように……僕が居なくなってもダディは追いかけては来ないだろうね……それどころか今回は……」

自嘲気味にそう漏らすガアル。

アースの方がずっとマシであるという皮肉も若干籠っていた。

自分は父から愛されていなかった。

そして今回も連れ去られたのか、それとも自分の意志で自分たちの元から去ったのか分からない。

「さすがに放置できないから助けにはいくけど……これでいざ会って……拒絶されたらどうしようかという不安もある……ダディは僕を――――」

「ん~、別にそんなのどうでもよくないかな? 別に親と子が仲良くしないといけないって決まりがあるわけじゃないし」

「そこはエスピに一票だね。僕らにはお兄さんがいるってのはあるけれど……」

と、そこで口を挟んだのは、意外にもエスピとスレイヤであった。

二人のどこか達観した様子に、アースはあることに気づいた。

「そういえば俺……」

それは、エスピとスレイヤの『実の両親』については何も知らないということだった。

どういう人たちで、しかも生きているのか死んでいるのかも含めて何も知らない。

エスピはべトレイアル王国で、スレイヤに関してはほとんど……

「いや、いいや」

「……お兄ちゃん」

「ふふ、お兄さん」

だが、アースは口にしようとしたが、やめた。

そんなことはもうエスピもスレイヤもどうだっていいと思っている様子であり、何より自分から話そうともしないことであるため、それなら別に追求しなくてもいい。

聞いたところで自分たちの何かが変わるわけでもないからだ。

「わ、お前ら、何だよ急に」

「んふふ~、いいからいいから」

「ああ、いいから、お兄さん」

アースの想いを理解したエスピとスレイヤは、ただ何も言わぬまま笑顔でアースの両隣をキープしてくっついた。

そんなアースたちを見て、ガアルも苦笑しながら頷いた。

「ああ、どうでもいいのかもしれないね、確かに。僕にはその分慕ってくれる仲間や可愛い子たちがいる。だから……そうだね……今回は、ある意味でダディと決着をつける意味でも追いかける……かな?」

「ガアル……」

と、自分なりの想いを口にして完結した。

一方でアミクスは……

「そうかなぁ……自分の子供を愛さないなんて……そんなの……分かんないよ。私はお父さんとお母さんが今もラブラブで……それに二人とも私を……」

「アミクス……ああ、まあ、族長とイーテェさんはな……」

「だから、私もいつか子供産んだらぜ~~ったい大好きで大切で……だから信じられないよ」

と誰からも愛されて生まれて来たからこその想いを口にし、アースたちも苦笑するしかなかった。

「別に仲良くなくちゃいけないわけじゃないけど、仲が良いことが悪いことなわけじゃないからな。それこそ、血が繋がってなかったとしても……………」

と、そこでアースはまたある事を思い出した。

「血の繋がらない親子……」

「アース様?」

「そういや……あの母と娘はどうしてんのかな? うまいくいってんのかな?」

と、とある親子のことを思い出して、遠くの空を見つめた。

そして、その遠くの空の下で……

「クロン様! 何をされているのですか、少しそこに座るのです!」

「う、うう……」

仮家の部屋で正座するクロン、そしてヤミディレ。

ヤミディレはその手に『理想の夫婦性生活・著者名:ナインテイルドフォックス』という本を持ち……

「この本は悪しきものであり、捨てたはずです! まさかクロン様とあろう御方がゴミ捨て場を漁って拾ってきたというのですか!?」

「だ、だって、お、お母さん、それはアースとの将来のために……実際、この本で夫婦の仲が改善されたと労働者の方たちが……」

「この本はなりません! 下品極まりなくクロン様には悪しきものです!」

「で、でも、この本の著者さんは『オッパイよりお尻』を唱える方で、オッパイに自信のない私には……そ、それに、アースの傍にあんなすっごいオッパイの女の子が……それに対抗するには私も……」

「クロン様は今のままで十分アース・ラガンを堕とせます! 堕とせなくとも私が無理やり捕まえて強制で子作りできるよう―――」

「ダメです! 私は無理やりじゃなくて、アースに好きになってもらって夫婦になるのです!」

「いずれにせよ、この本はダメです! 没収します!」

「お母さんの意地悪!」

「意地悪で結構です!」

珍しく激しい口論をしているヤミディレとクロン。

それはかつて、ヤミディレがクロンへの情操教育の一環として、街の主婦たちの間でも大評判だった『とある伝説の女が書いた本』というのを購入したのだが、その本は実はヤミディレもよく知る人物が書いた下品極まりないものであり、ヤミディレはクロンに悪影響だと思って即処分した。

しかし、クロンはその中身に感銘を受け、ヤミディレが捨てたはずの本を実はコッソリゴミ捨て場から回収していたのだ。

ソレが今回ヤミディレに見つかってバレてしまったことでヤミディレが怒り、しかしクロンは反論するという事態に……

「……ったく……仲いいなぁ、相変わらず。なぁ?」

「なんか、二人ともすっかり本当の親子なのん」

と、そんな二人の喧嘩をシミジミと家の外で聞きながらまったりしているブロとヒルア。

そのときだった。

「おーい、ブロぉおお! ヒルア!」

建設現場の方から何やら労働者たちが慌ただしい様子で走ってきた。

「あ? どうした、おっちゃん」

何事かと顔を向けると……

「な、なんか、なんかよぉ、か、か、か……デッカイ、亀が!」

「?」

何かを見たらしい男たちが顔を青ざめてそう告げた。