軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百八十一話 その裏で3

「んふ~、アース様の伝説をこの目で見ちゃったよぉ~♥ はぅ~、もうアース様は世界一だよぉ~」

「ふふふふ、驚くほどに素敵な男に……まったく、困るよ、坊や……君を見ていると、僕はどうしても女だと自覚させられる」

「尻がァ~うう~、ムズムズびくびくヒクヒクするのじゃぁ~……ううう~……先っちょだけならあの恒星……どうなのじゃ? うう~、ゾクゾクするのじゃぁ~」

多くの建物が倒壊し、瓦礫やら停止したターミニーチャンたちなどが散乱するジャポーネ王都にて、戦いを終えて鑑賞モードに入っていたアミクス、ガアル、そしてノジャはもう完全に気を抜いたモードに入っていた。

三者がそれぞれアースに対して雌顔を浮かべてウットリしている中、ようやく落ち着いた王都にオウナが姿を見せて、周囲を見渡した。

「アースッちたちの大活躍でジャポーネの危機は救われた……めでたしめでたし……って終わらせたいけど、流石に王都の被害でかいけど、この後どうすんだろ? ゴクウもいなくなって国王も居場所分かんないし、何よりアースッち、あのマクラって子を殺してないよな?」

民たちも今回の緊急生配信鑑賞会で大盛り上がり、興奮の渦に包まれただろうが、問題はこの事後処理についてどうなるのだろうと、オウナは冷静であった。

「ってか、そもそも俺っちの家はウマシカ国王の食客って感じだったし……あ~あ……ねえ、謎の覆面さん」

「……………」

「いや、えっと、パリピさん? あんたどうすんの? ジャポーネの今後については何か考えてたり……」

覆面はオウナの問いかけに無視。そのため、オウナは仕方なく謎の覆面が持っている魔水晶に問いかけると、向こうから聞こえるパリピの声は……

『ひはははは、知らね~。祭りそのものの盛り上げに興味はあっても、祭りの後に興味ないからね~。辛気臭い事後処理はお好きにどーぞじゃね?』

まさに無責任の極みであった。

とはいえ……

「はは……だろうね。まっ、俺っちもその盛り上げに加担してたわけだから、あんたを責めるのはブーメランだから言わない……けど、アースッちに対してはどうにか協力しないとだね。アースっちは国王を攫おうとしたゴクウたちと戦った流れで、暴走する巨大怪物を撃破……というところまで。今の国民のノリならこのまま王妃たちを断罪して、シノブちゃんの両親が新たな王となって、アースっちはジャポーネに婿入りとかを望むのは多いだろうけど、それはアースッちも嫌だろうしね……」

オウナもまたパリピの反応は予想通りだったようで、軽く苦笑するだけで、自分で周囲の状況を見渡しながら少し考える。

「……そういえば、ゴクウと巨乳鳥姉さんのことだけど……」

『ひはははは、それはもう随分遠くに行っちゃったよ。あのバカ猿は鳥女に無理やり言うこと聞かされてるって感じだけどね。邪魔なボスやらノジャちゃんや、天空姫王子やら爆乳エルフ小娘と戦うのは不利で得もないし、王妃の小娘と潰し合ってろって感じでね』

「そっか……そういうことなら……罪悪感抱かなくて俺っちもいいかな?」

『あん?』

そのとき、オウナは戦いの最中に消えたゴクウとセイレーン、そしてウマシカのことをパリピから聞き、その上で何かを思いついたかのように小さく口元に笑みを浮かべる。

「しかし、コレをやるには忍術的な変化のアレとか……それは……ん? あれ? え? ちょっと待って、パリピさん。……爆乳エルフ小娘って誰?」

『ん? 誰ってそこに……』

「あの超乳の妖精さん? でも、エルフ……って、耳が尖ってるんじゃ……」

オウナがアミクスを指さして疑問を口にする。

そう、今のアミクスは普通の人間と同じ耳の形をしており、エルフ独特の耳長ではない。

それは……

『あ~、それはノジャちゃんの幻術でしょ? 容姿の一部を変えたり、姿かたちを変化で変えたりとか、そういうのもできるからね』

「ッ?! そ、そうなんだ……へぇ……」

そう、街に遊びにくるということで、アミクスはノジャの力で一時的に人間の耳の形に見えるようにしているのである。

ノジャも尻尾や獣耳を幻術で当初は隠していたが戦闘でその幻術はとっくに解除している。しかし、アミクスのはそのままであり、結果的にアミクスがエルフであることに誰も気づいていない。

それほどちゃんとしっかりとした幻術なのである。

つまり……

「なら……『有耶無耶茶番作戦プラス犯人捏造作戦』もいけると……」

『……ほぉ……有耶無耶……捏造……ああ、そういうこと』

それならばいけると、オウナは悪だくみの笑みを浮かべ、その作戦名を聞いただけでパリピもオウナがやろうとしていることの大体が理解できた。

そして……

「ねえ、ノジャちゃん、早くアース様のところに行こーよ!」

「そうなのじゃ! 婿殿に尻をナデナデズボズボ褒めてもらうのじゃ!」

「やれやれ……って、そうだ。僕は僕でダディを探さないと……」

ここでこうして余韻に浸ってないで、自分たちもアースのところに行こうとハシャぐアミクス。

だが、その時だった。

――ピーーーーーーーーー

「「「「ッッ!!??」」」」

――命令ヲ受理シマシタ

ゴドラが撃破されたと同時に一斉に動かなくなっていたターミニーチャンたちから音が出て、そして光り、熱を帯び、また動き出そうとしている。

「え、なな、なに? なに? 終わったんじゃないの?」

「ぬぬぬ、なんなのじゃ! コレは……」

「まさか、まだ彼らは……」

まさか、まだ終わっていないのか?

歓喜から一転して、アミクスが顔を青くし、ノジャもガアルも、そしてオウナも表情を硬くする。

だが……

「心配はいらない。そういう話だ」

「だから落ち着くじゃない」

「「「「えっっ!!??」」」」

立ち上がり、動き出すターミニーチャンたちとは別に、身構えるノジャたちの傍に突如現れた者たち。

それは、空間を歪め、魔法転移の力によって王都に現れた……

「スレイヤだけでなく、最初から小生らもこうして来ればよかった」

「何の力にもなれずに申し訳ないじゃない。だけど、とりあえず無事そうで何よりじゃない」

「本来なら拙者らがすべきこと……それを……」

「彼らに押し付けてしまったでござる」

「ほんまに、申し訳なさでいっぱいや。詫びとお礼に、あのお兄はんにはシノブを是非受け取って欲しいんやけど……」

仲間だった。

「ラル先生!? それに、シノブちゃんのお父さんお母さんお兄さんも、それに……」

「ぬぬぬ、コジロー、今更来ても遅いのじゃ! っていうか、ジャポーネの一大事に何もできんとは、やーいやーい、役立たず~なのじゃ~♪」

ラルウァイフの魔法で、ラル本人、コジロー、そしてシノブの両親であるオウテイとカゲロウ、そして兄のフウマが現れたのだった。

ジャポーネ王都を巻き込む一大事に、コジローやオウテイたちが黙ってノンビリ鑑賞というのも確かに違う。直接現場に行かなければというのは当然のことであった。

とはいえ、それはもう全て終わっており……

「あ、で、でも、まだあのゴーレムが……先生、皆で力を合わせて戦わないと―――」

「だから、ソレも心配いらんとのことだ、アミクス」

「え?」

「もう、そのゴーレムたちはお前たちを襲うことなく、元の場所へ帰還するそうだ」

「…………え?」

「……と、原理は分からんが……お前の父はそう言っている」

「ったく……どうしてこんなもんを引っ張り出しちゃうんで……しかも、ジャポーネの民どころか世界中に見られて……国王と王妃の所為で兵器が暴走……っていうことにするにしても、『そもそもこの兵器は何なんだ』……『ジャポーネにはあんな兵器が沢山あるのか』……ってなっちゃうんで」

そこは、エルフの集落の族長の家。族長の執筆部屋。

大量にある本棚の中の一冊の本に、本の背表紙をつけてカモフラージュされた箱が一つ。その中に入っていた、小さな手帳のようなものを族長は取り出し、机の上に置いた。

その手帳を開くと、片方にはガラスのようなもの、もう片方には無数のスイッチが散りばめられており、一見して何か分からないもの。

そのスイッチを族長は軽快に叩いていった。

「……これもまた、シソノータミ関連の遺産なのかのう?」

「一応……」

「ワシが知って良かったのか? 恐らくじゃが、娘さんも奥さんも知らんのじゃろう?」

「ああ、イーテェもアミクスも知らないけど、爺さんには知ってもらった方が話早いから特別」

その空間に族長と一緒に居るのはミカドただ一人。

「俺も文明を気にして使わないようにしてたけど、万が一に備えて持っていた最低限の端末。あの巨大ロボットの管理下にあるターミニーチャンの管理者権限を奪うほどのスペックはないけど……アレがお兄さんに粉砕されて管理者不在となった今、停止しているターミニーチャンたちをハッキングで遠隔操作することぐらいはできる。で、とりあえず格納庫に戻す命令してるんで。ただし、その格納庫がどこなのかはコジローさんたちに確認させて。で、その上であんまり民やら兵たちに見られないようにだけど……」

「うむ、よく分からぬがあのカラクリたちのことは、『決して民たちに近づけないように』、『攻撃ももうするな』、『保管場所を確認せよ』、『戦士たちにも関わらせるな』と、コジローたちに任せておる。まあ、もともと民たちや王都の戦士たちは避難で離れておるし、アース君やエスピにスレイヤ君の三人の大活躍の余韻に浸るじゃろうし、何よりもマクラのことについても……」

「了解。しっかし、ジャポーネ王都がいつの間にかこんなに色々と発掘していたとは俺も知らなかったんで。まぁ、俺もシソノータミの方に意識はしていたけど、そこ以外の研究施設跡……他の遺跡までは目が届かなかった……マスターキーを使うと色々と厄介なのにバレそうだからできることも限られてたし……」

「マクラが地下資源発掘の事業に着手していたのはワシも知っていたが、ワシももうほとんど事業から遠ざけられておったからのう……その結果、ハクキにハメられたり、ボクメイツファミリーのイナイの遺児であるシテナイという男にやられたい放題じゃった。コジローもオウテイ様たちを守るので精一杯だったしのう……ふがいない……結果、ジャポーネの危機を救ったのはアースくんたちで、ワシもこうして何の役にも立てんかった」

ミカドには族長が何をしているのかは分からないが、自分たちにとっては未知の力、未知の技術で陰ながらジャポーネの戦後処理に携わってくれていることぐらいは理解できている。

その上で、自分は今回の騒動の最初から最後まで何もできなかったことに、無力感を抱きながら、自身に失望もしていた。

「草葉の陰でカグヤ様も呆れておるわい。おまけに、ゴクウたちが生きていたことも知らずにただ驚いているだけで……」

「それなんだけど――――」

だが、族長は何もミカドの嘆きを聞くためにここに招き入れたわけではない。

「せっかくコンピューター使ってんだし、今のうちに調べといた方が良いことは調べた方が良いと思ってね。あのゴクウとかその仲間……他にどういう奴らがいるのか知りたくて」

「ん? まあ、ゴクウとセイレーンが生きておるぐらいだから他の奴らも生きているのだと思うが……」

「だから、爺さんにはゴクウたちの仲間? 誰と誰が居たとか教えて欲しいんで。昔のデータが膨大すぎて、片っ端から調べんの時間かかり過ぎるから、たとえば名前とか――――」

姿を消したゴクウやセイレーン。二人の目的は鑑賞会の中だけでは世界中の者たちにとっては意味不明でも、族長は何となくだが色々と察していた。

(間違いなく俺とマスターキーを求めて近いうちに現れる。もちろん、あのシリーズには俺を力ずくではどうにもできないようにリミッターがかけられているんだけど……でも、人質取られたり間接的にやられたりしたらどうしようもないし、何よりも……プロトタイプのターミニーチャンシリーズが発掘されたってことは、他のシリーズもあるかもしれないし―――――)

ゴクウたちはきっと自分の前に現れ、自分を脅迫してでも連れ去ろうとするということを予期。

その対策のためにミカドには付き合ってもらおうと考えていた族長だった。

だが……

「ん? なん……ッ!?」

軽快にスイッチを押し続けていた族長の手が突如止まり、そして顔を強張らせた。

「どうしたのじゃ?」

「いや、コードがおかしい……ッ?! まさか、コレに誰かが外部からアクセス……ハッキングしようと……あっ、足跡が消え……なんで? いや、誰が?」

ミカドには理解できない世界の話。

「追跡……してみるか? 足跡を消そうとも必ず痕跡……いや、でも……本当にマジで誰が……むしろ、俺が追おうとすると、この集落が特定される危険が……ん? ちょっと待て……数秒間だけだが、音声通話機能が……やば、話を盗聴された?」

だが、尋常でない様子で震える族長から、嫌なことが何か起こったことはミカドもすぐに察した。

「あの鉄くずを戦力として回収しようとしたら……わちしより先にハッキングしようとした者……思わず侵入したら思わぬ大物が釣れた……」

そして……

「第一世代……古代人の最深部の技術を知らずとも、発掘されたコンピューターを使っての簡単なハッキングとやらぐらいは、わちしにもできる」

ジャポーネから遠く離れた海域。

「ミカドまで一緒にいるのは意外だったが……そうか……アミクスとやらは確か、先ほども空に映っていた、あの女か……娘か……ふふふふふふ、そうか……どうりでセイレーンの力が通用しなかったわけか……」

光も届かない暗黒の深海で……

「第一世代……この世のすべてを犠牲にしてでも手に入れる……イリエシマ様……もうまもなく……わちしはもう二度と離しませぬぞ? 二千年でも1万年でも愛し合いましょうぞ……第一世代の知識とマスターキーさえあれば可能!」

過去に縛られた女が狂ったように笑っていた。