軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百七十話 癇癪

――今この瞬間、敵に対してのみ狂って大暴れすることを解禁する。蹂躙し尽くせ! 我が誇りの六覇の力を現代に生きる者たちに存分に知らしめてやれ!

世界に向けて発信された言葉。

現れた謎の集団と対峙する、アース、ノジャ、ゴクウらの面々。

展開や状況ゆえに聞き流すものも多い一方で、言葉の意味を深く捉えようとするものもまた少なくない。

「ちょっとちょっと……い、今のはヤバいんじゃ……アース……あの子、なんてことを……『我が誇りの六覇』とか、もうそれはアウトでしょ!?」

「……あ、ああ……つーか、もうこれは……昨日までの鑑賞会の中で、俺たちが『そんなことありえない』と思っていた推測が……これは……」

それは当然、両親であるヒイロとマアムも含まれる。

そして二人はここに来て、突き付けられた事実に激しく動揺する。

「一体どうして……呪い? それとも憑依? いいえ、アースはアースのままで……だから、そういうんじゃなくて……」

「ああ、洗脳とかマジでそういうわけでもない……なんというか、今のも『アースがそのまま代弁した』って感じで……」

ある意味でこれまでアースに対して抱いていた疑問の答えにたどり着いた二人。

理屈までは分からないが、そうなのだと確信させるアースの発言。

「ハクキ……あんたも驚いている一方で、このことに関しては私たちとは違い、面白そうに笑っていたわね。あんたはどう思……ん?」

そして、自分たち以上にアースの謎について知っていると思われるハクキにマアムが問うと、これまで色々なリアクションをしていたハクキが……

「……何故……吾輩は今、あの場にいない……六覇の力を知らしめるのであれば、それはまさに六覇の筆頭にして最強たる吾輩の役目……それがよりにもよってノジャなんぞに……真の六覇の力を知らしめるのに、吾輩以上の適任はいないであろうに……たまたまあの場に居たのがノジャしかいないからと言って、あの御方は……ぐぬぬぬ……」

「ハクキ?」

「ゴウダはまだいい……最後の瞬間『誇りに思っている』と伝えられた言葉……誰も文句なく納得だ。だからゴウダは構わん……が、何故その次にあの御方の誇りと伝えられる相手がノジャなのだ……」

この時、怖い顔して「ぐぬぬぬ」と唸ってブツブツ言っていた。

そんなハクキを、二人は初めて出会った十数年前から含めて一度も見たことがない。

「それにそもそもあのカクレテールと天空世界での戦いでも、人間たちに……そして今はノジャだけでなく、ある意味でゴクウにも指示している……しかも本人たちはその指揮がどれほど贅沢なものかをまったく理解できていない……あのバカ猿などその典型……ん?」

そして、今のハクキはヒイロとマアムのことも眼中にない様子で、周りを気にせず歯ぎしりし、その上で「何もない空間」に向かって……

「……ヲイ……何をクスクスと嫌味の笑みを浮かべている? ぬっ……吾輩が嫉妬だと? そんなことはない……いや、だから笑うな!」

「「……? ……ッ?!」」

最初は何か分からなかったヒイロとマアム。

だが、これまでの流れから、ようやく二人はハッとした。

(そういえば、たまにこういうのあった……ハクキが俺たちに対してではなく独り言を……だけど、それは独り言というより……)

(独り言ではなく……そう、まるで「誰か」と会話をしているような……私たちに見えない誰か? 気配もない。だけど、誰かが……それって、まさかアースと同じように? いや、だからこそハクキはアースに起こっていることを分かっているってことなの?)

そして、アースの発言をきっかけに、徐々に何人かが真実に近づいていっていた。

もっとも……

『ぬわははははは、六覇の力を、あなた様の誇りを見せよと、わらわに! わらわ一人しかいないが~、まあ、わらわ一人で十分なのじゃ! あのハクキの雑食アホンダラは出てこれるわけないし~、ライファントは相変わらずゾウゾウ言いながら戦いをやめて政治家に成り下がった草食系だし~、パリピはむしろ逆に恥さらしで~、ヤミディレは娘とキャッキャと平和ボケな日々を過ごしているが故、つまり六覇の誇りと力を見せられるのは、わらわだけしかいないのじゃァ! そしてわらわだけで十分! ゴウダに続き、現代に生きる者たちに六覇が何たるかを教えてやるのじゃァ~!』

「あ゛?」

ノジャの発言に「プッツン」という音が響いた。

ハクキはもう、ヒイロやマアムがどう思おうとそれどころではなかった。

「動くこと雷霆の如し! 重ねて、風の如し! 風雷大突貫ッ!!!!」

雷を纏った暴風の尻尾攻撃。

高速で、光速で、天変地異のような怒涛の攻撃が炸裂する。

強固な鋼鉄の身体を持つターミニーチャンたちを次々と砕いて停止させていく。

「尾を重ね、怒涛の勢いに雷を纏わせる…………動くこと雷霆の如しに重ねて、侵掠すること火の如し! 雷炎轟弾ッ!!」

その技、その破壊力、まさに暴れる怪物そのものであった。

「ぬわはははは、こ奴らどういうわけか雷撃に弱いみたいなのじゃ~」

本来一体ですら上級戦士以上の手ごわい力を持っていると思われるターミニーチャンたちを一切寄せ付けない。

ノジャの本領発揮であった。

「へ、強くなってるじゃねえか、変態狐。いつかまた戦うかもしれねーって思うとゾッとするぜ。ま、俺様もぉ~……太れ、如意棒ッ!!」

一方でゴクウもまた対抗意識を燃やす。

その手に持った相棒を密集するターミニーチャンたちの頭上に放り投げ、ゴクウが叫んで命じた瞬間、ただの長い棒が太い柱のように巨大になり、そのままターミニーチャンちゃんたちを下敷きにして潰してしまった。

「へへ~、どんなもんよぉ!」

「ふん、大したことないのじゃ。そんな骨董品の棒より、婿殿の螺旋の方が太くて強烈で魅力的なのじゃ」

「何をぉ~、いや、アースの大魔螺旋に比べんのは卑怯だぞぉ! でも、俺様の如意棒だってなァ~」

「無理無理なのじゃ~。あの激しい回転力……尻を穿たれた瞬間に、もう負けるしかないのじゃと魂の奥底まで刻み込まれるあの力には何も叶わないのじゃ~。大体、おぬしは大昔から何も成長しとらんのじゃ~」

ドヤ顔を浮かべるゴクウだが、鼻で笑うノジャと口論……をしながら、ついでにターミニーチャンたちを次々と蹴散らしていく。

『なん……これは……ムカつくなあ……こんな簡単に、役に立たないじゃない、ターミニーチャンって! プロトタイプっていうのだから?』

ゴドラの中で、足元の光景を目の当たりにしてイライラが抑えきれない様子のマクラ。

無理もなかった。

あらゆるものを破壊する勢いで、まさに奥の手の一つでもある兵器を開放したというのに、それがいともたやすく蹴散らされているからだ。

「ったく……アドバイスいらねーじゃねぇかよ……つか、俺も……大魔ジョルトッッ!!」

トレイナの言葉でノジャの士気を爆発させ、その上で自分も負けてられないとアースも拳を叩きつけてターミニーチャンを一体ずつ破壊していく。

『アース・ラガンくんまで……なんなの? もう……ムカつくなァ~なんなのぉ?』

マクラのイライラがさらに募る。

しかも……

「ガトリング準備完了。一斉射―――」

「させないもん! スパイラルアローッ!」

弾丸をまだ所持しているターミニーチャンが腕を変形させてアースに向けて構えた瞬間、その変形させた腕の筒に魔法の矢が刺さり、そのまま弾丸は発射されずに暴発してターミニーチャンの一体が破壊された。

それをやったのは……

「えへへへ、やりました~、アース様ァ~~!」

「おお……すげ、命中。やるじゃねーか、アミクス!」

「ッ!? えへ……えへへ……アース様に褒められた……ッ~~~~!!」

嬉しそうに屋根の上で飛び跳ねて両胸を激しく揺らすアミクス。

ターミニーチャンの装甲を貫けなかった矢を、ここに来てやり方を変えてターミニーチャンを倒した。

そのことと、そしてアースに褒められたこと、それに完全に有頂天になったアミクスは叫ぶ。

「アース様、背中は任せてくださいッ! オッパイ以外でもアース様の役に立ってみせるんですから! アース様の背中は私が守るんだもん!」

と、大声で宣言したアミクス。

それに対してアースも何と反応すればいいか分からず苦笑する。

すると……

「変形チェンソー」

「ッ!?」

他のターミニーチャンがまた腕を変形させた。

今度は腕を刃のように変え、そしてその刃が勢いよく回転した。

そんなもので切られてしまえば簡単に体は切断されてしまう。

しかし……

「おっと、させないよ?」

「うお、え、ガアル!?」

斬りかかってきたターミニーチャンからアースを逃がすため、ガアルが飛んできて、アースを抱きかかえて上空へ避難した。

「ふふふふ、彼女が君の背中から守るように、僕だって君の背中の翼となって羽ばたいてあげるよ」

「いや、流石に今のは俺でも普通に避けられたんだが……つか、この態勢は勘弁してくれ」

「おやおや、恥ずかしがる君も可愛いね、坊や♥」

と、アース「を」お姫様抱っこしながらガアルはそうキメた。

ノジャだけではなく、アミクスも、ガアルも、そして……

「そう、ハニーの背中をだなんて贅沢な二人ね。でもね、私は背中よりもハニーの横に並び立つものになる。それだけは譲る気ないわ♪」

「シノブッ?!」

「ハニー、民たちを遠ざけたわ! あとは思う存分やるわよ!」

避難誘導を終えたシノブも即戻ってきて、アースと共に戦おうとする。

それはまさに……

「ふん、別におぬしらの力などいらんのじゃ。ここはわらわと婿殿の新婚共同作業なのじゃ」

「むう、ノジャちゃんずるい! 私だって、アース様と一緒に戦いたいもん!」

「落ち着きのないレディたちだ。やはり僕がついていないとね、坊や」

「まったく……私はマクラのことで色々と悩んでいるというのに……気楽と言うか、頼もしいというかっていう感じね」

ノジャ、アミクス、ガアル、シノブ。

アースを囲い、そして慕う、四人の乙女たち。

その中心で照れ臭いやらな表情のアース。

その光景には……

世界に散らばる六覇たちがノジャに嫉妬しているのと同じように、現在アースの傍にいて共に戦う乙女たちに、激しい嫉妬の炎を燃やす者たちがいるのを、アースたちはまだ分かっていない。

もっとも、それが分かっていたとしても、今からまたそれどころではなくなる。

『あ~~~、もうっ! シノブちゃんまで……ダメ、このプロトタイプっていうターミニーチャンじゃ、六覇級とかは倒せそうにない……でも、まだ発掘した……ドローンタイプ? これいける? ターミジョーチャン? あとは……あ~~~~、もう! いい、全部出しちゃえ! そして壊れちゃえッ! 滅びちゃえ! 死んじゃえ! ゴドラももう動いて! ゴドラはただの脅しのつもりだけだったけど……知らない! 悪いのはあの人たちなんだ!』

癇癪起こしたマクラがもはや正気を失い手の付けられない状況になり……

『ゴドラ、踏み潰してッ!!』

そして、ついにマクラがゴドラに命ずる。

踏みつぶせと。

すると、その命令に反応したゴドラが、巨大な足を上げて、味方のターミニーチャンが居てもお構いなしに、アースたちを踏みつぶそうとする。

「うお、あぶね! 皆さがれッ! 踏みつけを避けても、衝撃波で色んなもんがふっとぶぞぉ! 自分もふっとばねえように、あと飛んでくる破片とかにも気をつけよ! ……っと、天の声が気をつけろってさァ!」

「「「「「ッッ!!!???」」」」」

だが、その行動を素早くアース、そしてトレイナが察知してノジャたちに知らせる。

そうなれば、デカい図体で動きが遅いゴドラの攻撃から離れることは訳もない。

もっとも、その破壊力は……

――モンスタースタンプッ!

アースたちの認識以上のモノ。

国全体に響き渡る轟音と大地の揺れ。

王都の中心街に巨大な大穴を開け、その中心から発せられた衝撃波が周囲の建物を次々と吹き飛ばしていく。