軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第五百四十四話 王都の様子

「なんで僕が留守番なんだい! 僕もお兄さんと買い物行ってもいいじゃないか!」

お揃いのフード付きの外套を被っているエスピとアース。

そんな二人にスレイヤが不満の声を上げるが、エスピは右腕をアースの体に巻き付けてハグしながらスレイヤに舌出した。

「だってェ~、人数多かったら目立つし、そもそも荷物なんてどんな量でも私の能力でふわふわっと持って帰れるし~」

「だったら君一人で行けばいいじゃないか……それなのにお兄さん……それに、なんでシノブまで? シノブはお尋ね者だろう?」

すると、エスピが左腕を伸ばしてシノブを抱きしめながら……

「だって、シノブちゃんには王都の案内をしてもらわないとだし~、それにシノブちゃんも王都の状況が気になるでしょ? そんな中、いくら七勇者の私が傍にいるといっても、お兄ちゃんは自分のことを好きな女の子と世界一大好きな妹二人だけを危ないかもしれない王都に行かせるのは気が気じゃない……だから、お兄ちゃんにも一緒に来てもらいます! はい、論破!」

と、スレイヤに挑発するように告げるエスピ。

そんなエスピにスレイヤは納得いかずに不満顔で、その横でアミクスは自分が行けないのは仕方がないとはいえ羨ましそうに眺め、だが二人以外は……

「正直ワシも王都の様子が気になるわい。シノブも隠密としてその目で見てきて報告してほしい」

「ま、用心棒も最強の二人だから安心じゃない?」

ミカドとコジローもシノブに王都を見てきてもらうことには賛成であり、

「うむ、それに……目立たない行動の中で、少しだけ気晴らしでもしてくるでござる」

「せや。もし隙があったら、惚れた男は即喰いやえ?」

さらには両親であるオウテイとカゲロウもむしろ賛成という様子だった。

「はぁ……わ、分かりました……」

一方で、シノブはどこか気が進まない様子で元気がない。

同じくフード付きのローブに、念のため眼鏡をかけている。

「もうどうしたのぉ~、元気ないぞ~、シノブちゃん! だいじょーぶ、私とお兄ちゃんが守ってあげるから。ね? お兄ちゃん!」

「……お……う……ごにょごにょ……めがね……」

「もう、お兄ちゃんもなんかボーっとしてるぅ! もう二人ともどうしたのー!」

ハイテンションなエスピとは対照的に少し静かな二人だった。

「……まさかシノブちゃん……昨日のアレでお兄ちゃんへの恋心がリミットブレイクしちゃってもういっぱいいっぱいとか?」

「ッッ!?」

「しかも、自分の友人はあんな状況だし~っていう葛藤もあってとか? もう、そんなの気にしないの! 楽しむときは楽しむ! じゃないと、クロンちゃんに気づいたら負けちゃうよ?」

「う、うぅ……」

エスピの指摘は図星であり、シノブは顔を真っ赤にして泣きそうである。

もともとアースにゾッコンなベタ惚れ状態だったのが、さらに限界を超えてしまい、これまで自分から積極的にアプローチしまくってたのが、もうそばにいるだけでどうしようもないぐらいになってしまったのだ。

「で、お兄ちゃんはお兄ちゃんでどうしたの?」

「……めがね……」

「お兄ちゃん!」

「はぅ! い、いや、なんでもねえ、シノブの眼鏡も良いとかそんなこと思ってねえよ!」

「……は?」

一方でアースもどこかギコチナイ。その様子にエスピは目を細め……

「お兄ちゃん、シノブちゃんの眼鏡変装も新鮮でイイと思って見惚れてる?」

「そんっ!?」

そんなことあった。ただでさえ美人のシノブが眼鏡をかけると、どこか知的で文学的雰囲気も醸し出され、普段と違う印象で単純にアースはドキッとしていたのだ。

「あ、そ、そうなの? ハニー」

「う、あ、お、い、いや……」

「で、でも……ただの伊達よ。でも、そんなことでハニーがドキッとしてくれる……な……ら……ッ、ダメね、これ以上は……」

本来、アースがこういう反応をしたら積極的ないつものシノブならば一気に攻めるところだが、今のシノブにはもうそれができない。

「ごめんなさい、ハニー。あまり可愛い反応を見せないでね。ほんとうに理性が抑えられなくなって、私がノジャ化してハニーを襲ってハニーに失望されてしまうから……」

「そ、そ、そぉか……いや、お、お前の気持ち知ってるのに、なんか……俺も思わせぶりばかりで……悪い」

「いいえ……っていうか、今となってはハニーの方が私より有名なのだし……むしろハニーの方がもっと変装したほうが……」

「え? そ、そうか? じゃあ、俺もお揃いの眼鏡あれば……」

「え……お、お……おそろい……」

「あ、いや、そんな深い意味は!」

「そ、そうよね、ご、ごめんなさいね」

「いや、あ、謝んなよ……全然、べつに……」

と、甘酸っぱい二人の空間を作り出すアースとシノブ。

その様子に周囲は……

「え、やば、二人ともかわいい。私は少し離れたところで二人を見守ろっかな。……あ~でも、私はクロンちゃんも好きなんだよなあ~最終的にはお兄ちゃんが決めることだけど、再会する前に決着しちゃったら可哀そうだし……サディスちゃんが本気出したら気になるし……大穴のフィ――」

「ふぐぁあああああ、ふが、ふがあああ、なんでわらわもお留守番なのじゃああああ! 婿殿と街でデートしてラブ宿でずっこんばっこ―――んもががもがぁ!?」

「はぁ……僕はお兄さんの青春を観察できずにノジャを押さえつける役目……エスピ、これは貸だよ? ノジャ、もっと厳重に鎖で――」

「いいな~、シノブちゃん……でも……がんば」

「アミクス……小生もそういう気持ちが分かるゆえ、歯痒いな……」

「まだるっこしいえ。はよう契ったらええのに……」

「ふぉっふぉっふぉ、青春は見守らんとのう」

「お兄さんは六覇を倒す最強クラスでも、コッチはまだまだ青いじゃな~い!」

と、微笑ましそうに(一部除き)なっていた。

そしてその頃、ジャポーネの王都のとある屋敷。

広い豪邸で朝日を浴びながら、天空族の王であるガアルが……

「やあ、おはよう……だだだ……だっつーの!」

顔を真っ赤にしながら朝の挨拶をしていた。

「ううむ、これが伝説の地上のあいさつで、これをされたら坊やもメロメロと?」

「おう、俺っちの言うことに間違いはない! 天空族は翼で飛ぶゆえに胸がデカい! 胸のでかい人は、こう、胸を寄せて谷間を見せつけるのが有名だっつーの、なのである!」

と、興奮したように親指突き立てて絶賛していた。

「この伝説の『大人向のピーチボーイ』では、伝説の雉・セイレーンがキビ団子欲しいんだっつーの、でキビ団子を貰っているからね!」

「ううむ、我ら天空族でもその名を知っている、あの地上も天空にもその名を轟かせたという……分かったよ、僕はこの挨拶をマスターしようではないか……ふふふ、坊やよ。君には刺激が強すぎるな……ふ、ふふ、か、彼が耐えきれなくなったら、仕方ないから僕が責任を取ってあげようかな♥」

そんな朝のやり取りをしている二人だったが……

「王子い~、大変ですぅ!」

「ちょっと朝の散飛に出ていたら……街の正門広場で争いですぅ!」

その報告に飛んできたのは、ガアルが連れていた騎士団の二人。

その報告に二人は顔を上げる。

「何の騒ぎかな? まーた、この国の国王がなんかした?」

「あの、それが……ジャポーネの住民たちが街の正門に『アース・ラガン大歓迎』みたいな横断幕を張ろうとしたら、この国の騎士団みたいな人たちにすごい怒られたようで……『反ジャポ活動家のストーク家と親密なアース・ラガンを歓迎などけしからん』、『アース・ラガンはテロリストの仲間』、『それを歓迎しようとするお前たちも国家反逆罪で逮捕』って感じで……」

「あ~……そういう……はは、アースっちにそんな意識ないだろうに……それで、この国の侍たちが鎮圧していると……」

「ええ、そうなんですが、ただ――――」

報告を受けて納得する男。

だが、報告はまだ終わってなさそうなところなのだが、そこでガアル……

「なんともけしからんね。地上や内政に干渉する気はないが、坊やの友人として、坊やの歓迎をけしからんなどとは……」

「いえ、王子! 問題はそこじゃないんです!」

「なんだい?」

ガアルのため息を遮って慌てて口をはさむ。

それは……

「その……その行為に不満を持った人が……なんか『アース・ラガン、かっけーじゃん、いーやつじゃん、ウキー!』みたいに怒って、棒を持って大暴れして……ジャポーネの騎士団を次々と一人で蹴散らしてるんです」

「「……え?」」

「それに民衆も盛り上がっちゃって……なんかもう、正門広場ではパニックなんです!」

ガアルたちも予想外の事態。

一体正門で何が起こっているのか? 暴れているのは誰か?

ただ……

「ふむ、それにしても、坊やがカッコいい……いい奴……その意見を述べるために体制側に反発するとは、非常に勇気ある者ではないか」

「王子?」

「興味がわいた。坊やの友人として、ぜひ僕も見てこようではないか。いやいや、別に助太刀はしないぞ? 地上の内政干渉はしない……が……僕がもし見つかって騒ぎになって僕まで攻撃されたら……その限りではないけどね♪」

ガアルはそう言って笑いながら、翼を広げた。